2019年のボジョレー・ヌーヴォー(Beaujolais Nouveau:ボージョレ・ヌーヴォー)の 2012年から続く天候異変は毎年のように繰り返され2019年も異常でした。 フランスのワイン産業に少なからぬ被害を与えているといわれます。 味よりも宣伝の効いたお祭りを楽しむ人が多いといわれるヌーボーワイン。 不作の年でもマニアックなファンには解禁日が待ち遠しい。 もともと最高レベルの当たり年でない限りボージョレ-・ヌーボーが味覚で他と 勝負するのはむつかしい。ガメイ(ガメ)種の宿命でしょう。 不作年が続く現状を打破しようとしたのか、2013年ごろから、あきらかに下戸が多い 日本市場の特質に合わせてスーパーがロゼや甘いワインを投入している。 2013年には低価格路線でサントリーを輸入量で抜いたイオン、そして西友にも ボージョレ-以外の産地の赤のシラー(ラングドック)やロゼ、 白のシャルドネ(マコン・ヴィラージュ:Mâcon-Villages)の廉価版ヌーボー・フランスワインが出現。 新興ワイン産地(ニューワールド)に押しまくられていたマコン地区(Mâcon-Villages)は、 いよいよスーパーのチャネルを加えて大拡販を開始? 大成功したボージョレ-地区にあやかろうとしているのでしょう。 イオンの主力であるプライベートブランドのペットボトル・ボジョレー・ヌーボーは ボージョレ-が950円/750 ml.ヴィラージュが980円/750 ml、 シラー(赤)、ロゼ、マコン・ヴィラージュ・ヌーボー(白)が1080円/750 ml. 西友はボジョレー・ヌーボーが870円/750 ml. ボジョレー・ヴィラージュ、ロゼ、マコン・ヴィラージュ・ヌーボー(白)が1180 円/750 ml. 西友で特筆すべきはヴィエイユ・ヴィーニュ(Vieille Vignes)のヌーボーが1680円/750 ml. ラベルトップに記された商社名フランソワ・フーシェ(FRANCOIS FOUCHE)の下、2段目に Vieille Vignesの表示。1680円/750 ml.ガラス・ボトルにコルク栓. ヴィエイユ・ヴィーニュは樹齢60年のブドウ古樹から作られた特別なワインとして知られる。 古い樹木だけに結実が少なく、ブドウには養分が凝縮されている。 評判にたがわずフランソワ・フーシェのヴィエイユ・ヴィーニュはコクのある香り高い ワインでした。 1600円台の価格帯ならば、通常は美味しい赤ワインが選べますが これは西友がウォルマートのチャネルよりお祭り用に空輸したもの。 ガラス・ボトルにコルク栓の空輸品としては格安。 2013年は不作年にもかかわらず、美味とコストパフォーマンスに優れた素晴らしいワインに 仕上がっています。 コンビニエンスストアーや専門店で売られるガラス・ボトルとコルク栓を用いた2500円前後の ボジョレー・ヌーボーに較べても、筆者(しらす・さぶろう)は、はるかに優れていると評価しています。 ただし2014年はありませんでした。以降は輸入の有無を確認していません。
ヴィエイユ・ヴィーニュのレスベラトロールが濃縮された葉や茎は ヴィーニュ・ルージュといわれフランスの伝統的な健康茶として飲まれています。 (ノギ・ボタニカルではヴィーニュ・ルージュを販売しています) 「ブドウ・レスベラトロール豊富な古樹の葉がレスヴィーヌ・ルージュ」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=214 イオンに出現した甘口シラー:シラーズ(Syrah:Shiraz). シラー種はロワール地域が著名だが、これは量産ワインが多いラングドック・ルシオン地方産. 1080円/750ml.とても甘いタイプのシラーだが下戸の多い日本向けなのだろう. シラーの辛口タイプはニュージーランドなど新興産地でも栽培が盛んとなっている. 同じくイオンや西友が扱う白ワインのヌーボーはマコネイ地区のシャルドネ. イオンが1080円/750ml.西友が1180円/750ml. 空輸とはいえ1000円超えではお奨めできない。 西友が販売するマコン・ヴィラージュ(白) 1180 円/750 ml. 2012年はペットボトルのヌーボーが販売量で主流となった元年でしたが、 2013年は御三家のイオン、西友にボージョレ-地域以外のワインが出現した元年。 百円ショップのダイソーがスペインの名品種、テンプラニーニョ(テンプラニーリョ)を 2013年年から販売開始。 ブレンド無し単品種の名酒が310円/700mlの驚くべき低価格。 ガメ種だけではヌーボー市場が維持できなくなったといえるだろう。 *例年セブンイレブンが扱うジョルジュ・デュブッフ社(サントリーが輸入)は ボジョレー・ヌーボー・ヴィラージュ2450円/750 mlのみ。西友でも販売されていました。 2.ボジョレー(ボージョレー)・ヌーボー(Beaujolais Nouveau)の歴史 ボジョレー・ヌーボー(Beaujolais Nouveau)は、ガメイ(ガメ種:Gamay noir)のブドウで造られます。 永らくこの地域の新酒は、カラフェ売りや樽売りの安いワインで、地元や近郊の最大消費地リヨンなどの 居酒屋やビストロで供されるものだったようです。 100年ほど前から、ガメ種のブドウは若いワイン(Beaujolais Primeur)が美味しいと認識され始め、 ボジョレー(ボージョレー)地域では収穫祭のように、栽培や醸造の関係者が集まって促成の新酒を 楽しむようになったといわれます。 その後1937年ごろから、法的な制約(詳細不明。製法制限?)が課されるようになったことと、 世界大戦のための停滞期が続きます。 近郊のヴィシー(Vichy)には大戦中の臨時政府も設けられた混乱期。 大戦後の1951年に、1937年の制約を廃止。 地域組合が自発的にボジョレー・ヌーボーの定義を正式決定しました*。 パリやリヨンでも、毎年ボジョレー新酒の出来具合を評価する愛好家が出現し、1960年代には 「新しいボジョレー(ボージョレー)が到着しました:Le Beaujolais Nouveau est arrive」というスローガンも。 パリのホテル・レストランでボージョレー新酒(Beaujolais Primeur)がメニューに載ることもありました。 大都市のリヨンなどでは、出来立てのボージョレー新酒(Beaujolais Primeur)を楽しむ集会などが 開催されますが、あくまでも小規模、地域的なものだったそうです。 近年になり、いくつかの大都市で、お祭り騒ぎが演出されるようになりましたが、地元メーカーの 輸出マーケッティング戦略の一環であったようです。 ボージョレー・ヌーヴォーを語る時に、フランス人のインテリでボージョレ・ヌーヴォーを知らない人が いたという話が過去には色々ありましたが、フランスには有名ワイン産地が各地にあり、 ボージョレー地域には促成でない高級ワインのボージョレー・クリュもあります。 どちらかというと、ボジョレー・ヌーヴォーは輸出向けのキャンペーンですから、 知らないフランス人がいても自然といえます。 *1951年にボージョレ・ワイン従事者職業組合が結成され (the Union Interprofessional des Vins de Beaujolais UIVB)、ヌーボー・ワインは 当初12月15日を解禁日。 その後11月15日となり、さらに11月の第3木曜日となりました。 3.デュブッフ社(DuBoeuf)のマーケッティング戦略 アメリカ、オーストラリア、チリなど新勢力(新世界:new world)に押しまくられていた ガメイ種のワインをボジョレー・ヌーヴォーで盛り上げたマーケッティングの仕掛け人は 集荷業者(ネゴシアン)のジョルジュ・デュブッフ社(Georges Duboeuf)といわれます。 当初は米国向け(1981年)のキャンペーンだったようですが、近年は宣伝に踊りやすい日本が 主要ターゲットとなっています。 デュブッフ社のマーケッティング戦略の一端 *リヨンの著名三ツ星レストランのオーナーシェフであるポール・ボキュース(Paul Bocuse)氏との交際で、ボジョレー・ワインをメニューに入れ、高級品を演出。ポール・ボキュース氏の 日米への進出とともに名が知られてきました。 *デザイナーを特定し、ラベルデザインを毎年変えて、視覚的にも注意を惹くように企画。 *生産地には、ディズニーに影響を受けたミュージアムのワイン村(Le Hameau du Vin) (所在地:Romaneche-Thorins)を開設。 内外の訪問者にボジョレー・ワインの全てをPR.。 *海外の有力販売業者の獲得。 日本ではサントリーが総代理店。 2004年のヌヴォーはセブン・イレブンもチャネルとなりました。 *自社農園以外のワインも扱うブローカー機能を持ち、幅広い需要に応える。 現地の平均単価が3.2ユーロ(約330円/2012年:4百数十円/2004年)/750mlといわれる、 安かったワインが、日本では航空便を使うためもあり、販売価格は安価なものでも2000円前後、 高価なものは3500円前後くらいになりました(2004年)。 それでもブーム時は完売しましたから、デュブッフ社のマーケッティングは大成功。 日本市場は瀕死のガメイ種ワインの救世主といえるでしょう。 アルコールに弱い日本民族は味の良しあしよりも、初物ワインを試飲する雰囲気を買います。 ボジョレーでは、やや高級品といわれるヴィラージュ地域*なども、2004年以降は 年間生産量の三分の一がボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボーになっているそうです。 広大な2級栽培地の収穫を、短期間で換金するという戦略は、世界中のワイナリーの羨望の的。 2003年には「100年に1度の出来」「近年にない良い出来」との キャッチコピーで煽られました。 反面、辛口の評論家はボジョレー・ヌーボーを評価しません。 歴史的に、安価なワインの分類の上に、人気が出てからは、適地でないところでも 生産をしているからというわけです(Alexis Lichine)(未確認)。 フランスの他の地区、たとえば近隣のサボア県(Savoie)などでも、ガメイ種のワインがありますが、 ボジョレー・ヌーボーやボジョレーとは味、製法が違うということを売り物にしています。 日本では一昨年あたりからボージョレー・ヌーボーもスーパーなどではコストダウンを工夫する業者が出現。 ペットボトルなど容器に工夫して1000円/750ml以下の安価なワインが販売されるようになりました。 (2012年には580円/750mlまで下げたボージョレ―・ヌーボーも) またフランスの他地域やイタリア、スペイン、オーストラリアなどの新酒を輸入する業者も増えてきました。 新酒を試したいというニーズは絶えないようです。
2012年は大不作に関わらずペットボトルの廉価版で数字を作ったのが大手業者 4..ボジョレー(ボージョレー)地域のワイン産地 ボージョレー地域はソーヌ川(Saone)沿いに、バーガンディー地方(ブルゴーニュ地方)の ソーヌ・エ・ロワール県(Saone-et-Loire)とローヌ・アルプ(Rhone-Alpes)地方のローヌ県(Rhone)に跨り、 全体で55000エーカー※。 これはバーガンディー地方の他産地と較べ最大の面積。 ボージョレー地域には1937年9月12日以来、12の呼称(appellations)があり、 年間約175 百万本/750mlの生産量。 (※)1エーカー(acres)=約4046平米 ボジョレー地域のブドウ栽培地はニゼラン川(Nizerand River)に分離されて、 高地域(Haut)と低地域(Bas)に分かれています。 1395年7月にブルゴーニュ公国王(Bourgogne)であるフィリップ(Phillip the Bold)は、 ガメ(ガメイ)種(Gamay noir)のブドウ栽培を禁止しました。 領地内ではピノ・ノワール種(Pinot Noir)を専門に栽培しましたが、当時は領地外(?)であった ボージョレは、ガメイ種を作り続けることを決定したそうです。 したがって、この地区にはガメ種に特別な思い入れがあります。 現在でもボジョレー地域はブドウ栽培の98%がガメイ種。 ボジョレー地域では大別して5種類のワインが生産されています。 (Crus of Beaujolais) *バ・ボジョレー(Bas Beaujolais:低地のボジョレー) ニゼラン川(Nizerand River)に分離された南部は23000エーカーほどあり、 バ・ボジョレー(Bas Beaujolais) と呼ばれています。 アルコール分が9.5%程度のボジョレー・ヌボーやボジョレー・ワインの産地で、 ボジョレー地区全体の半分近くが、ここの生産。最近では大部分がボージョレ・ヌーボーで 出荷されているようです。 この地域の一部にアルコール分が1%程度高い、やや高級品の ボジョレー・スペリオール(Beaujolais Superieur)の産地があります。 *オー・ボジョレー(Haut-Beaujolais:高地のボジョレー) ニゼラン川の北部14000エーカー(acres)ほどの地域はローヌ県(Rhone)に属し、 オー・ボジョレー(Haut-Beaujolais) と呼ばれ、ボジョレー・ヴィラージュ(Beaujolais Villages)と ボジョレー・クリュ(Beaujolais Cru)の産地。 低地のボジョレー(Bas Beaujolais)よりアルコール分が1%程度高い高品質ワインを産出するといわれる地域。 ボジョレー・ヴィラージュには39 の村がありBeaujolais-Villages とラベル表示するか、 Beaujolais の後に村(villages)の名前を表示します。 5.トップブランドのボージョレー・クリュ (Crus of Beaujolais)産地 地域のトップブランドであるボージョレー・クリュ(Beaujolais Cru)の産地(村)は10箇所あります。 シェナ、モルゴン、ムーラン・アヴァン村などが、重みのある香りのワインで評価の高い産地。 これらクリュ・ワインはブランド名(村名)のみを表示しています。
カルボニック・マセラシオン(carbonic maceration)とシャプタリザシオーン(chaptalization) ボージョレー・ヌーボーには カルボニック・マセラシオン(maceration carbonique:carbonic maceration)と呼ばれている、 フランス独特の製法を使います。 これはブドウをほとんど潰さずにステンレスの大樽に入れ、イーストなどの微生物を使い、発 酵を促進する方法(anaerobic metabolism)。 この生産手法を一部工程に導入するセミ・カルボニック・マセラシオンと呼ばれる手法もありますが 大きな相違は認められません。 カルボニック・マセラシオンは色々な品種のブレンド・ワインを、促成するときに良く使われるテクニック。 大衆ワインの大生産地ラングドック(Languedoc-Roussillon:フランス)や新世界(ニューワールド)の一部でも低品質なブドウの処理に使用されているようです。 この製法により、品種毎に異なったブドウの香りを損なわず、酸味が調節されたワインが7-9週間で 出来上がるといわれます。 促成ではないボジョレー・ヴィラージュ(Beaujolais-Villages)や高級品のボジョレー・クリュ(Beaujolais Cru)は、 必ずしもこの製法を使用しません。 この地域では糖分を添加する技術、シャプタリザシオーン(chaptalization)が併用されることもある、 といわれますが、未確認。 いつのころからかマセラシオン・ショウ(Macération à chaud)という言葉がささやかれるようになりました。 特に新世界ワインが急増してから話題になりましたが、これは超特急で生産するために 生産に加熱工程が入る手法。 Macération à chaudはフランス語ですからフランスの促成ワインでも採用されているのでしょう。 マセラシオン・ショウでは赤ワインに重要なポリフェノール、特にレスベラトロールが損失します。 どの範囲まで拡がっているのか定かではありませんが、呼称制度の確かな産地は許していないはず。 表示義務を課してもらわねば噂のある産地、メーカーからは安心して購入できません。 7.ボジョレー(ボージョレー)・ヌーボーとブドウ・レスベラトロール(resveratrol) 味はともかく、ボージョレー・ヌボーの利点の一つは、ポリフェノールのレスベラトロールが多いこと。 ただし、加熱工程が入るマセラシオン・ショ(ウ)(Macération à chaud)を採用した促成ワインは 発酵菌ばかりでなくレスベラトロールも損失しています。 人間の寿命延長にかかわるというレスベラトロールは発酵により安定する物質。 加熱処理したワインやぶどうジュースでは消滅します。 レスベラトロールは一般的にはバーガンディーの他の地区で作られる赤ワインのピノ・ノワール種(Pinot Noir)に含有量が多いといわれます。 ストレスの多い年(暑さや、害虫など)の新酒(ヌーボー)には特に多く含まれますので、 ボージョレー・ヌーボーもこの点で価値があります。 https://www.botanical.jp/item_view.php?item_number=28 8.ボジョレー(ボージョレー)地域の有力ワイナリー ボージョレー地域には、評価の高い有力ワイナリーが幾つもあり、欧米評論家が推奨する ワイナリーの上位を平均すると12社くらいになります。 評論家の間ではマーセル・ラピエール社(Marcel Lapierre)が 最も評価が高いワイナリーのようです(2004年現在)。 日本で著名なデュブッフ社(DuBoeuf)はマーケッティング能力に優れ、商社機能分を含めると、 取り扱いはボジョレー地区総産出量の10数%以上を占めます。 [日本に輸入されるものは、多くがネゴシアン(Negociant)と呼ばれる、集荷商社のブランドで 輸入されることが多いため、有力生産者の製品に関わらず、ここに名前が無い場合があります イオン、西友、サントリーなどのラベルにある名称は商社名です]
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