健康と食品の解説
長寿社会の勝ち組となるには(その17):
トリプトファンによる好酸球増多筋痛症候群(EMS)事件
合成必須アミノ酸の安全性
2017/02/25
1990年代に発生した必須アミノ酸のL-トリプトファン・サプリメントによる
好酸球増多筋痛症候群(EMS)発症は日本企業が2,000億円を超えるとも言われる
賠償金を支払った大事件でした。
合成アミノ酸による食品やサプリメントが10年来のブームともなっている現在、
その事件を思い起こし、学ぶことは健康長寿の勝ち組になるには必須の知恵。
この事件は必要悪として合成アミノ酸を大量摂取するプロスポーツ選手や芸能人の
真似をする危険性を示唆しています。

このコラムでは、この健康障害事件発生当時に厚生省(厚生労働省)で事件を担当され
現在日本食品衛生学会会長を務められる米谷民雄(まいたに たみお)博士の
回顧記録(2009年:食品衛生学雑誌)をベースに、事件をダイジェストで紹介しています。

米谷博士は京都大学薬学部で食品衛生学、食品化学、分析化学などを学び
厚生労働省では残留農薬などによる食品の汚染についての調査や、
食品に含まれる金属について化学形の分析をテーマにされていました。
「必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究」
厚生労働省での最後の研究報告となりましたが、安全性の高いアミノ酸合成と
適正摂取量のむつかしさをよく知られている方です。
産業振興と消費者保護を両立させ無ければならない立場ですから
中立性、公正を保つ報告書の作成には相当な困難があったことが伺えますが
適格に事件内容を把握されて、消費者への警告がなされています。

「合成アミノ酸過剰摂取の危険性:
高血圧、心臓病、感染症悪化、インスリン代謝阻害」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=541
 

 


 日本では生産されていませんが米国では現在でもトリプトファン、セロトニン、メラトニンが
販売されています。神経系に作用する合成アミノ酸の長期間使用は避けた方が良いでしょう。


 

1.トリプトファンのサプリメントと好酸球増加筋肉痛症候群
2.日本における好酸球増加筋肉痛症候群の事例と厚生労働省の対応
3.好酸球増加筋肉痛症候群とは
4.経済性が最優先された昭和電工のトリプトファン合成


1.トリプトファンのサプリメントと好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)
トリプトファン(Tryptophan)は体内生成ができない必須アミノ酸.
体内ではヒドロキシトリプトファン(5-Hydroxytryptophan :5-HTP)、
セロトニン(serotonin)、メラトニン( melatonin)に代謝され、
睡眠と日内リズムに関与するアミノ酸。
米国ではトリプトファンや、その代謝で産するアミノ酸を個別に合成したサプリメントが
販売されています。
(セロトニンの前駆物質であるトリプ卜ファンは不眠症などに対して
米国では1974年から医師による処方がなされていたといわれます。)

            

トリプトファンやメラトニンのサプリメントは1990年代前後に睡眠導入作用を持つ
サプリメントとして米国で愛用者が急増しましたが、間もなく好酸球の急激な増加と
強い筋肉痛を伴う患者が多数発生していることが判明。
事態を重く見た食品医薬品安全局(FDA)の命により1989年11月17日に、
指示どおりに摂取すると1日に1000㎎以上を摂ることになるトリプトファン・サプリメントが
回収されました。
また100 ㎎未満でもEMS患者が発生したことから,翌年3月22日には摂取する量に関係なく
対象の範囲が広げられました。
当時のトリプトファンの米国市場は日本の総合化学品メーカー昭和電工が過半を占めていました。

症状は好酸球増加筋肉痛症候群(EosinophiliaMyalgia Syndrome:EMS)と
名付けられましたが、トリプトファンのサプリメントによる被害は1992年8月
当時だけで1,500件以上、神経障害や心肺疾患による死者が38名といわれています。
発症者のほとんどが白人で8割は女性。
平均して1.250㎎が6か月間にわたり摂取されていましたが、中には11,500㎎の人も。
即効性を求めて安全性を無視、大量摂取する人は何処の国にもいるようです。
現在は容量を抑えた商品が販売再開されていますが、安全性確保は自己責任でということです。

2.日本における好酸球増加筋肉痛症候群の事例と厚生労働省の対応
日本ににおいては、三重大学から2例,北里大学から1例の
EMS様患者の報告がされています。
三重大学では同じ医師が1日1,000mgのトリプ卜ファンを処方し,
同時に抗不安薬(マイナートランキライザー)のジアゼパムも処方しています。
また北里大学の事例ではハワイで購入したタブレットを3か月服用していました。

厚生省は1990年3月31日に生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長が
「アミノ酸を含有する健康食品の取扱について」を通知しています.
その中では,「特定のアミノ酸を高濃度に含有させた健康食品を継続的に摂取すると
アミノ酸バランスを損なうおそれがあるので,このような健康食品を継続的に
摂取することのないよう注意すること」
としています.
また1990年4月27日には、昭和電工と同社製トリプトファンを使用して健康食品や
医薬品を製造している国内5社に対して,
トリプトファン関連商品を回収するよう,指示を出しています(米谷民雄博士).

「合成アミノ酸過剰摂取の危険性:
高血圧、心臓病、感染症悪化、インスリン代謝阻害」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=541

3.好酸球増加筋肉痛症候群とは
好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)は白血球の一つである好酸球(Eosinophil granulocyte)が
異常に増加することにより発症します。
好酸球は花粉症、喘息などのアレルギー疾患、寄生虫感染症、悪性腫瘍によって
増加することが知られています。
EMSは重度の筋肉痛や、好酸球の増加に伴う臓器不全などがおこる疾病ですが
米国疾病予防管理センター(Centersfor Disease Control and Prevention:CDC)の定義によれば、
EMSは,
1) 血中好酸球数が1,000個jmm3以上
2) 活動不能なほどの筋肉痛
3) 感染症やがんの徴候がない
の3つの条件を満たすものとされています(米谷民雄博士)。

4.経済性が最優先された昭和電工のトリプトファン合成
事件の原因はトリプトファンの大量摂取ばかりでなく、製造方法による
不純物の発生(混入?)がもっとも疑われましたが、不純物は
アミノ酸の合成手法を何度か変更するたびに発生したようです。

好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)が大発生した当時の米国ではいくつかの
トリプトファン・サプリメントが販売されていましたが、市場を寡占していたのが昭和電工。
トリプトファンがセロトニンやメラトニンに代謝される経路が抑うつ症や
不眠症を患う消費者に歓迎されて爆発的な売れ行きだったそうです。
後に問題とされたのは経済性を優先させた合成方法の変更。
事故をおこしたトリプトファン・サプリメントのほとんどが昭和電工製に
よるものであったためにトリプトファンの合成方法に原因が特定されることとなりました。
(米谷民雄博士)。

昭和電工はアントラニル酸(2-アミノ安息香酸)を前駆体とする発酵法(前駆体法)により
トリプトファンを合成していていましたが,使用する菌については生産効率を上げるた
めに,順々に改良が加えられていきました(詳細は省略).

(お断り)
引用した米谷民雄博士の回顧記録(2009年:食品衛生学雑誌)の主題は
「L-トリプトファン製品による好酸球増多筋痛症候群(EMS)および変性なたね油による
有毒油症症候群(TOS)」
1981年5月にスペインで発生した変性ナタネ油による有毒油症候群(TOS)は
死亡例が1,799名ともなった 大事件ですが、EMSの症状が
TOS(Toxic Oil Syndrome)の症状に類似しており原因物質が同じではないかという検証です。
長文ですので今回は好酸球増多筋痛症候群のみをダイジェストしました。

変性ナタネ油による有毒油症候群(TOS)は下記の続編でご紹介しました。
「長寿社会の勝ち組となるには(その18):
ヨーロッパ近代史上最大といわれた食中毒事件
スペインで発生した有毒油症症候群(TOS)」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=540


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エネルギー源となるエーティーピー(ATP:アデノシン三リン酸)とは
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「ヒジキなどの食品ヒ素に肺がんリスク:国立がん研究センター」
ヒジキは必ずしも健康食品ではありません
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=123


https://www.botanical.jp/item_view.php?item_number=36

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