ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第百三十六話:「芋は里芋、他に甘藷や馬鈴薯も」
2022/08/28
芋は外来の野菜なので、日本へ伝来した年代や品種によって、同じ「いも」でも、
当て字を使い分けるようです。
代表は、何と言っても「里芋」で、原産地は熱帯アジアで海洋民族が日本列島に渡来して
定住した縄文人たちが、栗(くり)と共に主食に近い食品としていたことが分かって居り、
我が国最古の芋に間違いなさそうです。
里芋に因んだ行事や祭りは、日本各地にあり、旧暦八月十五夜と九月十三夜に夜空の月に
供えることからも、代表的な秋の季語となっているように、収穫祭の名残だと言われております。
また、親芋の周りに子芋、孫芋が密集してつくことから、八頭・九面芋と共に、
子孫繁栄の象徴ともされ、正月の雑煮の主役を担う地域も多いようです。
他種のいもと区別するため、家芋、田芋の別称もあります。

秋来ても色には出でず芋の蔓       井原西鶴
芋洗ふ女に月は落ちにけり        池西言水
むら雨を面白さうに芋畠         加藤暁台
芋洗ふ女西行ならば歌よまむ       松尾芭蕉
芋を掘る手をそのままに上京す      高浜虚子

総称の芋と違う字の「藷」は、甘藷(薩摩藷)でお馴染みですが、大航海時代のコロンブスが
中南米からスペイン・ポルトガルへ持ち帰り、その後東南アジアへ伝わり、
慶長年間(16世紀末~17世紀初頭)、宮古島(琉球藷)から鹿児島へもたらされ、
追って長崎や九州一帯にて栽培され、次いで京都・大阪へと伝わりました。
その後、甘藷が飢饉に際して有効な作物であることに注目したのが八代将軍吉宗で、
その命により青木昆陽が栽培法を研究し普及に尽力した結果、
18世紀中には、北海道・東北を除く各地へ産地が広がりました。
因みに、江戸時代の風物詩「焼きいも・蒸しいも」は、冬の季語となっております。

ほの赤く掘起こしけり薩摩藷       村上鬼城
ほっこりと爆ぜてめでたしふかし藷    富安風声
藷堀りの楽しみ畝に探り当て       高浜年尾

最後に、自然薯、馬鈴薯の「薯」には、また違った歴史と品種があります。
先ず自然薯は、自然生とも書かれるように、日本原産の天然種で、縄文時代から
食用にされて来たようです。
色々ある「山いも」の一種ですが、後世伝わった「長芋」は外来種です。
一方、馬につける楕円形の鈴に似た形から名付けられた馬鈴薯は、
江戸時代にインドネシアのジャカルタから伝わったので、ジャガタライモが転じて
「じゃがいも」とも呼称されますが、元来は南米アンデス高原産が欧州に伝わったもので、
アイルランドの飢饉を救った品種を川田男爵が輸入、北海道で試作・量産に成功した
「男爵イモ」は有名です。

この橋を自然薯掘りも酒買ひも      高野素十
かなしくて馬鈴薯を掘りさざめくも    石田波郷
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