ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第百三十二話:「若葉・青葉・新緑・新樹」 
2022/04/30
日本千思万考  「若葉・青葉・新緑・新樹」    
 
初夏の季節感を色で表現するとしたら、「緑」それも、「若緑・浅緑・薄緑」の類であって、
盛夏のイメージに重なる「深緑・万緑」とは違って、”美しき五月”に相応しい、
すがすがしい息吹を与えてくれます。
ういういしい初夏の木の葉、みずみずしい若葉は、新鮮な命の光りを宿しているように
目に飛び込んできます。
若葉する場所によって、山若葉、谷若葉、森若葉、里若葉、寺若葉、庭若葉などと表すとか、
若葉の頃の寒さや風雨を、若葉寒、若葉風、若葉雨と言うように、時候や天文と
結びつけて用いる季語もあります。

若葉して御目の雫拭はばや        松尾芭蕉
若葉して手のひらほどの山の寺      夏目漱石
まざまざと夢の逃げゆく若葉かな     寺田寅彦
若葉吹く風やたばこのきざみよし     服部嵐雪
古本の本郷若葉しんしんと        山口青邨          
 
若葉がやや成長して、益々生い茂り緑を少し濃くし、青々とした生気を漲らせるさまを表すのが、
青葉でしょうか。
濃淡様々な見え方を青葉若葉などと表現します。余談ですが、青葉と言えば、
山の緑に魚が集まると言う現象を名付けて「青葉潮」と言う美しい季語があるそうです。
晩春から初夏のころ、太平洋沿岸を勢いよく北上して来る暖流のことで、
カツオやビンナガマグロ、クロマグロの群れの急速な動きと一致していると海洋学者が書かれております。
場違いですが、例句を一つ加えておきます。

           旧住友家俣野別邸庭園(横浜市戸塚区)

あらたふと青葉若葉の日の光       松尾芭蕉
はっきりと亡き人かなし青葉山      立花北枝
心よき青葉の風や旅姿          正岡子規
青葉潮をかこみ其の中青い島をおく    萩原井泉水
 
新鮮な木の葉でおおわれる木々には、夫々の趣があって、優しい気持ちにさせてくれますが、
これを色彩に焦点を当てて表すのが、新緑で、若々しくさわやかな木の感じを総称して新樹と言います。
特に、若葉は緑の柔らかさを感じさせてくれますが、新緑と言うと、
目覚めるような溌剌とした感じを抱かせるのは、さわやかな夏到来を告げる響きが齎す
語感にあるのではないでしょうか。
ただ、新緑は季語として比較的新しいのか、江戸俳人の例句が探索出来ませんでした。

新緑に命かがやく日なりけり        稲畑汀子
新緑やたましひぬれて魚あさる       渡辺水巴
煮鰹をほして新樹の透間かな        服部嵐雪
大風に湧き立つてをる新樹かな       高浜虚子
夜の雲に噴煙うつる新樹かな        水原秋櫻子
 
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