健康と食品の解説
長寿社会の勝ち組になるには(その24):
赤紫色素は美容と長寿の最強抗酸化ポリフェノール(7)
ナスの長寿ポリフェノールはアントシアニンとクロロゲン酸の相乗効果
2017/05/26
日本は長寿の国としても知られていますが、認知症や癌の発症率では先進国のトップクラス。
これは生活のクオリティーを保っていない長寿を意味しますが、保健、医療関係者が指摘する
最大の原因が世界有数の野菜嫌い。
日本人の健康生活の維持、改善に最も欠けているのが野菜、果実のポリフェノール類。
それにもかかわらず、果実、野菜の品種改良では苦さ、渋さの原因となる
ポリフェノール類を減少させた品種が開発されています。
長寿国だから認知症と癌が多いのは当たり前とうそぶくだけでは現状は変えられません。
野菜、果実は環境と食生活にあふれる発がん物質と戦うことが出来る貴重な援軍です。



1. 40年間で需要が半減した野菜はナス
2. 欧米が注目しているアジアのナス食文化
3. ポリフェノールは植物によって機能が異なります
4. ナスのポリフェノールはクロロゲン酸が主役
5. クロロゲン酸は料亭、割烹の調理人から嫌われる
6. 種類によって異なるナス果実中のクロロゲン酸含量


http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=399
ポテトのクロロゲン酸とポテトスープの健康度:アヒアコとヴィシーソワス
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=661
コーヒーのクロロゲン酸とニコチンアミドの功罪

1. 40年間で需要が半減した野菜はナス
日本の野菜消費量は年々減じており、ほとんどの種類は供給過剰。
少子化による人口減が原因ともなっていますが、野菜嫌いの国民性もあるようです。
キャベツ、キュウリ、ネギ、ニンジンなど10種類の重要野菜は横ばいを保っていますが、
この40年間で唯一需要が半減したのはナス(野菜生産出荷安定法の指定野菜11種類)。
ナスには他の野菜には無い特別な保健機能があることが知られていないからでしょう。

日本のナス消費の低迷は、現在のナスが若者向きでなく、時代にそぐわないからなのかもしれません.
野菜嫌いが加速している高度成長期以降の世代には、タイの*ミェンカムやスープ類に倣った(ならった)
ナスの食べ方を新たに提案するのも一法。
それにはタイ風であっても、苦み、渋味が美味しいと感じられる程度の日本人向き小型ナス開発が必要です。

日本人の食生活に最も不足しているのが野菜や果実のポリフェノール類にも関わらず
品種改良の現場では渋味、苦味の原因となるポリフェノール類が除去対象となり
急速に失われています。
この傾向に逆らって、「健康野菜」をテーマに、オードーブルの生食や、
カレー、トムヤン風スープにピッタリの超小型品種を開発すれば、その栄養価を楽しむファンが
増えてくるかもしれません。

「下記のリンク参照:タイの生野菜食文化と超小型ナスの色々を紹介しています」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=444

トップの写真はタイの街角で見かけたディップ・ソース屋さん.
多様なソースで幾つかの生野菜を食しますが、これがタイ式オード―ブルの
ミェンカム(miang kham).
ミェンカムの野菜とソースの組み合わせは多様.野菜は小マルナスが主役の一つ.
(改良しなければ日本人の食にはまず無理でしょう)
選択肢の広さが現代の若者向きです。

ミェンカムは小マルナス、小キャベツ、さやいんげん、小ゴーヤなど
3-4種類の野菜をセットしてコンビニでも販売されています.


  
タイ通称:マクワ・プアン(上)
辛さの香辛料としてスープに使用されます。
 

2. 欧米が注目しているアジアのナス食文化
バター、牛脂など飽和脂肪酸過剰な食生活を続けている欧米人の最大の悩みは
肥満と心筋梗塞など心臓血管病。
欧米人の食生活改善には数多くのアジアン食材、料理が研究されましたが、
特に注目されたのがタイ、ベトナムの食文化。
ベトナム戦争で両国の健康的な食文化を知った欧米の医療関係者が
注目したのが野菜の中心的な位置を占めているナス(Solanum melongena Linn)。
むろん欧米では古くからナスは食されてきましたが、健康素材としての認識は
それほどではありませんでした。

タイ、ベトナムの欧米食の悪影響の少ない地方では、いまだにスリムで
強靭な肉体を持つ人が主流。
都市部では欧米のファーストフード、清涼飲料文化の悪影響、で肥満と心臓血管病が
増えていますが、そのことが、
いみじくも欧米、特にアメリカのインスタント食文化とアジアの食文化の
健康度差を立証しています。

「タイのナス食文化の紹介が下記にあります)
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=441

3. ポリフェノールは植物によって機能が異なります
ご自分で計算し「ポリフェノールを総量で一日500㎎は摂取している」と自慢する人が
いますが、これで全ての健康を賄う(まかなう)ことは出来ません。
ポリフェノールは,同一分子内に複数のフェノール性水酸基(ヒドロキシ基)をもつ
植物成分の総称。
ほとんどの植物に含有され、その数は5000 種以上に及ぶといわれています。
光合成によってできた植物の色素や苦味の成分であり、生体防護機能、抗酸化能力に優れた
水溶性(一部は脂溶性)物質。
数多いポリフェノールも含有植物によって特に優れた働きをする種類があります。
これは植物に含まれるテルぺノイド、アルカロイドなどと協働、補完して機能が増進すると
考えられています。
したがって同じ構造のポリフェノールでも含有植物によって働きが異なります
ブドウポリフェノールのレスベラトロールはこの最たるものですが、ナス・ポリフェノールの
クロロゲン酸(後述)も他とは異なる有用性を持っているのです。

4. ナスのポリフェノールはクロロゲン酸が主役
紫色のナスには赤紫色素のアントシアニンが相当量含まれますが、含有ポリフェノール類で
特徴的なのは渋味の素となっている*クロロゲン酸。
クロロゲン酸は紫色だけでなく、緑色のナスにも含まれます。
ナスのクロロゲン酸はイソクロロゲン酸(3,5-dicaffeylquinic acid)、
ナス・アントシアニン(ナスニンと通称される)、テルぺノイド、アルカロイドなどと
協働、補完して消化器、代謝性疾患、認知症や眼の健康などに働くことが知られている
独特のポリフェノール。
最近では消化器系の癌抑制にも大きな期待が持たれています。
*クロロゲン酸:コーヒー酸のカルボキシル基とキナ酸の水酸基との間で
 エステル結合した化合物
 焙煎前のコーヒー、ジャガイモの皮にも多く含まれていますがナスと機能が同じとは
 いえません。

5. クロロゲン酸は料亭、割烹の調理人から嫌われる
ナスのクロロゲン酸は外果皮や種に豊富ですが、クロロゲン酸を構成する*カフェ酸には
渋味があるといわれ、調理人はクロロゲン酸豊富な外果皮や種を除去したり、
水分が多く、クロロゲン酸の少ない加茂ナス、水ナス、矢田系(奈良在来丸ナス)などを
好んで選択する傾向があります。
山口県の伝統野菜である「田屋ナス」は可溶性ペクチン含量が多いために、とろりとした
食感が調理人好みですが、やはりクロロゲン酸が少ないそうです。
*カフェ酸:コーヒー酸、カフェイン酸と同じ

料亭や高級割烹の懐石などの日本料理は、見た目の美と美味しさを追求する
独特の伝統がありますが、あく抜きや、包丁加工によって、
健康維持、増進に必要な部分まで廃棄する傾向があります。
この伝統は野菜や果実の品種改良にも及び、癖の少ないマイルドな品種が増えており、
ナスも例外ではありません。
日常的な食生活では、伝統文化を守る料亭や高級割烹とは一線を画し、健康志向の料理法や
健康に有用な素材の選択が望まれます。

*仙台の長ナス漬けなど、ナスの漬物は加工食品として全国的に売られますが、
廃棄される下漬け液からは大量のナス・アントシアニン(ナスニン)やクロロゲン酸、
イソクロロゲン酸が検出されるそうです。
健康に有用な成分を大量に失っていることを意味します。。


6. 種類によって異なるナス果実中のクロロゲン酸含量
食材の健康への有用性を研究する現場では、ターゲットの素材が、どのような有用成分を
どれくらい含有し、人がそれをどのくらい摂取できるかを調理法別に比較します。

調理が絡むために女性の研究に秀作が多くありますが、食材の持つ生体調節機能に
女性らしい関心を持ち、農芸化学や医学とは異なる、農業と医学とを
食事で結ぶ新たな分野に挑戦しています。
名古屋女子大学の黒澤祝子さんはこの分野の先駆者。
20年くらい前から食材のポリフェノールに注目した研究を幾つも発表しています。
ナスの品種別比較実験ではクロロゲン酸は種子>外果皮>芯>中果皮の順に
多く含まれていたそうで、クロロゲン酸及び総ポリフェノールの含有量は
「米ナス」が「加茂ナス」「水ナス」よりもはるかに高いことがわかったそうです。
黒澤祝子さんは加熱調理によって甘味やうま味に関する糖やアミノ酸が増加し、渋味が
低下することも確認しているようです。(これがクロロゲン酸減量に通じるかは不明)

緑色のナスもいろいろありますがクロロゲン酸含量は多いほうです.
赤紫色素のアントシアニンが欠けるためにお薦めは出来ません.

ナス果実中のクロロゲン酸含量についての測定は他の研究者のレポートもいくつかあり、
花弁>外果皮>果肉の順に多く含まれていたそうです。
また、「長ナス」、「庄屋大長」、「白ナス」よりも、米ナス、緑ナス、小丸ナスに
クロロゲン酸含量が多かったそうです。
黒澤祝子さんの実験結果とほぼ同じといえましょう。
この研究では果肉中のクロロゲン酸含量を生重1g当たり1mg程度と計測しており
クロロゲン酸含量と活性酸素消去活性に相関関係を認めています。

(生鮮食材研究家:しらす・さぶろう)

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http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=189


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