健康と食品の解説
プロテオグリカンは関節軟骨生成、間隙充填の必須成分:
新製品を装う難解用語の氾濫
2017/04/14
グルコサミン、コンドロイチンは細胞外マトリックスの主要構成物質の一つ。
加齢や傷害で関節、筋肉を痛めた方々には、お馴染みの糖蛋白ですが
かってはムコ多糖類と呼ばれ、タンパク質と糖が結合した多糖類として知られていました.

エビ、カニなど甲殻類の糖たんぱく質から得られるキチンの様々な派生物質や化学合成で得られた
ムコ多糖類がサプリメントとして出回っていますが、多糖類は皮膚、骨、軟骨、関節充填液、
筋肉、内蔵器など体中の組織でタンパク質と糖類で生成され続けています。
したがって体組織の生成に必要な成分は体内で生成するのが基本。
人為的な補助には原料素材と、その分量を慎重に処方しなければ、人体の自己生成機能を損ない、
退化させる危険性があります。

ヒアルロン酸などムコ多糖類を人為的に注射や経口で体内に補填し続ければ、
処方のサイクル短縮と処方量が増えるばかり。
信頼できる公平な整形専門医の診療が必要な分野です。
合成アミノ酸生成技術が進化してムコ多糖類も合成品が売られるようになり、
グルコサミン、コンドロイチン、ヒアルロン酸などの合成類似物質を様々な異名で呼称し、
あたかも「新たな有用物質」を装うことが多くなりました。
仕掛けられたトリックを解明するためにも、見慣れない専門用語は要注意。
索引の見出しを参考にしてください。
医薬品、サプリメントのわからない言葉は専門医に相談して実情を把握する必要があります。


「合成アミノ酸過剰摂取の危険性:
高血圧、心臓病、感染症悪化、インスリン代謝阻害 」   
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=541
「トリプトファンによる好酸球増多筋痛症候群(EMS)事件
合成必須アミノ酸の安全性」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=538





1. プロテオグリカン(proteoglycan:PG)
2. グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan:GAG) 
3. プロテオグリカン構成物質のアグリカン(aggrecan)とバーシカン(versican)
4. アグリカン(aggrecan)
5. バーシカン(versican)
6. キチンから作られるキトサン(chitosan)とグルコサミン
7. キトサン(chitosan)
8. キトサンから作られキトサミンとも呼ばれたグルコサミン
9. グルコサミンは体内生成される
10. グルコサミンはヒアルロン酸を体内生成する。
11. グルコサミンはコンドロイチンを体内生成する。
12. コンドロイチン(chondroitin)とコンドロイチン硫酸 (chondroitin sulfate:CS) 
13. ヒアルロン酸 ( hyaluronic acid:HA)
14. ウロン酸(uronic acids)
15. デルマタン硫酸dermatan sulfate:DS)
16. ガラクトサミノグリカン(galactosaminoglycan)
17. ヘパリン(heparin:HP)とヘパラン硫酸 (heparan sulfate:HS)
18. ケラタン硫酸(keratan sulfate:KS)
19. (参考)L-体とD-体
20. (参考)アミノ基(NH2)


 
1.プロテオグリカン(proteoglycan:PG)
プロテオグリカン(proteoglycan)は関節などを構成する軟骨や、関節を包み込み、
間隙を充填する液状の物質。
かってムコ多糖類と呼ばれていたもので、細胞外マトリックスの主要構成物質。
鎖状に複合した糖(グリコサミノグリカン)が主体で構成されています。
遺伝子工学の発展と共に、このように糖が鎖状につながる糖鎖と、
糖たんぱく質は、疾病や免疫に関係するなど、生命活動の謎を解明できる
物質のため、生命科学の重要な研究対象となっています。
 
プロテオグリカンはたんぱく質を核として、相互に大変密接な関係がある
キチン、キトサン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸など
グリコサミノグリカンと総称される糖タンパク質で構成されています。
 
プロテオグリカンは陰性(マイナス)荷電の物質で、20種類以上の異種が
発見されていますが、分布する組織の場所により、多くの酵素が介在して
異なった過程の核タンパク質合成と糖合成がなされます。

「経口摂取のコラーゲンが障害を受けた体組織再生に寄与する」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=543
話題の皮膚、関節など結合組織の再生医療最前線!!
コラーゲンを知ることで理解が深まります。

2.グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan:GAG)                  
グリコサミノグリカンはいくつもの二糖類(disaccharide:砂糖など)が、
直鎖状に数十回繰り返した構造をしているため、直鎖多糖鎖と呼ばれます。
また種々の程度の硫酸化を受ける特徴や、コンドロイチン、ヒアルロン酸など
構成物質がウロン酸(uronic acids:果実類、野菜類に豊富)を含むために、
硫酸化多糖鎖、ウロン酸含有多糖類と表現される場合もあります。

3.プロテオグリカン構成物質のアグリカン(aggrecan)とバーシカン(versican)
プロテオグリカンは関節や皮膚ばかりでなく、体内に広く分布して、生命の維持に
大きな役割を果たしています。
グリコサミノグリカンの各々は種々の酵素によって、さらにタンパク質と
結合して変化していきます。
形を変えた物質はアグリカン、バーシカンとも呼ばれ、
タンパク質と共にプロテオグリカンの中心的構成物質となっています。 
 
4.アグリカン(aggrecan)
プロテオグリカンの最大の構成物質がアグリカン(aggrecan)と呼ばれる
硫酸化多糖の巨大分子。
ヒアルロン酸のコアタンパク(核タンパク質:core protein)に
コンドロイチン硫酸類、ケラタン硫酸が多数結合しています。 
アグリカンは水分、コラーゲンとともに関節が加重などの衝撃を吸収するための
重要成分となります。
関節軟骨以外にも脳、大動脈、腱などに存在します。
 
5.バーシカン(versican)
ヒアルロン酸のコアタンパクにケラタン硫酸が結合せずコンドロイチン硫酸が主体となって
結合した硫酸化多糖(chondroitin sulfate proteoglycan,)の巨大分子。
アグリカンよりグリコサミノグリカン鎖が少ない物質で、バーシカン(versican)
またはPG-Mと呼ばれます。
 
6.キチンから作られるキトサン(chitosan)とグルコサミン
 日本の紅ズワイガニや、タラバエビ属(Pandals)など甲殻類の
クチクラ層(cuticla:殻に存在するキチン、タンパク質、炭酸カルシュームから成る層)から
分離したキチンを80%以上脱アセチル化するとキトサンが得られます 。
そのキトサンから灰分除去、大腸菌群、重金属類の除去をすれば、
良質なグルコサミンとなります。
純度の高いキトサンは強い抗菌作用を示すことが注目されています。
変換されたアミノ基が抗菌作用を持つためといわれています。
キトサンから分離された、アセチルグルコサミンはサプリメントとしても
利用されますが、砂糖代替品として商品化されています。          
*  タラバエビ属(Pandals)タラバエビ科
北太平洋北東部のPandalus platyceros、(スポット・シュリンプ:Spot Shrimp)、
アイスランドなど北大西洋のホッコクアカエビ(Pandalus borealis:アマエビの代替品)など。
*エビ類の和名は水産業者による通称が多い。
 
 
7.キトサン(chitosan)
キトサンはキチンと共に甲殻類の殻等に含有される
糖たんぱく質(タンパク質と結合した糖)です。
キトサンはグルコサミンによって構成されていますから(アセチルグルコサミンの形)、
サプリメントのグルコサミンはキトサンから分離されます。
キトサンの成分はポリ-N-アセチル-D-グルコサミンです。
グルコサミンが少なくとも5000以上集合した化合物と言い換えることが出来ます。
キトサンは水、有機溶媒、アルカリには溶けません。
酸との加水分解をすることによって、グルコサミンと酢酸が得られます。
生体内のキトサンは酵素(リゾチーム, キトサナーゼなど)によって、
分子のごく小さいキトサンオリゴ糖(chitobioseなど)に分解され、吸収されます。
 
キトサンは、原料によりアルファ型、ベータ型、ガンマ型などの化学構造があります。
一般的なカニ、えびのキトサンはアルファ型。
ベータ型はイカの軟骨に含まれる繊維の形(筋状に同方向)ですが、
これは化学的には不安定な形のため、体内酵素で
化学反応(プロテオグリカンなどを作る作用)を起こしやすいといわれる型です。
キチンの分子構造には、平面図の分子式の下の部分にNHCOCH3(N-アセチル基)が
ありますが、このN-アセチル基(酢酸、酢)はアンモニアに近い、
アルカリ性を示します。
このN-アセチル基がNH2(アミノ基)に置換したものがキトサンです。
 
8.キトサンから作られキトサミンとも呼ばれたグルコサミン
グルコサミンはキトサンを構成するアセチルグルコサミン
(N-アセチルグルコサミン:-acetyl-D-glucosamine :GlcNAc)を加水分解し、
アセチル基を除去して精製されます。
それ故、グルコサミンはキトサミンとも呼ばれました。
*グルコとは糖のこと。
グルコサミンは、糖が一つに、アミノ酸(タンパク質)が複合したシンプルな
形の成分で、アミノ糖とも呼ばれます。
 
9.グルコサミンは体内生成される
グルコサミンは体の中で生成され、酵素、細胞膜などの糖タンパク質、
セラミドなど糖脂質、コンドロイチン、ヒアルロン酸の
グリコサミノグリカンムコ多糖類)など、生体の重要組織に広く存在します。
グルコサミンは加齢と共に体内生成が減少していきますが、処理能力も
衰えていきます。
必要以上の摂取は生きている限り存在する体内生成能力までを損ない、機能退化を
促進しますから、十分な注意が必要です。
 
10.グルコサミンはヒアルロン酸を体内生成する。
グルコサミンは皮膚や関節組織では、コラーゲンに活性を与え、
ヒアルロン酸を体内生成します。
 
11.グルコサミンはコンドロイチンを体内生成する。
グルコサミンからコンドロイチンが生成される過程は、
ヒアルロン酸を生成する過程よりやや複雑になりますが、
生体内ではグルコサミンが、酵素による化学反応で、さらに糖やタンパク質と
複合してコンドロイチン、ヒアルロン酸(ヒアルロンナン)など
様々な物質を作り出します。
サプリメントでは豚皮、牛骨、鮫軟骨などからコンドロイチンを直接抽出して
用いますが、コンドロイチンの構造は抽出母体により微妙な相違があります

「経口摂取のコラーゲンが損傷した体組織再生に寄与する」
 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=543

12. コンドロイチン(chondroitin)とコンドロイチン硫酸 (chondroitin sulfate:CS) 
コンドロイチンはD-グルクロン酸N-アセチル-D-ガラクトサミン)とも
コンドロイチン硫酸はD-グルクロン酸,N-アセチル-D-ガラクトサミン-4-硫酸) 
とも呼称されます:関節など骨、象牙質、軟骨に存在します。
コンドロイチン硫酸にはD-グルクロン酸,N-アセチル-D-ガラクトサミン-6-硫酸など
いくつかのタイプがあります。

13. ヒアルロン酸 ( hyaluronic acid:HA)
ヒアルロン酸 ( hyaluronic acid:HA)はD-グルクロン酸,N-アセチル-D-グルコサミンとも
呼称され皮膚、角膜、硝子体、関節などに広く分布します。
サプリメント、化粧品、医薬品用には人工合成したものが使われていますが
天然産物とはやや異なります。
 
14. ウロン酸(uronic acids)
ウロン酸はブドウ糖(グルコース)、ガラクトースなど単糖類のアルコール基が
酸化したものです。

ウロン酸と総称される物質には
グルクロン酸(glucuronic acid)、
L-イズロン酸(iduronic acid)、
D-ガラクトース、
ガラクトサミン(galactosamine)、
ペクチン(Pectin)のガラクツロン酸(Galactaric acid:GalA)、
アルギン酸(arginic acid)のマンヌロン酸(D-Mannaric acid)などがあります。

ウロン酸は健康に重要な成分とされ、特にりんごなど果実の多糖類であるペクチン、
昆布などの褐藻類の多糖類であるアルギン酸などに10から20%(乾燥重量)含まれています。
ウロン酸がガンに有用な成分であることの研究が宝酒造のバイオ研究所で
発表されたことがあります。
宝酒造バイオ研究所によればウロン酸含有野菜や昆布などを長時間煮込むと、
ウロン酸が化学変化をおこし
DHCP(4, 5-ジヒドロキシ 2-シクロペンテン-1-オン)という
抗ガン物質が生成されるそうですが、人に有効かは以後公表されていません。
  
15. デルマタン硫酸dermatan sulfate:DS)
デルマタン硫酸(dermatan sulfate:DS)は L-イズロン酸、N-アセチル-D-ガラクトサミン-4-硫酸とも
呼称され:皮膚などに存在します。
ヘパリンとヘパラン硫酸はグルコサミンを含むのでグルコサミノグリカンと呼びます。

16. ガラクトサミノグリカン
コンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸はガラクトサミンを含むので
ガラクトサミノグリカンと呼ぶ学者もいます。
 
17. ヘパリン(heparin:HP)とヘパラン硫酸 (heparan sulfate:HS)
双方ともにD-グルクロン酸(GlcA)とL-イズロン酸(iduronic acid:IdoA)で作られる物質。
二つの成分の構成比率が異なります。
ヘパリンは小腸、筋肉、肝臓、肥満細胞に存在し
D-グルクロン酸(GlcA)(20%)とL-イズロン酸(iduronic acid:IdoA)(80%)の比率。
 ヘパラン硫酸は肥満細胞などに存在し
D-グルクロン酸(GlcA)(70%)とL-イズロン酸(IdoA)(30%)の比率。
 
18. ケラタン硫酸(keratan sulfate:KS)
ケラタン硫酸(keratan sulfate:KS)はD-ガラクトース, N-アセチル-D-グルコサミン-6-硫酸とも
呼称され角膜など軟骨、椎間板、角膜に存在します。
  
19. (参考)L-体とD-体
アミノ酸類、糖類には分子構造が非対称な、鏡に映したような(鏡像)関係にあるL-体、D-体と
呼んでいる2体の異なった分子(異性体)が存在します。
天然のアミノ酸類はL-体のみ(例 L-アルギニン)、DNAとタンパク質を遺伝させる
RNAの糖類はD-体のみが存在します(例 D-グルコース)
天然では双方が存在することはありませんが、合成の場合は双方が等しく合成されるため、
一方が毒性を持つ異性体の場合はサリドマイド事件などのように有害薬品となります。
これが薬品などを合成するときに問題となる異性体部分です。
ノーベル賞を受賞した野依博士の不斉触媒(キラル中心触媒:Chiral Catalyst)合成の
研究と言うのは、有用異性体を選択して合成する触媒の研究です。
 
20. (参考)アミノ基(NH2)
NH2をアミノ基と言います。アンモニアの仲間で、アルカリ性を示します。         
グルコサミンはアミノロースとも呼ばれ、線維のセルロ-スの
非常に近い親戚ですが、セルロースは、NH2の所がOHとなって、
アンモニアの性質が消えた糖の性質になっています。

初版: 2004年4月
改訂版:2010年4月
改訂版:2017年4月

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