ケン幸田の世事・雑学閑談(千思万考)
第四十五話:「西進」の野望潰え黄昏迎えた
「パックス・アメリカーナ」: 日本が学ぶべきは米の隣国カナダにあり
2015/05/05
■黄昏の根は深い
今 般の安倍首相による米国訪問、オバマ大統領との首脳会談、そして上下両院でのスピーチが、
日米の絆を一層強めるという大きな成果を上げ、少なくとも安保に 関しては、二歩も三歩も前進できたこと、
さらにTPPの合意に向けた追い込みでも進展がみられたことは、日本にとっては明るいニュースとして
捉えられると 思います。
しかしながら、オバマ政権の内外政における数々の躓きは任期を1年半残して”死に体化”している事態から、
当面のアメリカがこと経済に関して往 年の輝きを喪失してしまったことから、
頼り甲斐のなさを認めざるを得ないでしょう。
残された課題は余りにも重く、今後の歳出削減と為替および金利政策 を含む財政金融政策の手詰まり、
更なる雇用の質の改善など、経済政策運営への不信感が、米景気を不透明にしているようです。
パックスアメリカーナの「た そがれ」は、意外や、根が深いのではないかと思われます。
少なくとも、オバマ後の思い切った転進が不可避となっており、中国がパックスの称号を得ること は
有り得ないし、あってはいけないので、どうしても、パックスアメリカーナの再興が急がれます。
旧聞によると、「たそがれ」が顕著化したのは、 米国の「西進」野望が
イラク・アフガンに続くリビア・シリアと言った中東政策の相次ぐ失敗と中露の横暴を許してしまった
こと等が重なり、ついに厚い 壁に跳ね返されてしまったようだ、と言ったところではないでしょうか。
19世紀前半メキシコとの戦争に勝利して、テキサス、アリゾナ、コロラド、ネバダ などを奪取、
ついでカリフォルニア、ニューメキシコを買収して西海岸へ達すると、南北戦争での足踏みを経て、
アジア・太平洋へ矛先を向けます。英仏蘭独の 東進とアジアの植民地化、ロシアの南進に
焦りを覚えたのでした。
まずフィリピンをスペインから奪取すると、余勢を駆ってグアム、サモア、ウェーク 諸島をわが物とし
、遂に19世紀末ハワイを併合します。親日派カメハメハ大王の懇願を受け、大隈重信が米政府に
強い抗議をしますが、これが20世紀初頭に おける日米関係の悪化の始まりだとも
言われてきました。
アジア本土への壁となる日本が目の上のタンコブと化したのです。
日露戦に日本が勝利する と、いよいよ米の日本警戒が主題となり、一方で中国の排日抗争の支援にも回り、
キリスト教宣教師と生糸や石油商人などを介在するスパイの暗躍が、対日戦争 への道筋を
開いていったとされています。資源輸入の自由を断たれた日本が窮地に追い込まれ、
アジア植民地化解放を金科玉条とした開戦に向かわざるを得な かったことは、マッカーサーの
議会証言記録やハルノートほか、数多の文書で明らかになっているように、歴史上の真実だったようです。
戦後日本は、 そして今でも多くの日本人は「なぜ、愚かな戦争をしたのか?」と自虐・自責一本やりですが、
「なぜ米が、日本を資源獲保と植民地化拒絶の防衛戦争へ追い込 めたのか?」という他責論もあわせて、
冷静に歴史から学ぶべきだと思う次第です。少なくとも、戦前アジア各地を占拠していた欧米列強の植民地が
、大戦後一 斉解放されたのは「日本の挑戦に預かるところ大であった」との、インドを初めとするアジア
新独立国政府トップや外交高官の国連等における数々のメッセージ を、われわれは
素直に受け止めるべきだと考えています。

■アメリカの〝アドバイザー〟
さて、カナダがこのところ9年間に亘り中 道右派のPC党(P=プログッレシブは、
進取・進歩・革新といった意味があり、C=コンサーバティブは保守の意ですから、
「進取保守党」とでも訳しておき ます)のハーパー首相統治下にあり、財政経済とも好調だった
数年前のこと、ジャーナリストの一部が隣国のアメリカに〝アドバイス〟を送ったことが記憶にあ ります。
財政赤字が米国以上に悪化していた1980年代末のカナダは、時のマローニー進取保守党政権が、
欧州のVAT(付加価値税)をまねて導 入したGST(連邦販売税)による苦肉の策で苦境を凌いだことにちなんで、
アメリカに新たな連邦税・VAT導入を勧めていたと言う訳でした。
(これは、日 本の消費税と少し異なり、低所得者への配慮から生活機能を脅かす食品や住宅費の
一部を免税としたものです)。
後に90年代後半、左派自由党のクレチエン首 相・マーチン財務相コンビが、GST7%を課しながらも、
法人税や所得税は減税することで、経済活性化を達成、資源産業の興隆などにも恵まれ、黒字財政、 
経済成長の成果を上げました。
数年前、PC党のハーパー首相は、小さな政府・歳出減と経済成長による税収の伸びにも恵まれ、
GDP比歳出を 53%から40%まで下げ、法人税を28%から15%まで落とし、
さらにはGSTをも5%まで下げるなど、思い切った政策を断行しました。それどころか、
 前政権のクレチエンも解決できなかったアメリカへの「頭脳流出」を反転させ、今やアメリカからのみならず、
世界各国からの「頭脳流入」を画策し、教育・科 学技術・研究機関等への歳費投入を急増しており、
かなり実績を上げたことは、かなり内外の称賛を浴びました。
ただし、カナダにも弱みがあり、社 会保険と医療費の急増とか、移民増に伴う諸問題に
どう対処すべきか等々が、難題となってきつつあります。その背景には(票田なので、
政治家は口を閉ざして いますが)移民の急増による貧困層の増加、格差拡大など欧米先進国型共通の
病弊があるようです。

■なぜかあまり日本で注目されないカナダ
ア メリカどころか、今の日本が学ぶべき模範的政策がここにあった筈でしたが、なぜか日本ではあまり
カナダの政治風景が詳しく論じられるのを、当時も今も見か けません。
ここは、日本も先の消費増税の失敗をカバーし、延期した第二次消費増税の実施までに、
現行のアベノミクス(=軽インフレ施策)と同時に、思い 切った法人税と所得税を減税すれば、
消費減を防げる上、経済成長による税収増が期待されるので、相続く赤字国債をなくして、
国家経済の健全化への道が開け る筈です。
また、政治体制に目を向ければ、〝賞味期限切れ〟や〝消費期限切れ〟ないしは、
”未熟児然”の”多すぎる諸政党”こそ、いったん解党 した上で、未来志向の政界再編を
早急に進めてもらいたいものです。
衆議院を中選挙区に戻し、参議院を大選挙区と全国区のみとし、議員数も半減できれば、 
日本復活が促進されるでしょう。あわせて、悪平等教育や記憶偏重型偏差値受験も排し、
大学制度を抜本的に見直し、政官学財エリート養成教育や各種職能・技 能専門学校を完備するとともに、
幼児から中高までの教育に、より充実した近現代史教育と人間力養成・徳育を導入すべきだと考えています。

■中国・インドばかりがアジアではないー「海洋同盟の重要性」
外交面については、<使い古された言い回し>になりますが、欧米に偏っているウエートを
アジア・アフリカや中南米にもっとシフトしていく必要があるでしょう。
<ア ジアを見る時、つい人口大国の中国・インドに耳目を奪われがちですが、
アセアン諸国のなかで最も親日的で、イスラム国でありながら民主主義を最も機能させ ている
インドネシアは、我が国と30数年来に亘る「草の根交流」があり、これからの注目株ではないかと思います。
人口は日本の2倍もあり、安定的な経済 成長(リーマンショック後の傷も浅く高成長で、
過去十年間の成長率は6%前後と好調を維持)を示しており、島国=海洋大国で多様な
文化風俗を持つ意味で も、日本人が入り込みやすい市場です。<シンガポールやタイ・ベトナム・マレーシア等も
注目すべきでしょうし、世界の次の新興国リーダー体制がこうした 国々に整いつつあると見ています。
中国と韓国の経済が自滅への道を辿り始めた今だからこそ、日本にとって、
チャンスが大きく広がりつつある幸運を活かすべ きでしょう。
さらに、「世界の縫製工場」として名を上げるバングラディッシュは、すでにユニクロほか、欧米アパレル産業が
6~7千もの各種工場 を操業中で、中国の5分の1の労賃を提供して来ました。
ちなみに中国の労賃が急上昇した結果、ベトナムは3分の1、カンボジアは4分の1、
ミャンマーとラ オスは何と9分の1の安さもありました。
これらアジア新興勢力圏諸国を「点」としてみるのではなく「面」として捉え、加工工場としても
地産地消も 狙える日用雑貨や食品から、物流を含めた多角的な事業戦略をプランしてかかるべきでしょう。
経済崩壊まっしぐらの中国から外資系事業の撤退が相次いでい ますが、中でも身内ともいえる
香港最大の企業集団「長江実業」の脱退には注目すべきでしょう。
さらに、日本にとって地政学的にも重要となってくるの は、「アジア海洋国家群」との連携であり、
願わくは自律性と双務性を持つ「海洋同盟」の構築を急ぐべきだと考えます。
かつて七つの海を支配して「パックス ブリタニカ」と尊称された英国はれっきとした「海洋国家」ですが、
日本はいつまでも「島国」に閉じ籠って居てはならず、中国の「海のシルクロード戦略」によ る
強引な覇権主義に対峙すべく、海洋大国である日米豪とインドネシアがリーダーシップを取り、
フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールから インドまで包含した
「太平洋+インド洋海洋同盟」によって中国を抑止することが急務となっております。
願わくはTPPの戦略とも連動させ、カナダから中南 米まで含む「環太平洋海洋同盟」も
重要となって来ると考えられます。

■アフリカは日本を待っている
アフリカ大陸には54もの国が あり、相変わらず部族間抗争が絶えず、
今後まだまだ新しい国が誕生しそうです。
しかも、グローバル経済から取り残された暗黒大陸の苦悩は、水と食糧難と医 療問題、教育問題が
底をつきません。
産業政策も遅々として進まず、です。永年の植民地圧政と人種差別にも倦(あぐ)んでおり、
新たな角度からの先進国支援 が欠かせません。
ここは、井戸掘りや水道ソフト、海水の淡水化、植林政策、小規模農業や水産業…などに
優れた技術とノウハウを持つ日本の出番で す。しかも日本は、比較的温和な対人関係を築くことで、
彼らに好かれており、多くの国で「名誉白人待遇」を甘受してきました。
日本がアフリカでの各種産業 化プロジェクト、医療、教育、資本参加、資源開発などに
参画することは、双方にメリットをもたらすでしょう。
人類発祥の地でありながら、今だ多くの未開面をとどめる大陸を、グローバル化のワゴンに
迎え入れるべきだと信じます。
大いなるチャンスが待っているはずです。
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