しらす・さぶろうの日本人がんばれ!! 
第三十五話 :「格差社会と白洲次郎」
2014/12/31
白洲次郎氏がマスコミで脚光を浴びている。
米国の核の傘に護られて60年以上。平和ボケした国民に向けてマスコミは
何かをいいたいのだろう。NHKでは先週から短編のドラマを放映している。
ところがその切り口は何故か「誇り高き男」。

誇りを忘れた最近の日本人には理解できないかもしれないが、
明治時代には「誇り高き男」が溢(あふ)れていた。
建国以来、外敵との戦争、紛争に負けを知らなかった日本国。
それが、昭和になると、誇り高いどころか井の中の蛙(かわず)的な慢心。
アジア諸国相手に高慢、不遜が蔓延(はびこ)っていた。
NHKドラマは「明治男の気骨」に焦点を当てている。
当たり前のことを演ずるから、俳優にも難儀。
必然的に気負った演技になって不自然さが目に付く。
白洲さんを描くならば昭和上期の格差社会、
親族に見せなかった裏の顔の取材が必要。
 
白洲さんの真骨頂は権力に対する反骨。
その背景は熟してきた昭和初期の格差社会。
政界、財界、官界、軍部の主要ポストは皇族、
華族(武家、公家、明治維新の功労者に与えられた称号)、
財閥と、その子弟たちが独占していた。
自分の居場所は妻として迎えた樺山伯爵令嬢家の七光り。
ケンブリッジ、オックスフォードへの留学生も、主流は華族、財閥の子弟。
鉱山業、貿易業、証券業などで財を成した「成りあがり」の子弟は傍流(ぼうりゅう)。
仲間内はともかく英国での評価は低い。
貴族が闊歩(かっぽ)していた大英帝国。
華族や大財閥子弟に較べれば嫌なことも多かっただろう。
差別的な土壌を体験した白洲氏は氏素性や社会的地位を権力とみなす人種が大嫌い。
当然のことながら勝者の立場で威張り散らす占領軍も大嫌い。
このような日本人は珍しくないが、彼は情報収集力と表現力が異なった。
英語が話せたからである。当時は1万人に1人もいなかっただろう。
彼の軽井沢の別荘を訪れたときのこと。
軽井沢ゴルフクラブの新コースを見渡すリビングで元首相田中角栄氏の
エピソードを話してくれた。ある朝突然、田中氏の秘書がクラブを訪問。
「本日、田中首相がここでゴルフをすることとなった」
「粗相のないように宜しく手配をされたい」。かような主旨だったそうだ。
理事(理事長?)だった白洲氏の返答は「ここは会員制のクラブ。
ゲストはそれなりの手続きをしなければならない。
会員の誰からも話しを聞いていないのでお断りする」。
秘書という仕事は人を誤らす。
自分が権力者になったかのように振舞う人が多い。
白洲氏はそんな風潮に一矢を射るとともに、総理大臣といえども平等な
一国民であるという従来の主張を貫いた。
彼から得る教訓は「人は皆平等」「権力者に媚(こ)びるな」「欧米に媚びるな」
「海外情報の重要性」「外国語の重要性」。
当たり前のことであるが、誰もが実践できることではない。
 
しらす・さぶろう
 初版:2009/03/05
 
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