しらす・さぶろうの日本人がんばれ!観光立国編
第三十五話:目先の経済性に狂奔する観光業界:マイスとは何か?
2013/07/26
格安航空に全日空が参入。日航もそれに続く。
エアー・アジアやバージンが築いたビジネスモデル。
レギュラー路線を持つだけに、カニバリゼーション(人肉食=共食い)で業績がさらに悪化。
物価高の日本を避けて国外脱出組みがさらに増加。
国内観光地の空洞化。
格安航空はアウトバウンドで盛り上がり、観光の内需を否定する弊害のほうが大きくなるだろう。
 
観光立国政策や業界のインバウンド戦略をつぶさに見れば、どの案も
高い客単価を期待するものばかり。

どうして航空機だけが格安を企画するのだろうか?
格安ホテル、格安旅館、格安タクシー、格安国内バス路線、格安リフトのスキー場、
格安ゴルフなどが続出して欲しい。
格安を謳うところもあるが、まだまだ高い。
旅行経費はトータルで論ずべきもの、アンバランスが継続しては目標達成が困難。
 
日本はカラオケ、アニメ、ラーメン、居酒屋、カジュアルウェアーなどなど
大衆文化の評判が良い。
世界的に評判の良い日本風外食産業も幅広い選択肢を持っている。
残るは宿泊費、国内交通費、遊興費。
ところが業界も行政も薄利多売は手数がかかる、最少の労力で儲かるビジネス客
富裕層を対象とした方策を講じたいと真面目に議論している。

格安ホテルなどには関心がない。

定型住宅ローンが現れたのは半世紀近く前になるが、草創期の10から15年間は
同様な議論でもめていた。
個人に500万円、1千万円貸すのと、企業に1億、5億貸すのは同じ手間。
なぜ面倒なことをやるのかというのが反対者。現在なら笑い話。
観光立国論と共通するのは、反対者の主張にはローンを必要とする人たちへの心がなかった。
実現を前向きに検討し、達成のための工夫や合理化を考える前に、
その時点での損得を議論する国民性。
「ちりも積もれば山となる」。
この言葉は何時の時代にも生きている。
コンピューターの進化が助けたとはいえ、ヤマト便の成功がそれを知らしめた。
日本の地理的条件を考えれば、目標2500万人を達成するには1500万人くらいの
隣国観光客が必要。
中国人だけでも年間4000万人が海外渡航するといわれるが、
台湾、韓国、中国の富裕層が日本を観光地として選択する順位は低い。
 
国際会議、企業のセミナー、招待旅行、展示会などを活性化して観光立国の
柱にしようと議論しているグループがある。
産業界に様々な先進分野を持つ日本にはビジネス関連の訪日客が多かった。
このトレンドに勢いが無くなった最大の理由はITの進化による通信インフラの整備と
先進性の喪失による地盤沈下。製造業の海外転出も大きい。
ビジネス・トラベルが減るのは当然の帰結。物価高も敬遠の大きな要素。

Meeting、Conventionなどの頭文字をとってMICE(マイス)などと呼称しているが、
展示会や国際会議のコンテンツ充実でビジネス・トラベルを2-3割増やすことが、
どれほどの経済効果になるのだろうか?
行政が提灯をつけたり、煽ったり、先頭に立つほどのことなのか。
上客相手の誘致策は各業界が推進すればよい。
政府や行政が乗り出す必要性は無い。
 
行政がやるべきは民間では採算上や法的に手を付けにくいことを、
一つ一つ細かに解決しながら、倍増、三倍増を目指すグランド・デザインを描くことだ。

国と自治体が協力し、淘汰されていく倒産ゴルフ場、倒産ホテルを数百箇所以上買い占めて
訪日観光客に格安で開放するぐらいの企画があっても良い。
硬直化した業界の既得権を配慮し過ぎては先に進まない。

初版:2010年9月10日
復刻:2013年7月
 
しらす・さぶろう


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