'50es湘南スタイル「湘南のルーツ・逗子」



第二回・・・「湘南第三世代」
第一回・・・「湘南第一世代」


第二回・・・「湘南第三世代」
湘南Go West--世代を超えて育んだ湘南ナチュラル・スタイル

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第三世代のサーファーたち



「湘南第三世代」は、前出の久保田二郎氏によれば加山雄三がデビューした1960年以降の世代を指す。60年代以降の湘南の代表的人物や流行を見ると、前二世代と明らかに違うのは、文化発信地が相模湾沿岸の西半分に移っていることだ。つい最近も茅ヶ崎出身の野口聡一氏による宇宙飛行が話題になったが、いま湘南ウエスト・コーストが、熱い。

第三世代の湘南は、国民的大スター加山雄三を輩出して以降、文化・流行発祥の地としてあり続けている。音楽で言えば、ブレッド・アンド・バターや松任谷由美、サザン・オールスターズといった大物ニューミュージック歌手はみな湘南ウエスト・コーストゆかりのアーティスト。ファッションなら、1970年代後半に火がついた「サーファーファッション」だろう。
当時この手のファッションは、渋谷や六本木の街でも多く見られ、「陸サーファー」(サーフィンはせず、実はかっこだけ)なるスタイルさえ確立した。  そして今では、自然でおしゃれな生活スタイルに憧れ、湘南に移り住む若者も多い。
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なぜ湘南はこれほど長く人々を魅了し続けることができるのだろうか。
それは、湘南発祥のファッションや音楽は単なる外国スタイルの模倣に終わらず、世代を超えてその土地の人々により育まれてきたからに他ならない。
いわばその風土と人々の生活に根ざした「自然体」のスタイル、それが湘南的スタイルの魅力なのではないだろうか。

湘南テイストの婦人服ブランド「スポーティフ」の経営者、岩倉瑞江さんは、そんな湘南文化を育ててきた一人。
今回は、湘南第三世代の代表的人物としても有名な岩倉さんに「スポーティフ」立ち上げの経緯などについてお話を伺いながら、湘南的スタイルの魅力を探ってみる。

「全ては、生活からヒントを得たスタイルなのよ。」

岩倉さんは、「スポーティフ」のデザイン・ポリシーについてこう語る。見た目がおしゃれなだけでなく、着心地がよく、洗濯しやすいことがデザインの条件。
スポーティフファンの中でも特に人気の高い花柄の図案も、日常生活で触れるものから得るインスピレーションをもとに、自ら監修している。
湘南は、サーファーなどのマリーンスポーツを楽しみ、リゾートスタイルで生活するのが普通の土地柄。そんな風土でブランド「スポーティフ」が生まれたのは、うなずける。

スポーティフは、今でこそ三浦りさ子さんがイメージ・モデルをつとめる全国的ブランドに育ったが、きっかけは30年前に友達と始めた小さなカフェ「ブレッド&バター」だった。

「当時、ブレッド&バターを含む何人かのミュージシャンの友達と、茅ヶ崎の家で共同生活をしていてね。
成り行きで、知らない人同士が知り合える楽しい店を作ろうということで、ガレージを改装してカフェを作っちゃったのが、そもそもの始まりなの。
そうしたら土地柄かサーファーの人が自然と集まるようになって、店でライブをやったり・・・お店の経営が楽しくなっちゃって、気がついたら東京の仕事もやめてた(笑)。」

ご本人いわく気楽に始めたカフェだったが、店のセンスの良さと楽しく開放的な雰囲気にうわさが広まり、サーファー、ミュージシャン、モデル、役者など個性的な人々が集まる場所になった。例えば、南佳孝、新井由美(ユーミン)、杏里、萩原健一(ショーケン)など錚々たるメンバーがカフェの常連となった。

母屋では頻繁にホーム・パーティーが催され、そこは「湘南カルチャーのルツボ」と化した。湘南の週末パーティーでセンスを磨き、全国へ散らばっていくアーティストたち。こうしてみると、岩倉さんは湘南第三世代の育ての母(?)とはいえないだろうか。
「(サザンの)桑田圭介さんは当時まだ若くて、いつもお店に入りたくても怖くて入れなかったって・・・。(笑)」

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第一世代のダンスパーティ


1970年代に湘南で青春を謳歌した湘南族たちの遊びは、岩倉さんのお父様である岩倉具憲氏と上原謙氏が共同経営し、サザンにも歌われた「パシフィックホテル茅ヶ崎」でのパーティーを彷彿させる。友人を招いて夜通し行われる仮装パーティーなどは、岩倉さんの時代もご両親の時代も全く同じ様子。
岩倉さんたちは、きっとご両親と友達の大騒ぎを見て自然と楽しむことを覚えたに違いない。
岩倉さんは、湘南のこの明るく開放的な世代を超えた文化の直系伝道者なのだ。


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第一世代のスキーヤー(中央は石原裕次郎さん)

岩倉さんのお母様と裕次郎



その後、もともと得意だった裁縫を活かし、岩倉さんはテニスウエア・ブランド「スポーティフ」を立ち上げた。
「次のお店の候補地ではレストランはだめということで、そのころちょうどテニスをしていたから、じゃあってテニスウエアになったの。初めはオーダーメイドもやっていて、サザンの桑田さんが合宿に必要だからって頼まれてジャージも作ったのよ。」こんな風に、出会った人たちに影響されながら岩倉さんの世界も広がっていった。

お母様のフローレンス西村さんの影響もあり、外国ファッションに興味があった岩倉さんは、フランスのモード雑誌ELLE(エル)と湘南の風土に似たカリフォルニアの雰囲気を合わせたブランド・デザインを考案。
当時としては珍しいカットソーやベロア製のスポーツウエアを販売していた。これが、空前のスポーツファッションブームで、大人気となった。

そして、スポーティフが本格的に婦人服を手がけるようになったのは10年ほど前。
現在は、アクセサリー、小物、ファミリー・カジュアルウエアや家具、そして広々とした空間が贅沢な「カフェ・スポーティフ」も手がけ、湘南的生活スタイルをトータルに提案している。インターネット販売も始まり、全国からお客さんが訪れる。
ブティックに隣接するカフェは、はるばる遠くから来てくれるお客様の岩倉さん風おもてなし。「せっかく遠くからきてくれたのだから、湘南の雰囲気を楽しんでゆっくりしていって欲しいのです。」

色々なことを手がけてきた岩倉さんだが、一貫して言えるのは、提供する全てが自分の生活からヒントを得たものということだ。そして、心地よく、楽しいこと。これが、ナチュラルな爽やかさとセンスの良さにつながっている。もちろん多くの苦労もあったに違いないのに、そんなことは全く感じさせない余裕を感じさせる。

「苦労はありましたけど、父のホテル経営がうまくいかず、何もなくなった様子も見てきたから、ゼロからやってこられたと思うの。
父が小さい私の手を引いて、パシフィックホテルを前に夢を語ってくれたのを今でも思い出します。」茅ヶ崎生まれ、茅ヶ崎育ちの岩倉さんが、親子代々の夢をゆっくり育てながら私たちに提案する生活スタイルは、まさに湘南的スタイルそのものと言えないだろうか。

最後に、湘南の魅力を伺うと、「うーん、やっぱり自分が生まれたところで、仲間がいること、そしてライフワークがあることかな。」

岩倉さんの夢は進行形。ファッションだけでなく、トータルな湘南的スタイルを体験できる空間を提案したいと目をきらきらさせて語った。
「(スポーティフの面する)一中通りをもっと面白い、そこに居るだけで心地よい、そんな空間にしてみたい。私のライフワークです。」そんな岩倉さんの夢実現を後押しするように、スローフード、癒し、フィットネスなど、いま世間では空前の健康ブーム。今後の活躍が注目される。

湘南的スタイルの共通点は、世代ごとに発信地やスターの違いこそあれ、単に「流行」を追うのではなく、常に「かっこいい」を求めながらも自分の自然体スタイルを貫くところなのだ。日常の生活を心地よく自分に正直に過ごすために、湘南は進化し続けている。




取材協力 岩倉瑞江氏 1953年、茅ヶ崎生まれ。ロンドンに留学後、東京勤務を経てカフェ「ブレッド&バター」を経営。現在は、湘南を代表するファッションブランド「スポーティフ」代表取締役。

スポーティフ 茅ヶ崎店
〒235-0054
神奈川県茅ヶ崎市東海岸南2-11-13
TEL 0467-87-0962、FAX 0467-87-3692
年中無休(年末年始除く) 
Wear/Living 10:00--19:00 Cafe 11:00--23:00(夏期変更有り)
http://www.sportiff.co.jp/home.html


参考文献
アクロス編集室編
『STREET FASHION 1945-1995 ストリートファッション1945-1995若者スタイルの50年史』
パルコ出版 1995年
「湘南の元気な女たち」『湘南スタイル』第4号(2000年6月)えい出版社 p.50-51



文:田村篤子
文責:文学記念碑「太陽の季節」設置実行委員会
10:49, Tuesday, Dec 13, 2005 ¦ 固定リンク

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