世界の健康と食の安全ニュース
長寿社会の勝ち組になるには(その23):
Age Out Loud:5月は米国高齢者の健康促進月:
認知症と墜落事故を防ぐための知恵
2017/05/12
近年の米国では公的医療保障(メディケア)の総給付費が5000億ドル(約55兆円)を超えており
1 人当たりの給付費も約12,000 ドル。
2009年以降赤字続きの制度は破たんが近いといわれ、国は総力を挙げて改革に取り組んでいます。
公的医療保障のメディケアは高齢者が中心。
対象者の、より高齢化が進むとともに認知症対策と高齢者に特有の事故対策が最大の課題となっており
認知症の防止対策は保健福祉省(HHS)傘下のコミュニティ生活局(ACL)。
墜落事故(falls)の防止対策は同じく保健福祉省傘下の疾病対策予防センター(CDC)が担当して
国民に協力を要請しています。

*HHS:United States Department of Health and Human Services
*ACL:Administration for Community Living
*CDC:Centers for Disease Control and Prevention



1.Age Out Loudとは
2.脳は筋肉と同様に鍛えれば機能が向上します

3.ACLが脳機能低下を防ぐためのアドバイス
4.CDCはステディー(STEADI)プロジェクトで高齢者の墜落事故を防ぐ
5.公的医療保障(メディケア)の改正


1.「Age Out Loud」とは
米国では5月が高齢者の月。
アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)傘下のコミュニティ生活局 (ACL)では
「Age Out Loud」を今年(2017年)のスローガンにし、
各地で高齢者問題に取り組んでいます。
このスローガンの「Out Loud」はIT時代となってから使用されるようになったフレーズ。
目的は高齢者の意識改革を進め、自発的な行動によって健康を増進し、地域に貢献できる社会の建設。
高齢者が自立して新しいことへ挑戦、より長く働くことが出来るよう、思うことを積極的に発言してもらい、
(Age Out Loud)その声に耳を傾ける 仕組み作りを目指しています。

2.脳は筋肉と同様に鍛えれば機能が向上します
個人的な想像力、智恵、特徴は一生失われずに続き、自動的に低下するものではありません。
言い換えれば年とともに賢くなっていきます。
(Creativity and wisdom do not automatically decline over time)
高齢者グループの精神的損傷は他のエイジグループより少ないのが特徴です。
米国の思春期、青春期の若者(adolescence)の3分の1以上(女性の39%、男性の21%/2013年)が
鬱(うつ)など、何らかの精神障害を持ち、成人を含めた
1,000万人を超える人々が躁鬱(そううつ)を繰り返す双極性障害など
深刻な脳障害で悩んでいるといわれます。
*双極性障害(bipolar disorder:manic-depressive illness)

3.ACLが脳機能低下を防ぐためのアドバイス
ACLの今年のキャンペーンは健康で明晰な頭脳を維持する8項目のアドバイスで
「認知症の進行防止策」を解りやすく解説しています。

a.体を動かしましょう
脳の健康は健康な体と心から。
どのように日常的な健康活動をすべきか考えましょう。
体の動かし方は千差万別で良いですから、一日30分くらいは心臓を働かせましょう。
孫との遊び、夜のウォーキングでも脳機能低下リスクを防げます。
Get Moving
「米国CDCが「モール・ウォーキング」の薦め:費用不要な極寒、酷暑の健康法」http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=464

b.飽和脂肪酸の少ない野菜や果物を摂りましょう
認知症や癌の予防にはブロッコリー、紫色野菜や果物がお薦め。
心臓に良いヘルシーダイエットの名のもとに栄養失調を招く食生活は
脳機能を低下させます。
Eat Up
「赤紫色素は美容と長寿の最強抗酸化ポリフェノール(5)
赤ブドウと桑の実」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=480
「赤紫色素は美容と長寿の最強抗酸化ポリフェノール(1)
葉野菜と根菜」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=457

c.高血圧は脳機能に深刻なダメージを与えます
低下させる工夫が必要です。
Know Your Blood Pressure

d.老人と若者ではアルコールが与えるダメージが異なります
高齢者によっては少量でもハイになりますから(過度の)飲酒は混乱と
事故の原因となり得ます
Drink Moderately, if at all
「飲酒で臓器を傷める日本民族の遺伝的特質」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=187

e.十分な睡眠が必要です
不眠症や寝不足、睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea)は肉体に深刻な打撃を
与えるだけでなく記憶力、思考力を低下させます。
くつろぐ時間を大事にし、一日に7-8時間は寝てください
 Get Some Shuteye

f.趣味の幅を拡げましょう
ダンス、フランス語学習など、何でも良いですから、新しく勉強が必要なことを始め、
それを継続させましょう。
脳に挑戦する力を与えることは機能向上に役立ち、快適となります。
Discover a New Talent

 g家族や友人と電話で長話しましょう。
食事に招いたり、一緒にハイキングすることもお薦め。
規則的、継続的な活動が脳機能低下のリスクを減らします
Pick Up the Phone

h.医師との相談を欠かさぬようしましょう
加齢により記憶力が短時間で損なわれ始めたら脳機能低下の兆し。
脳機能低下を感じたらすぐお医者さんに相談しましょう
Talk to Your Doctor

「新抗がん剤開発のヒントはブドウレスベラトロールの機能解明:
長寿の酵素が癌遺伝子発現と脳血管障害を制御」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=404
ブドウ・レスベラトロールが記憶と脳の柔軟性経路を制御する:
MIT
ピカワ-脳研究所」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=207
レスベは認知症の悪玉炎症分子の脳内侵入を防ぐ」
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=524

4.ステディー(STEADI)プロジェクトで高齢者の墜落事故を防ぐ
高齢者の自立と健康増進にもう一つ必要なのが体力と脳の衰えを原因とする事故の防止。
CDCによれば米国では毎年約8千万人(4人に1人)が墜落事故(falls)を起こしています。
しかしながら打撲等で済んだケースでは半分以上の方は墜落事故のことを
医師などに伝えないそうです。
ステディ(STEADI:The Stopping Elderly Accidents, Deaths, and Injuries)プロジェクトは
アルツハイマー疾患と健康的な加齢プログラムの一環として
増加している、墜落事故が死や重大な損傷につながらないように企画されました。

ステディ(STEADI)とは青春時代の特定の恋人(steady)との掛詞(かけことば)?
薬剤師など健康管理に従事している方々に知恵と戦略の実際を伝授し、
特定な役割(steady)を求めています。
墜落(falls)は65才以上の方々にとって共通かつ深刻な事故。
日本でも周辺の中高年の方々が脚立や階段からの墜落事故で亡くなられたり、
不治の障害を背負ったケースが少なからずあると思います。
頭を打った場合は特に要注意。内出血が進み重篤な後遺症の恐れがあります。

CDCでは常用薬を通じて高齢者に接する機会の多い薬剤師に
高齢者の(脚立、ハシゴ、階段などからの)墜落事故を防ぐ工夫をお願いするために
効果的な診療やリスクを減らす方法を伝えるプランを2017年5月に改訂しました。
(The Pharmacist’s Role in Older Adult Fall Prevention)
これは薬剤師が高齢者に墜落の後遺症が無いかの検査、確認をしたり
思考能力の損傷など様々なリスクファクターを予見してテストできる
新たな認知症検査、治療計画のキットです。
(Cognitive Impairment Care Planning Toolkit)

5.公的医療保障(メディケア)の改正
最近になり、メディケアは認知症や怪我などによる
身体機能回復治療に関する費用支払い保険制度を効果的に改訂し、検査、治療に
協力する医師や医療関係者への支払いを容易にしました
(G0505 Medicare code)
メディケアは1965 年に社会保障法(Social Security Act)に基づいて導入された
高齢者の公的医療保障。
国民皆保険ではありませんが、現在約4600 万人が加入しています。
(米国の人口は3億2千5百万人/2017年)
現在の対象は65 歳以上の高齢者、障害者、ESRD患者。
オバマ大統領により、2010 年に医療制度改革法が成立していますが、トランプ新大統領とは
考えが異なるといわれ、今後の方向性見通しは、現時点ではありません。

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