石木時代
イワタバコが告げる鎌倉石の在処(ありか)
2016/09/15

1. 建築土木石材の耐久性と鎌倉石
2. 鎌倉石の在処(ありか)はイワタバコの花が教えてくれました
3. 凝灰岩壁に群生するイワタバコ

4. 鎌倉石の在処(ありか)を訪ねて
5. 石材の分類に不必要な細分化

6. (参考写真)大谷石と佐島石は鎌倉石の親戚


1. 建築土木石材の耐久性と鎌倉石
鎌倉市周辺には大谷石に似た「鎌倉石」と呼ばれる凝灰岩採石の歴史があります。
鎌倉時代から土木石材として利用されていた鎌倉石は石材耐久性の教材として
多くのことを教えてくれます。

建築土木石材の石種選択に重要なのは耐久性。
石材の耐久性には摩耗、衝撃、引っ張り、曲げ、熱伝導など物理的な強度から
耐酸性、耐水性、退色進行、耐候性、耐熱性など様々な要素が関与しますが
実際に適材適所を決める時は施工実績を検証して、石種と産地を選んでいます。
石材の耐久性は測定器で計測した数値と実績が異なることが多く、施工例の経年変化を
確認する作業が最も重要だからです。

歴史ある鎌倉石の施工例は寺社に多くありますが、目視で探すのは容易ではありません。
土木用途がほとんどで、緑に覆われているからです。
また、多くが文化財の寺社に施工されており、サンプルを削り取るわけにもいきません。

    イワタバコ(Conandron ramondioides)
      宇都宮市大谷で撮影:トニー羽太さん

2. 鎌倉石の在処(ありか)はイワタバコの花が教えてくれました
幻の石材となってしまった鎌倉石の在処(ありか)は想像と推測が多いのですが、
施工場所確認方法のヒントを自然派写真家トニー羽太さんの
「大谷資料館」の取材写真から得ることが出来ました。
栃木県大谷の凝灰岩質岩壁に自生するイワタバコの写真を見つけたからです。
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=510

イワタバコは珍しい野草ではありませんが、自生場所の選択には神経質。
鎌倉のお寺にはイワタバコが岩壁に群生している場所があります。
また社寺の石垣でもイワタバコを観ることができます。
このことは大谷石同様な凝灰岩の存在を高い確率で示していると思われ
こんな方法で幻の鎌倉石の存在(ありか)が明らかに出来るならば、ありがたいことです。     

(写真上下)一株のイワタバコで鎌倉石と推測できた石垣(円覚寺:鎌倉市北鎌倉)
大谷石、鎌倉石はある種の火山岩系凝灰岩.
多孔質が程よく、気難しいイワタバコの自生に最適なのでしょう.
「イワタバコ自生の有無で苔と野草に覆われた鎌倉石施工場所の見当がつけられる」
新たな発見でした。    


3. 凝灰岩壁に群生するイワタバコ

  (写真上下)凝灰岩壁に群生するイワタバコ(Conandron ramondioides)
      (東慶寺:鎌倉市北鎌倉)

            

(写真上)イワタバコの群生が高さ約10㍍、長さ約100㍍弱の凝灰岩壁を覆います.

4. 鎌倉石の在処(ありか)を訪ねて

        (写真上)補修された鎌倉石の石垣(円覚寺:鎌倉市北鎌倉)
  
鎌倉の社寺は大半が文化財ですので補修は同材使用が原則.
  現在は採石していませんので、基本的には中古でやりくりするようです。

  (写真上)左右に鎌倉石(?)の石垣(円覚寺:鎌倉市北鎌倉)
 
       (写真上)鎌倉石と思われる石材の階段(妙法寺:鎌倉市大町)
鎌倉石は柔らかく、吸水性が高いために苔(こけ)や野草が全面に生えますが、
ケイ素系鉱物が50%以上で構成される安山岩、玄武岩などの火山岩はこのようにはなりません.
採石場所にもよりますが、軟石とはいえ、階段踏面の摩耗度が低いものもあります.
(この階段の一部は通行禁止:施工時期は不明)。
石材の摩耗率は機器の計測と実際の歩行とでは異なり、
軟石は硬度の高い石材より耐摩耗に高性能を発揮することがあります。


      (写真上)左側に鎌倉石(?)の石垣(建長寺:鎌倉市北鎌倉)

   (写真上下)東京湾に浮かぶ猿島の旧弾薬庫周辺の擁壁(神奈川県横須賀市)
         石積みは鎌倉石、佐島石と類似する凝灰岩.
 
横須賀市の行政区域には相模湾に面した佐島がありますが、そこで産する凝灰岩は
佐島石と俗称されています。
現存する佐島石の施工例は加工道具が未熟な時代が多く、他の類似凝灰岩との比較が困難ですが
猿島で使用された石材は施工時期が新しく(昭和10年代?)収め(おさめ)の見事さからも鎌倉石でしょう。
佐島石は火山礫が細かいために一般的な鎌倉石より密度が高いかもしれませんが、耐久性が勝るとは
いい切れません。
 
          (写真上)海蔵寺の凝灰岩石垣(鎌倉市扇ヶ谷)
 
            (写真上)銭洗い弁天の凝灰岩壁(鎌倉市佐助) 

大谷石の本場である宇都宮には大谷石造りのカトリック松が峰教会、
宇都宮聖ヨハネ教会があり、倉(くら)も珍しくありませんが、
その歴史は100年もありません。
構造材としての評価はこれから100年以上はかかるでしょう。
鎌倉石は生産量が少かったためか、建築構造材の使用例は知る限りありません。
採石最盛期には加工道具も未熟だったでしょう。
産出場所で成分構成が微妙に異なりますが、鎌倉石の用途は主として
石塀、石垣や、階段などの踏面石.
お寺の諸施設にどの程度の歴史があるかは(現段階では)不明です。

5. 石材の分類に不必要な細分化
「鎌倉石は大谷石とは異なり、東日本を縦断する緑色凝灰石帯(グリーン・タフ・ベルト)に
属さない」といわれます。
緑色凝灰石帯は本州の狭い範囲ですから、石材として考えるならば区別する必要はないでしょう。
地学者が推測する日本列島誕生と生い立ちの歴史も、数百万年以上(数千万年?)の誤差があります。

大谷石、鎌倉石、佐島石は採石場所で礫の大きさや構成鉱物が微妙に異なりますが、
分けて考えるほどの差異はありません。
実際に鎌倉石が枯渇してからは栃木県大谷周辺の石材で代用されています。

岩石は元が同じ成因でも、気の遠くなる長い年月を経て様々な変成、変動をします。
その成因は当然のことながら想像と推測。解らないことだらけです。
日本のように狭い国土でも、産地によりいろいろな表情を見せるのは当然ですが
それを細分類し、ネーミングするのは、一般学生や社会人には不必要な混乱を招くばかり。
細分化は、必要な人が専門毎の範囲ですればよく、単純に自然を楽しむ人には必要ありませんし
身の回りで使用する石材選択にも不要です。
細分化と多様なネーミングは将来性のある児童、学生に自然科学、地球科学の面白さ、楽しさを
易しく伝え、地学者の道へ誘導するには有害でしかありません。
今の日本には壮大な探究心を持つ地学者が求められています。
「木を見て森を見ず」では地震や火山噴火の予知はいつまでたっても不可能でしょう。

6. (参考写真)大谷石と佐島石は鎌倉石の親戚
    
             (写真上)民家の石塀(大谷石:鎌倉市内)
    湘南地方では鎌倉石、佐島石への郷愁か、栃木県の大谷石の表情(テキスチャー)が
    好まれており、生産量の40%近くが持ち込まれていました。
    最近はコンクリートを主材にした(完成度の高い)疑似岩もいろいろ生産されています。
    
             (写真上)民家の石塀(大谷石:藤沢市内)
     
     (写真上)(佐島天神島)
      三浦半島ではどこでも観ることが出来る凝灰岩の岩礁.
      佐島岩礁の表情は柔らかな曲線と筋(スジ).

 
           (写真上下)今では施工例を探すのも困難な佐島石
  特に古い石材(写真上左)は岩礁と同様に石材の中央部が抉れ(えぐれ)、筋が現れています。

     
                 佐島石の土塁(横須賀市佐島)
     石垣というより土塁が目的だからか、加工具が未熟な時代の施工なのか、
     カットや石積みが粗い.
     石工事では角(すみ)の収めが難しい技術ですが、この写真の中央部分の角は
     応急的な補修と思えます.


                  石材研究家:いしの・ひろし
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     https://www.botanical.jp/item_view.php?item_number=36

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  http://www.botanical.jp/item_view.php?item_number=34
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  http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=119


 
 
 
             
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