食在亜細亜:アジアの生鮮食材
旧フランス領インドシナの食文化(5):
鍋(ラウ)料理に美味しい花野菜:花鍋(ラウ・ホア)は実在?
2014/03/21


市場片隅のごく小さなスペースで花野菜世界チャンピオンのブロッコリーを売る生産者.
カリフラワー、ズッキーニ、カボチャを組み合わせで売る健康志向のセンス.流石です.
(ニャチャン:ベトナム)


花、蕾、果実は不思議な健康力を発信します。
その成長歴の全てが凝縮されているからなのでしょう。
アブラナ属のブロッコリー(Broccoli:Brassica oleracea var Italica)は
つぼみの塊ですが、この蕾には非常に優れた体力増強の秘密があります。
ブロッコリーが世界的に健康野菜の王者に認定されたこともあり、
最近は保健面から花食(エディブルフラワー)に関心が高まっています。
菜の花に代表されるアブラナ属(Brassica)は健康野菜最大のグループといわれ、
ブロッコリーと並んで両雄といわれるキャベツの
ケール(Kale:またはBorecole:Brassica oleracea var. acephala)も同属。

しかしながら安全性の高い野菜として数百年の歴史を持つ花は
それほど多くありません。
野菜としての歴史のないマイナーな花をあえて食べるのは特別なマニア。
マニア向けには数多くのガイドブックも出版されています(巻末)が
出版本に掲載されているからとて完璧ではありません。
未熟な個人的情報も多いようで、安全性に関しての信頼性は不明。
急性で死にいたる花はほとんどありませんが、遅行性の毒をもつ花は
繰り返し食べてしまうことになります。
キノコ同様に正しい知識で判断しなければならないでしょう。
特に漢方、アーユルヴェーダ、欧米の医療ハーブに使用される
アルカロイド系成分を持つ植物は危険。
また未熟な知識で料理に使用するシェフや素材を販売する業者も増えていますから
要注意です。

野菜としての歴史がない色々な花を食べたいならば、好奇心の範囲に限り、
決して量を食べないこと。雄しべ、めしべは食べないこと(欧米マニア談)。
また野菜として栽培され、市場で流通する花以外は、農薬、殺虫剤、化学肥料に関しての
配慮がありません。
装飾用、園芸用に売られている花を食べては危険といわれるゆえんです。



1. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:チャンピオンはスクウォッシュ
2. ゴーヤとへちまはカボチャの親戚(ウリ科カボチャ属)
3. 幻のラウ・ホア:花鍋は料理本の世界
4. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:アジアのメジャー花野菜
5. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:トーチジンジャー(Torch Ginger:Etlingera elatior )
6. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:ムラサキオモト(Rhoeo Spathacea)
7. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:チューベローズ(Tuberose
Polianthes tuberosa)
8. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:オクラの花(Abelmoschus esculentus)
9. (参照)日本の食用菊
10. (参照)市販されている花料理本の一部紹介



1. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:チャンピオンはスクウォッシュ

スクウォッシュを特注して海鮮鍋でボイル.
特注しなければこれほど大量のメニューはありません。
 

市場で売られるカボチャ(南瓜)の花
(東洋カボチャ: cucurbita moschata)(ホーチミン市)


スクウォシュ(スカッシュ:squash )と呼ばれ多くの国で食されている
瓜類の花(カボチャも含みます)は花野菜として永い歴史があります。
カボチャ、ズッキーニなどスクウォシュ栽培はベトナムの南部から中部のユエで盛ん。
カボチャの花は実をつけないオス花のみを食するため無駄がありません。
有用な果実を付けるメス花は食用可能ではあっても結実を期待されていますから
摘んでしまうことは少ないようです。
(*イタリアなどでズッキーニの花を食べたことのある方がカボチャの花を代用ということがありますが、
代用ではなく彼らには同じ扱いです)

(写真上)アジアのズッキーニ(cucurbita pepo)(チェンマイ:タイランド)

(写真上)ベトナムのスクウォッシュ(カボチャ:cucurbita moschata)(ニャチャン)

(写真上)アジアのカボチャ(cucurbita moschata)左はチェンマイ(タイ)、右はジョホールバル(マレーシア)
日本で一般的に栽培されるカボチャは西洋カボチャ(cucurbita maxima)が主ですが
地域によっては東洋カボチャ(cucurbita moschata)や
ぺポカボチャ(ズッキーニ:zucchini、courgette:cucurbita pepo)も栽培されています。

2. ゴーヤとへちまはカボチャの親戚(ウリ科カボチャ属)
ベトナムはゴーヤとへちまの切手を販売しています。
インドがオリジンといわれても自国の特産と認識しているのでしょう。
いずれもスクウォッシュとして花食の対象ともなっている素材。
 
(切手写真左)Hoa muop dang(ムオップダン:Momordica charantia) 
和名:ゴーヤ
英通称:bitter melon, bitter gourd  bitter squash
(切手写真右)Hoa muop huong(ムゥホォン:Luffa cylindrica M.J.Roem)
英名:Smooth Luffa, Spongegourd, sponge Cucumber.
和名:へちま


(写真上)タイのゴーヤとベトナムのゴーヤ.いずれもMonmorudica charantin.大きさ、形、テクスチャーは様々.

(写真上)左からトカドヘチマ(Luffa acutangula)、ゴーヤ(Monmorudica charantin)、ボトル・ゴーヤ(bottle gourd 、 calabash).Opo Squash とも呼ばれ日本ではへちま(千成瓢箪:Lagenaria siceraria var).タイではNam Tao.

右の写真はヘビウリ(Trichosanthes cucumerina).いずれもウリ(瓜)科:Cucurbitaceae

(ジョホールバル:マレーシア)

3. 幻のラウ・ホア:花鍋は料理本の世界

ベトナムの観光客向け料理本に紹介されている花鍋料理の具材.

花鍋(ラウ・ホア)を食べたいが、と聞かれることがあります。
料理本では花鍋と称していますが、あらかじめ特注でもしなければ、
メニューに載せているレストランは知る限りありません.
また伝統的な料理ではありません。
鍋料理(ラウ)の付け合わせ野菜の一つとしてバナナ、ハナニラ、スクウォッシュ、
シロゴチョウなどが1-2品盛り込まれることは珍しくありませんが
それを花鍋と称するのは無理でしょう。
上の写真はバナメイエビの左側から時計回りにバナナ、ハナニラ、スクウォッシュ、
シロゴチョウ、トンキン・ジャスミン、ハス(ロータス)の花と花茎、フィッシュ・ボール.
いずれも野菜として永い歴史を持つ安全性の高いメジャーな花野菜です。
シロゴチョウの赤紫種が陰に見えますが、生産量がごく少なく一般的には好まれません。
料理本のサンプル写真は一緒盛りですが、各々の花野菜の味は繊細、
かつ香りや性格が異なります。
マッチ(マリアージュ)するのかどうか疑問ですが、一つ鍋で同時に食するメニューは
菜食主義者、観光客対象のレストランでもまずありません.
やはり花鍋は「Display only」というべき飾りなのでしょう。

*料理本写真のハス(ロータス)の花と花茎の解説は
「ヴェトナムの蓮(はす)食文化は不眠症、消化器疾患に著効」

(写真上右)ヴェジタリアンが好むレベルの高いレストランがいくつもあるのがベトナム.
写真のレストランは観光客や富裕層対象(平均客単価2,000円くらい)だが現在の評価は高い.(ホーチミン3区)

(このサイトはレストランの推薦はいたしません.評価はあくまでも主観であり、
シェフやオーナーが代われば味やサービス、料金が一変します。
またベトナムに限らないかもしれませんが、観光客が多い途上国の
高級(自称)レストランは「素材偽称や従業員の釣銭ごまかし」など、
トラブルが絶えないからです)


4. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:アジアのメジャー花野菜
料理本に掲載されたその他4種類の花野菜解説は下記を参照.
(バナナ、ハナニラ、シロゴチョウ、トンキン・ジャスミン)
「スリムなタイ庶民の食事と食材:タイの伝統健康野菜3つの秘密」

(写真上)左はハナニラ.右はシロゴチョウ(白胡蝶:so ??a

(写真上)左はトンキン・ジャスミン(モーニング・グローリー).右はバナナ苞葉、花芯の笹掛け(スプリット).
バナナの粗い繊維を感じる赤っぽいスライスに比べ黄色いのは柔らかい高級部分.ベトナム:?p Chu?i

バナナの下の緑の野菜はミズオジギソウ(左)とウォーター・スピナッチ(右)の混合。

5. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:
トーチジンジャー(Torch Ginger:Etlingera elatior Zingiberaceae)


トーチジンジャーはその名の通りトーチ(たいまつ)形状の生姜(しょうが)
インド大陸から太平洋諸島まで分布しているといわれ交雑種が多い.
学者によればバリエーションが70種類はあるという.
 Red Ginger Lily、Torch Lily、Wild Gingerなど英語俗称も数多い.
インドシナ半島の生鮮市場ではよく見かけるが、中国系人の好みのようで
マレーシア、シンガポールに特に多い花野菜.大型の花が観賞用にも好まれる。
ショウガ科エトリンゲラ属(Etlingera elatior Zingiberaceae)
 
写真上はタイランド産(カンチャナブリ).
写真下左はマレーシア産(クアラトレンガヌー)写真下右はシンガポール産.
Phaeomeria magnifica、Alpinia elatior、Nicolania elatior、Elettaria と呼ばれている種類は
亜種ともいえない同属といわれます.
 
花幹にも生姜特有の香りがあり、刻んでスープ料理に愛用されています.
写真下左側は蕾(つぼみ).日持ちが良いからか蕾状態で売られることのほうが多いように思えます.


6. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:ムラサキオモト(Rhoeo Spathacea)


ムラサキオモト((ツユクサ科ムラサキオモト属):Rhoeo Spathacea)
英俗称:Oyster plant, boat lily, Moses-in-a-boat
オイスタープラント、ボートリリーは形状からの英俗称
ムラサキオモト (ツユクサ科ムラサキオモト属)
Rhoeo Spathaceaは中央アメリカ原産といわれ、いまやベトナムで幅広く
栽培されているようです。
市場でもレストランでもまだまだマイナーですが食の歴史は古く、安全性は高いでしょう。
市場ではアチュワと発音していますが聞き取りが正確かどうか自信ありません。
観賞用、医療用に鉢植えにしている人が多いといわれます。
咳止めに良いといわれますが定かではありません。
一般的に花野菜のビタミン、ポリフェノールの保健効果は肝臓や消化器系といわれます。
           
右のイラストは図鑑より引用.船形の苞葉(bract)より多数の白い花が咲く.この舟がノアの方舟
に似ているとしてMoses-in-a-boatとの俗称がある.葉の裏が赤紫系なのが特徴。


 
7. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:チューベローズ(TuberosePolianthes tuberosa)

チューベローズ(Tuberose:Polianthes tuberosa)
和通称:ゲッカコウ(月下香)
メキシコ原産といわれ園芸種が主となっていますが、アジアでは
香りが愛されてスープに使用される高級食材。
ハワイではレイにも使用するようですが未確認です。
メキシコではアズテックインディアンが永年食してたといわれますから
大量に食さない限り安全性は高いでしょう。
 


8. 鍋料理(ラウ)に美味しい花野菜:オクラの花(Abelmoschus esculentus)

オクラの果実はアジアで広く食されていますが花は超高級食材でマニア向け。
ソフトな香りと食感は病みつきになる美味しさ。
カボチャとは異なり花を摘んでは結実しませんから栽培者が花段階で収穫することは
まだ少ないようです。
(ごくマイナーですが花オクラと称して花の収穫を目的とする栽培者もいます)
高く売れるようになれば普及するでしょうが、
劣化が非常に速いために市場性は小さいかもしれません。
オクラの果実は大型が好まれ、ベトナム庶民が好むヤギの焼き肉の付け野菜となります。



ヤギの焼肉レストラン.庶民に非常に高い人気がある.
付け合せの野菜はミズオジギソウ、オクラが定番(ホーチミン3区)


9. (参照)日本の食用菊

(写真上)冬瓜(とうがん)と小菊花のスープ
欧米のマイナー食用花はバラが代表ですが、欧米人が認める日本のマイナー花野菜は菊。
どこの国でもマイナーな花野菜は地域性が強く、都会に出回ることはほとんどありませんが
この菊(通称:モッテノホカ、小菊)は古くから山形県で広く栽培されて、首都圏に拡がっており、
ハウス栽培によりいつでも入手できます。
(交雑種のために学名はChrysanthemum ×morifoliumと表示されることもありますが定かではありません)
山形では大豆と合わせた薄い酸味の「お浸し」が多いようですが、スープにもマッチして良い香りを放ちます。
青森のアカシア、茨城のキンセンカなど紹介したいローカルな花野菜はいろいろありますが、
首都圏では食用ハーブの花野菜が売られるようになりました。(写真下右:ルッコラの花野菜)


10. (参照)市販されている花料理本の一部紹介
 
料理本は差別化や受けを狙ったコンテンツが多いため、筆者が推奨しているわけではありません。
あくまでも参考程度として、自己判断でお食べください。(edible=食用)

生鮮食材研究家:しらす・さぶろう)

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