エフェドラ(麻黄)の販売が禁止
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乃木生薬研究所
研究開発部門のコラム

世界の食材に焦点を置いた
グルメガイド。

ニュース

1200危険なダイエットで注目される植物の神経毒
米国ではエフェドラ(麻黄)の販売が禁止

2004年5月5日(水)

米国では4月から、エフェドラ(麻黄、Ephedra)とエフェドリン(ephedrine)(注1)のサプリメントが、実質的に販売できなくなりました。
2月に米国FDAにより制定された規則が、2ヵ月間の猶予をおいて、4月8日から施行されたものです。
エフェドリンはエフェドラ(麻黄)(注2)から抽出されるアルカロイド成分ですが、サプリメントのほとんどは合成化合物です。 エフェドラ(麻黄、Ephedra)は神経に作用する植物毒を含有します。
ダイエット効果(脳神経に働き、食欲不振になる)を期待するサプリメントが普及していましたが、ボディービルディング、エネルギー増強、花粉症対策などにも使用されていました。
販売が自由であった米国では、副作用が問題となっており(注3)、心臓血管病,心拍異常,けいれん発作,精神異常などが多発し、死亡者も出ています。

エフェドリンは服用量、服用法が難しいために、米国の医師会とFDAでは、これらの危険な副作用をたびたび警告し、特に合成化合物(ephedrine HCl)の危険性が高いと指摘しています(注4)

日本では従来からエフェドラの代表的アルカロイド(Alkaloids)成分4種類(注1)が医薬品となっているため、エフェドラ(麻黄)とエフェドリン(ephedrine)の輸入は、エフェドリン含有サプリメント、お茶類も含めて禁止されています。
エフェドラは中国原産といわれ、気管支喘息の特効薬として歴史があります。漢方薬の「麻黄湯」、「麻杏甘石湯」の主成分ですが、薬局で売られる風邪薬や「葛根湯」などに微量が配合されているケースがあります。
日本ではエフェドリン輸入が禁止されているため、個人輸入、代行輸入によって使用されていますが、ダイエット商品などに違法に混入されていることもありますから要注意です。



注1)
エフェドリン(ephedrine)は植物のマオウ(Ephedra sinica Stapf)から得られるアルカロイド成分(注5)です。
医薬品にはエフェドリン(l-ephedrine)、プソイドエフェドリン(d-pseudoephedrine)、メチルエフェドリン(l-methylephedrine)、ノルエフェドリン(l-norephedrine)の4種類が使用されています。
エフェドリン(ephedrine)は1885年(明治18年)ごろ、東京帝国大学医学部薬学科、長井長義教授により単離抽出され、構造が決定されました。
長井長義教授は明治13年(1880年)に設立された日本薬学会(東京都渋谷区)の初代会長です。


注2)マオウ(麻黄、ma huang、Ephedra)(Ephedra sinica Stapf)マオウ科(Ephedraceae)

マオウ(麻黄、ma huang、Ephedra)

マオウにはEphedra sinica、Ephedra intermedia、Ephedra equisetina Bungeの3種類ありますが、生薬の麻黄としては、Ephedra sinica系の蒙古原産フタマタマオウ(マンシュウマオウ)(Ephedra distachya Linn)の栽培が盛んです。

フタマタマオウ(マンシュウマオウ)(Ephedra distachya Linn)




注3)マオウ(Ephedra)成分の作用と副作用
  • エフェドリン(塩酸エフェドリン)(l-ephedrine)
    心拍数増加、心拍出量増大、血圧上昇、気管支拡張、血管収縮、血清カリウム値の低下、心悸亢進、食欲不振、発疹、口渇
  • プソイドエフェドリン(塩酸プソイドエフェドリン)(d-pseudoephedrine) エフェドリンの異性体(HP0022プロテオグリカンの話2004/04/08注7,L-体とD-体参照)
    血管収縮、抗炎症作用
  • メチルエフェドリン(塩酸メチルエフェドリン)(l-methylephedrine)
    気管支拡張、鎮咳、抗アレルギー
  • ノルエフェドリン(塩酸フェニルプロパノールアミン)(l-norephedrine)
    血清カリウム値の低下、心悸亢進、食欲不振、発疹、口渇
(医薬品の治験データより)


注4)米国でFDAより警告されている合成エフェドリン製品の例。
カッコ内は製造元。 
  • Adipokinetix(ephedrine HCl含有*)(Better-Bodies, USA)
  • Phenylkinetics,Libido Magic for Men、Libido Magic for Women(norephedrine HCl含有)(21st Century Sports Nutrionals Inc, USA)
  • Overdrive(norephedrine HCl,ephedrine HCl含有)(Diabetes Tea, USA)
  • Adrenalin(norephedrine HCl含有)(Muscle Lane Inc, USA)
  • Hollywood Cuts(norephedrine HCl含有)(Scientifically Advanced Nutrition, USA)
  • Lipodryl II(norephedrine HCl含有)(ThermoLife International, USA)
 
以下は製造元不明
  • Yellow Jackets(ephedra含有)違法ストリートドラッグの代替品として利用されている。kola nut抽出物(caffeineアルカロイド)などを含有する。
  • Herbtech (ephedra含有)
  • Trip2Night,(ephedrine HCl含有)精力ハーブ剤
  • Benzo-Berries、(ephedrine HCl含有)リラクゼーションハーブ剤
  • Liquid Bezz、(ephedrine HCl含有)液体ハーブ剤
  • Salvia 5X、(ephedrine HCl含有)精神開放ハーブ剤
  • AMP II Pro Drops、(ephedrine HCl含有)体重減少目的。 
*財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)資料より抜粋 
*HClは塩酸塩((hydrochloride)の略語で合成化合物を意味します。
 


注5)アルカロイド(Alkaloids)と代表的な薬用植物アルカロイド
アルカロイドはアルカリ様という意味で、動植物に含有されるアルカリ性(塩基性)成分の総称です。
特に植物には多く分布します。
植物毒のほとんどは、アルカロイド成分が占め、マオウ科、ナス科、ケシ科、メギ科、キンポウゲ科、アカネ科、マメ科、ユリ科、ヒガンバナ科など多数の植物に含有されます。
植物毒のアルカロイドは神経ホルモン様の働きを示し、末端神経に入り込むと、少量で神経を麻痺させる毒性を示します。
この作用が医療分野で応用されて、多数の医薬品が開発されています。(植物毒のアルカロイドは後日特集を掲載します)
代表的な薬用植物アルカロイドにはマオウ科のエフェドリン(ephedrine)の他、下記の種類があります。

ナス科(Solanaceae)

ハシリドコロ(Scopolia japonica)

  • ハシリドコロ(Scopolia japonica)
  • ベラドンナ(Atropa belladonna)
  • チョウセンアサガオ(Datura stramonium)
代表的アルカロイド成分名:スコポラミン(Scopolamine)アトロピン(atropine)
スコポラミン、アトロピン合成物質には、副交感神経拮抗薬(商品名ブスコパン buscopan)、アトロピン系鎮痙剤(商品名パンテリン)、白内障治療薬(商品名ロートエキス。瞳孔括約筋を弛緩させる作用)など多数の医薬品があります。
スコポラミン、アトロピンはアセチルコリンの可逆的拮抗物質です。この作用はサリンの解毒薬に使用されるそうです。

ケシ科(Papaveraceae)

ケシ科(Papaveraceae)ケシ(芥子)Papaver somniferum

ケシ(芥子)Papaver somniferum
地中海原産といわれる。東ヨーロッパ、アジアの高原地方で栽培される。

代表的アルカロイド成分名:モルヒネ(morphine)、コデイン(Codeine)、パパベリン (Papaverine)、ノスカピン(Noscapine) 実の乳液が麻酔、鎮痛剤。麻薬のアヘン(阿片、Opium Pulveratum)に使用されます。
ケシ科には200種類以上があり、園芸栽培される小型のヒナゲシ(雛芥子、Papaver rhoeas L.)、別名グビジンソウ(虞美人草)はポピー(Poppy.)として親しまれていますが、毒性のアルカロイドは、ほとんどありません。

ヒナゲシ(雛芥子、Papaver rhoeas L.)



キンポウゲ科(Ranunculaceae)
オウレン(黄連)(Coptis japonica、Coptis chinensis) 中国、日本に自生する。

オウレン(黄連)(Coptis japonica、Coptis chinensis)

代表的アルカロイド成分名:ベルベリン(Berberine)、パルマチン(palmatine)
生薬として根茎を苦味健胃整腸,消炎,精神不安に使用されます。

アカネ科 (Rubiaceae) キナ(Cinchona)属
アカキナノキ(Cinchona succirubra, Pavon)(Cinchona pubescens Vahlという説もあります)
南米アンデス原産。現在はコロンビアなどで栽培されますが、インドネシアが世界市場を独占しています。
キナアルカロイドを含有するキナにはCichona ledgeriana、Cinchina calisaya、Cinchona pubescens Vahl 、Cinchona cordifolia、Cinchona lanceifolia、Cinchona ovalifolia、Cinchona icinalisなど、種類はいくつかあります。 
代表的アルカロイド成分名:キニーネ(quinine)、キナ酸(quinic acid)。
キナアルカロイドは数十種類あります。
キナの皮(Cinchonae Cortex)に含まれるキニーネはマラリアの治療薬です。(HP1190 マラリア特効薬のアーテスネート(artesunate)
ヨモギ・パワーでマラリア撲滅2004年4月30日(金)参照) 
アカネ科には多種類ありますが、コーヒーの木、精力剤のヨヒンベの木が著名です。
園芸種ではクチナシが代表的です。 [an error occurred while processing this directive]

サプリメント


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