ワインと大理石(石灰岩)
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乃木生薬研究所
研究開発部門のコラム

世界の食材に焦点を置いた
グルメガイド。
グルメ

ワインよもやま話
第4話 ワインと大理石(石灰岩)


2004年6月24日(木)

  1. ヨーロッパの石文化
  2. 石灰岩とラテン系民族のワインとの関り
  3. 石灰岩(ライムストーン、limestone)、大理石(marble)、方解石(calcite)
  4. 南フランスの石灰岩遺跡
  5. ブドウの産地と建築用の石灰岩(limestone)ライムストーン
  6. ブルゴーニュ(Bourgogne)の緑粘土(泥)層。キンメリッジ粘土層(Kimmeridge Clay)
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1.ヨーロッパの石文化

日本は紙と木の文化、ヨーロッパは石の文化といわれることがあります。 主として建造物、道具、器、食に関連して、文化の相違は顕著に現れます。
ローマ帝国からの伝統を持つラテン系民族はヨーロッパの中心的民族の一つですが、食文化が特徴的で、石の文化と切り離せません。ラテン系民族の食文化は石灰岩食文化(limestone food culture)と置き換えても通用するほど、石灰岩とラテン系食文化は切り離せない密接な関係を持っています。



2.石灰岩とラテン系民族との関り

  1. ワインにはブドウや樽の香りだけでなく、土壌、土質の香りが移りますが、ブドウ栽培地区毎に独特の風味があります。ラテン系民族は石灰や粘土の香りに敏感です。
    フランス、イタリア※、スペイン、ポルトガルは世界のワイン生産量の半分以上を占めていますが、いずれも大理石やライムストーンの著名な産地が隣接しています。
    ※イタリアのワイン主要産地ヴェネト(Veneto)、ピエモンテ(Piemonte)、トスカーナ(Toscana)、プーリア(Puglia))にはビアンコ・カラーラ(トスカーナ)、ロッソ・ヴェローナ(ヴェネト)、ボテチーノ(ヴェネト)、ロッソ・レバンテ(ピエモンテ)、セルペジャンテ(プーリア)など、世界中で使用されている大理石の鉱脈があります。
    (→ワインよもやま話、続編で取り上げます。)

  2. 石灰岩の洞窟でワインを発酵させ、貯蔵もする(現在も一部の地方では利用しています)
  3. 石灰岩の洞窟でブルー・チーズを作る(現在は全てではありません)
    ワインの大産地ラングドック(Languedoc region)の北にあたるセベンヌ山脈地方(Cevennes)のコース(コッス)(Causse)は石灰岩の台地ですが、鍾乳洞とワインで著名です。
    世界一のブルーチーズといわれるロックフォール(Roquefort)は石灰岩台地に位置するロックフォール(Roquefort) 村で発見されました。石灰岩洞窟に放置された羊の乳が、偶然に青カビによる発酵によりチーズになったといわれています。
    同じ環境で発見されたブルー・デ・コース(Bleu des Causse)は牛乳で作られています。いずれもフランスの法律(原産地呼称)ではAOC(Appellation d'Origine Controlee)に分類される高級品です。
  4. 石灰岩で住居、教会、橋など建造物を作る。(解説を参照)
  5. 石灰岩の洞窟で暮らす(太古の昔の話です)。現在は食品などの貯蔵庫として利用することがあります。
  6. 石灰岩を彫刻、レリーフなどの材料とする。石灰岩は白色が美しいばかりでなく、柔らかいため、加工し易い事が特徴です。
  7. 石灰岩を通したミネラル水を飲む。
    フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどラテン系ヨーロッパ人はミネラルを日常的に食しています。
    最たるものは、ミネラルウォーターですが、日本の水の5倍以上のカルシューム、マグネシューム含有量の水が好まれます(コントレックスなど)
    また温泉療法には飲泉が必須となっています。
    カルシューム、マグネシュームは石灰岩の主成分です。 日本人が恒常的に不足しているカルシューム、マグネシュームもラテン系民族は充足しています。
  8. 石灰岩、緑粘土を薬として日常的に使用する。
    民間薬、家庭医薬品として、ガン、悪性腫瘍、リュウマチ、アトピー、喘息の治療にミネラル水や緑粘土を摂取しています。
  9. 石灰岩をセメント、石膏、顔料、中和剤として使用する。(工業用の用途は各国共通です)



3.石灰岩(ライムストーン、limestone)、大理石(marble)、方解石(calcite)


岩石は成因、成分などで分類されますが、大別すると2種類しかありません。
地核より噴出した火成岩の火山岩(代表的な石は花崗岩)と、太古の生物の無機質部分であるサンゴ、貝殻などが堆積して作られた堆積岩の石灰岩(ライムストーン、limestone)です。
2種類の岩石は地殻変動、水の作用、ミネラル類の混入、両種類の混合(貫入、または分解後の堆積)等により様々な表情に変化して、石の種類を形成します。
土、砂、泥、礫、石、岩石という呼び方は形態的なものです。成分は火成岩、堆積岩が混合していることが多く、様々です。
石灰質の土壌は、恐竜が栄えた1億5千年前頃の中生代、ジュラシック紀(Jurassic period)後期から白亜紀(Cretaceous period)前期にかけて形成されました。隆起した石灰層には4億年前のデボン紀(Devonian)に堆積した魚類や両生類を見ることも出来ます。
石灰岩が地殻変動などで変成して造られたのが変成岩の大理石(marble)や、方解石(カルサイト、calcite)です。強く変成作用を受けた石灰岩にはオニックスと呼ばれるものがありますが、産地はパキスタンなどに限られます。
火山岩の主成分は珪素が70-90%ですが、石灰岩の主成分は90%以上がカルシューム、マグネシューム、それが混合されたドロマイトです。
白色以外の色を持つ石灰岩にはミネラル類が混入しています。
セメント、石膏、石灰などは、石灰石のみといえる製品です。


4.南フランスの石灰岩遺跡


フランスのブドウ栽培地には建築用の石灰岩(石)の産地が多いのが特徴的です。
フランスの石灰岩建材(limestone)に較べイタリア、スペイン、ポルトガルでは硬度の高い大理石(marble)がより多く産出されます。
南仏の地中海沿岸部アヴィニヨンあたりからローヌ川に沿ってバーガンディー方面、ロアール川方面、ジロンド川に沿ってコニャックやボルドー(Bordeaux)方面への旅をした方は、数々の文化遺産を形作る石灰岩を身近に感じたはずです。
これらの地方には世界遺産級とも言われる、石灰石の鍾乳石(crystalline stalactites)、石筍(せきじゅん、stalagmite)が乱立する巨大な鍾乳洞、露出した石灰石の峡谷、石灰石の大聖堂や修道院、城砦都市、石灰石で造られたローマ時代の水道などがあります。

  • 代表的な鍾乳洞
    トゥラビュック洞窟 (La Grotte de Trabuc) 水道橋(Le Pont du Gard)から1時間
    キャナレッテ洞窟 (La Grotte des Grandes Canalettes) 城砦都市のカルカッソンから20分
    キャブレスピン洞窟 (La Gouffre Geant de Cabrespine) 城砦都市のカルカッソンから20分
    ※いずれも日本の秋吉台鍾乳洞を凌ぐ壮大、華麗な洞窟です。

  • 露出した石灰石の峡谷
    タルン渓谷(The Gorges du Tarn)
    ロワール渓谷(The Loire Valley) シャロンヌ(Chalonnes)からスルリー・シュール・ロワール(Sully-sur-Loire)の間

  • 大聖堂
    サント・マドレーヌ聖堂(Basilique Saint Madeleine de Vezelay)
    フォントネー修道院(Abbaye de Fontenay)
    ブールジュの大聖堂(Bourges Cathedral)多種多様なステンドグラスが美しい。

  • 水道
    プロヴァンス南西に、南仏の町ユゼス(Uzes)の水源地とニーム(Nimes)をつなぐ石灰石作りの水道橋、ポン・デュ・ガール(Le Pont du Gard)があります。ローマ時代には総長50キロメートルは存在したといわれています。地元では水道橋が存在するプロバンス地方を特に水道地帯(Gard Provencal)と呼んでいます。 

  • 城砦都市
    有名なカルカッソン(Carcassonne)は石灰石で造られたローマ時代の要塞都市です。



5.ブドウの産地と建築用の石灰岩(limestone)ライムストーン

  • バーガンディー(ブルゴーニュ、Bourgogne)のボーヌ地区はシャルドネ種ワイン (Chassagne-Montrachet、Corton-Charlemagneなど)を産する特級ワイン(AOC、Appellation d'Origine Controlee)の産地です。
    中心地の一つであるコルトン(Corton)には、ピンクの美しい石灰岩(limestone)を産出する、有名な鉱脈と採石場(quarry)が二つあります。
    この石はパリのオルセー美術館の内装に使用されています。

  • フランスワインの半分を生産するラングドック地区(Languedoc-Roussillon)には、有名なミネルヴア鉱脈(Caunes-Minervois quarry)があります。
    この採石場からはヴェルサイユ宮殿のグランド・トリアノン(Grand Trianon at、Versailles)の柱が切り出されています。

  • ローヌ地区(Cotes du Rhone)の中心部には人口1,500人ほどのタヴェル(village of Tavel)という高地の村があります。有名なタヴェル・ロゼroseの産地です。フランスの最高級ロゼといわれ、その色からクラレット(clairet)の代名詞を持ちます。
    鉱脈は大きくありませんが、ここの石灰岩は、古くから建材用として、硬度の高さと文様(vein)の美しさが著名です。
    (近日中に写真を添付してより解りやすくします。)



    6.ブルゴーニュ(Bourgogne)の緑粘土(泥)層


    白ワインのシャルドネ種の栽培は、特に石灰質と粘土層が積層した土壌が最適といわれます。
    ブルゴーニュ(Bourgogne)地区の土壌は、石灰石と共に、珪素(silica)、アルミニュームが多いキンメリッジ粘土層(Kimmeridge Clay、154百万年から150百万年前のKimmeridgian ageに形成された緑泥層)が積層しているために、特にキンメリジャン(Kimmeridgien、Kimmeridgian)とも呼ばれています。緑粘土(泥)層の珪素成分は50%前後ですが、アルミ成分が13-15%と多いのが特徴的です。この緑粘土は家庭医薬品となります(UのG参照)
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