梅の収穫が最盛期を迎えています。
梅に限りませんが、美味しい塩漬けは
素材の吟味と塩へのこだわりから生まれます。
ケン幸田さんはかっては塩の産地として
栄えた瀬戸内海の淡路島の出身です。
時節柄、植物のよもやま話の連載を休憩し、
食の話題をお届けします。
イメージの写真は塩漬け加工寸前の完熟南高梅です。
カナダ便り 食のよもやま話。第一話 「塩」
給料を意味する「サラリー」の語源は塩ですが、
これはローマ時代、軍人や官吏の給料を「塩」で
支払っていたことに由来するもので、
それほど貴重品だった証でもあります。
ヨーロッパや中国では岩塩が多く取れますが、
古来、塩の在り処を巡って多くの戦いがあったことが、
歴史に刻まれています。
当地バンクーバーと、2010冬季オリンピックの誘致で
競い合っていたザルツブルク(塩の城下町の意)を一昨年に尋ねた時、
この地もその地名の通り、ローマ以前から、
ケルト人によって岩塩が集積されていたことを知らされました。
ザルツァッハ川(塩の河)が町の中心を流れ、
東部にひろがる風光明媚な
湖水地帯ザルツカンマーグート
(塩の御料地の意、サウンド オブ ミュージックでも有名な観光地)などの
地名にも歴史を留めているのです。
一方わが国には岩塩はありませんが、相当古くから、
直接海水を煮詰めて製塩していたようで、
関東地方や仙台湾で縄文時代の製塩用具が発見されております。
また、つい近代まで海辺に塩田風景が見られた瀬戸内海沿岸各地も、
古くからの塩の産地であった証として、
製塩用の土器が多数出土しています。
因みに筆者の郷里淡路島は、
古事記によるとイザナギ、イザナミの尊が鉾で海水を攪拌して、
生んだ日本最初の島であるという「国生みの神話」で知られていますが、
地元では「海人族の製塩」にヒントを得た伝説であろうと言われて来ました。
日本人は植物食のため、その成分のカリウムが体内の塩分を尿と共に排出しやすいので、
生理的にも、つい塩辛いものを欲しがる傾向があるのだそうですが、
それだけ塩に対しても切実でした。
奈良時代の記録では、塩の価値は、米の二倍以上だったようで、
その後もこの貴重品を大事にする中で、
塩魚、漬物、味噌などを発達させていった経緯や
「清めの塩」の儀式伝統が残ることも、なるほどと頷けます。
最も水商売などで客寄せとして、店頭に塩盛りするのは、
平安時代に牛車で通う貴族を泊める為、
(牛が塩をなめる為、歩みを停めるように)女性の館が
戸口に塩を盛った伝統に由来するものです(ケン幸田)。