王壮快のマーケッティング・コラム

キノコよもやま話:第四話 キノコ(茸)はガン(癌)を治せるか?

〜米国食品医薬品局(FDA)がキノコ健康食品に警告書〜

キノコの持つ効用は生鮮キノコで得られます

1.FDA警告書の内容 イミューン・アシスト

今年(2006年)の8月に米国の健康福祉省(HHS)の食品医薬品局(FDA)より一通の内容証明警告書が出されました。
オレゴン州のノースウェスト・ボタニカル社(Northwest Botanicals,Inc.)が販売するサプリメントのイミューン・アシスト(Immune-Assist 247?)が連邦食品医薬品化粧品条例(the Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)にたいして重大な侵害をする表示をしているというものです。

イミューン・アシスト247は多種類のきのこから抽出した多糖類(きのこの細胞壁などを構成するβグルカンなど)で作られたサプリメントです。
悪性腫瘍、癌、エイズ、B,C型肝炎、鳥インフルエンザなどに有効と表示していますが、主成分と、表示される効能は下記の通りです。

  1. カワリハラタケ(アガリクス・ブラゼイ・ムリル)(Agaricus blazei Murrill))。一般的にアガリクスと呼ばれたり、商標でヒメマツタケと呼ばれるものと同じ。「ウィルスを防御し、抗腫瘍、抗癌効果がある。特に動脈硬化症に著効」
  2. トウチュウカソウ(冬虫夏草)(Cordyceps sinensis)。昆虫などに寄生して生育するキノコ。「呼吸器疾患、インポテンツ、免疫力低下の治療に使用されている。中国では気管支炎、肺炎、結核に多数の治療実例がある」
  3. マイタケ(舞茸)(Grifola frondosa)
  4. シイタケ(椎茸)(Lentinus edodes)「免疫力低下に関わるガン、エイズ、環境アレルギー、イースト菌感染、感冒、風邪の医療に使用されている」
  5. レイシ(霊芝)(Ganoderma lucidum)。「ガン、エイズ、B型肝炎、ヘルペス、高血圧、糖尿病治療に効果がある」
  6. カワラタケ(河原茸)(Coriolus versicolor)。「肺感染症に著効」
  7. 緑茶成分(エピガロカテキン)。「癌遺伝子の発現、促進をブロック。総コレステロールとLDL(低密度リポたんぱく質)レベルの低下」
「」内の効能書きはイミューン・アシストの宣伝に記載され、FDAがクレームを付けたものです。 イミューン・アシストの効能書きはあたかも商品を予防、完治、治療、症状緩和など医薬品と同等の表示するものであり、法に触れる。 その効果や安全性が立証されるものならば医薬品として認可されるべきものであり、現段階では認証できないというものです。 何故かマイタケは効能書きが無く、したがってFDAのクレーム対象ともなっていません。この警告書によりイミューン・アシストは2006.10.20現在販売を中断しています。

2.FDA警告書の真意

中国(香港を含む)、米国、日本にはイミューン・アシストと同様に複数のキノコエキスを混合した健康食品が多数あります。
イミューン・アシストは1ヶ月分が6千円程度ですが、日本や香港には数万円から10万円を超える商品も珍しくありません。
1994年に施行された条例以来FDAが効能表示を認可したキノコ類健康食品の薬学的効用はこれまでのところありません。
それ以前の健康食品素材では安全性を認めるにとどめています。FDAの真意はがん治療効果が認められないサプリメントを高価格で販売する業者を排除することでしょう。
日本でも癌の治療を謳うキノコ類販売業者に対して同様な警告が厚生労働省より出されています。
キノコ類の保健食品としての効用は万人に認められているといっても過言ではありませんが、がん予防などの保健目的ならば野菜市場のキノコ類の摂食、シイタケなどの安価な抽出物のサプリメントで充分といえます。癌などの治療目的ならば医薬品認可されたクレスチンなどが選択肢でしょう。
猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、霊芝(れいし)、冬虫夏草(とうちゅうかそう)などは中国の伝統生薬ですが、現在の中国の監督官庁が公認した癌の完治報告は知られていません。

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霊芝は貴重品として扱われますが、サルノコシカケ類は木材を腐らすキノコとして、日本の何処ででも見ることができます

3.日米では健康食品のキノコによるがん、エイズ、B、C型肝炎などの治療効果は認められていません。

キノコ類が、悪性腫瘍や癌に有効かどうか、現在の日米医薬品認可基準では実証できていないからです。
各国の伝統医療で使用される生物、鉱物をヒントに製造された欧米の医薬品は、アスピリン、モルヒネなど数多くの実例がありますが、日本でキノコ菌から製造された医薬品はシイタケのレンチナン、かわらたけのクレスチン、スエヒロタケのソニフィランなど限られており、米国で開発されたものはありません。

1977年にクレスチンが販売された時には癌の特効薬として大きな期待がもたれ、一時は年間600億円から一説によれば末端では1,000億円の市場が形成されました。
その後臨床例が増えるに連れて、単独投与では完治するケースが少ない(無い?)など、種々の問題点が指摘されるようになり、レンチナン、ソニフィランなどを含めた現在の市場規模は10分の1以下といわれます。薬品の開発会社もキノコ類に関しては健康食品市場を志向しており、医薬品の新薬は現在のところありません。


世界中の多数の研究者が断片的に発表するキノコの効能は現在でも優れた論文が数多くありますが、その研究が医薬品製造までに発展しない原因はどこにあるのか、謎です。

  1. 動物実験では良い結果が得られるが、人間が摂取した場合は初期にはがん細胞減少など良い結果が得られるが、継続性がなく(免疫過渇現象?)、がん細胞が消滅したと認められた実例が見出せない。
  2. 医薬品製造のために特定成分を抽出するとあまり良い結果が得られなくなる。

    このような現実から医薬品としての発展は行き詰まりを見せていますが、健康食品としては数多くの製品が出回っています。

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生鮮アガリクス・ブラゼイを食品売り場で販売するところも出てきました。写真はブラウン・マッシュルームと通称されるものですが、アガリクス・ブラゼイと味、香りが極似しています

4.キノコ・エキスは免疫力を強化する保健食品

健康食品としてはシイタケ(椎茸)レイシ(霊芝)(サルノコシカケ、マンネンタケ)、カワラタケ(川原茸)、アガリクス・ブラゼイ(ブラジル茸)、ハナビラタケ(花びら茸)、マイタケ(舞茸)、メシマコブなどを中心に数多くの製品があります。免疫力強化やホモシステイン除去など予防医学的に優れた効果を示すことは疫学的にも有効例があるために、保健食品としてキノコ類を摂食することに異論を唱える学者は多くはありません。


日米の監督官庁(厚生労働省、米国健康福祉省など)が問題にするのは、医薬品といえども癌完治が難しいキノコエキスを悪性腫瘍や癌、エイズ、B、C型肝炎の貴重な治療薬のように宣伝し、高価で販売する業者が後を絶たないことです。海外では日本のレンチナンやクレスチンを引き合いに出して、シイタケやカワラタケを原料にした健康食品を癌の治療薬として宣伝する業者が現在でもいます。

5.キノコ菌から製造された日本の医薬品

  1. クレスチン(Krestin)(PSK)
    かわらたけ菌糸体由来の経口薬..
    クレハ化学が開発。1977年に三共製薬から販売されている。
    結核菌から製造した丸山ワクチンと同時期に研究開発されていたために、厚生省の認可をめぐって騒動となったことがあり、広く知られた抗がん剤でした。クレスチンは経口剤のために使いやすく、かつ健康保険適用薬としてリストアップされたために、一時は年間600億円以上を売り上げて、保険財政を圧迫したと言われる伝説的な医薬品です。
    現在でもクレスチンは製造されています。
    癌を治療する医薬品としては、胃がん、直腸がん、肺がん治療の化学療法や、放射線治療の副作用緩和に補助的な使用をすることがあるようです。

    現在のクレハは健康食品として2003年9月に発売した「マツマックス」に注力しています。マツマックスはマツタケの菌糸体をタンク培養させたもので、菌糸体はM6271株と名付けられています。マツタケはキノコの中でも保健効果が高いと言われています。

  2. レンチナン(Lentinan)
    シイタケ菌糸体由来の注射薬.
    味の素が開発。1986年4月に大鵬薬品から抗がん剤として販売された。現在は胃癌治療の化学療法に補助的に使用されることが多いようです。
    味の素も、現在はシイタケエキス健康食品のミセラピスト(商品名)を開発し、2003年から販売しています。しいたけのβグルカンを低分子化して吸収を改善したといわれます。

  3. ソニフィラン(Sonifilan)(SPG)
    スエヒロタケ菌糸体由来の注射薬。成分名はシゾフィラン(Sizofiran)科研製薬が開発。1986年8月に同社により販売された。子宮頸癌治療の補助薬として使用されることがあるようです。



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