「湘南海浜風俗史」
50年代の湘南文化を彩ったジャズとハワイアン・ミュージック
太平洋戦争が終わり、平和を取り戻した湘南海岸は、米国進駐軍の保養地ともなりました。逗子から茅ヶ崎につながる砂浜に、海水浴を楽しむ米兵達が数多く見られた時代です。
湘南の若者には異文化のライフスタイルのなにもかもが新鮮に映ったものです。
進駐軍向けラジオ放送(現在はFEN、当時はWVTR IN TOKYO)からは、各種のジャズ・カントリーウエスタンや、当時の我が国で四大ハワイアンバンドといわれた、日本人によるハワイアンの生演奏が放送されていました。四大ハワイアンバンドとは、バッキー白片とアロハハワイアンズ、大橋節夫とハニーアイランダース、ポス宮崎とコニーアイランダース、寺部頼幸とココナッツアイランダーズのことです。放送には日比谷から田村町にかけての通りにあった、NHKのスタジオが使用されましたが、ミュージシャンを初め音楽関係者が多数、湘南から通っていました。
戦前から湘南地方は、外国音楽愛好者・ミュージシャンが、国内では比較的多く居住していた地域で、戦後の米国進駐軍の影響に依るジャズ系(ジャズ・ハワイアン・カントリー等)の音楽をいち早く、消化、発展させたのが、彼らです。
米国進駐軍内部で発刊された「HIT・KIT」と言う歌曲集が、彼らにとってバイブル的存在となり、数多くの曲がレコーディングされた「V disk?」は、メロディーは勿論、フィーリング、演奏スタイルのお手本となる貴重なレコードでした。
一方、戦後のことで 湘南地域には、大きなステージやクラブ等は皆無に近く、その様な環境でジャズ、ハワイアンが聞ける場所は、逗子の池子キャンプと横須賀のEMクラブの進駐軍施設だけだったのではなかったかと記憶しています。日本各地の米軍キャンプのクラブで、常にジャズが流れていた時代です。
米軍キャンプ以外の場所も米軍専用施設ばかりでしたが、鎌倉由比ガ浜海岸に「リビエラ」と呼ばれるクラブがありました。後にレストランの「大海老」となり、現在はマンションに転換された場所です。
暫くの間は米軍専用のクラブでしたが、或る時期から日本人も遊べる場所となりました。ミュージシャンは、その時期から日本人プレイヤーが多かったと記憶していますが、演奏されたジャズ、ハワイアンのメロディーと共に、湘南地域・横浜・東京の洒落者が交流した、楽しい思い出が残っています。
このような環境でしたから、湘南地域では、戦後の早い時期から、あちらこちらの家庭で、小演奏会・ダンスパーティー等が開かれ、また夏の海辺ではビーチパラソルの下で寄り集って、ウクレレを弾き、ジャズ系のラジオ音楽を楽しんでいました。
日本の復興が進んできた50年代の後半ともなると、湘南の各地には、家庭以外にも、若者が社交できるホテルがいくつか出現します。「江ノ島海浜ホテル」「鎌倉山ロッジ」「七里ガ浜ホテル」などです。
逗子ではリゾートホテルの「渚ホテル」が社交場となりました。戦前からのホテルですが、戦後再開された後も、サービス・食事が良く 東京方面からの宿泊客も多くありました。
これらのホテルでは折にふれ、「ダンスパーティー」が催され、当地の紳士・淑女が、その頃、爆発的に広まっていた、ハワイアンやロックンロールの演奏を聴き、流行していたダンスの「ジルバ」を盛んに踊ったものです。
最近ウクレレが小さなブームとなっていますが、50年代のウクレレは、現代の奏法、対象のメロディーとは、いささか異なりました。このあたりについては次回に述べたいと思います。
住吉 弘
住吉さんは鎌倉在住70年。慶応義塾大学を卒業され、湘南地方在住のミュージシャンと幅広い交流があります。戦後はハワイアン・バンドを編成されていました。
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