
桔梗ヶ原のブドウ畑
現在では、この地域は、独自ブランドワインの販売にも力をいれていますが、「五一わいん」「イヅツワイン」「信濃ワイン」「アルプスワイン」など、有力地ワインメーカーがいくつかあります。
しかしながら生産量が多いだけに、信州の他地域に較べ、地ワイン産地としての独自性は希薄です。
新しい品種栽培や純国産に、こだわるワイナリーがある反面、国内産と称する安価な輸入ブレンド物を首都圏のスーパーなどに販売するワイナリーもあり、地域全体の方向性が見えません(注1)。
方向性を定めるのが難しくなっている日本のワイン産業の中で、この地域が、今後どのようなマーケッティングをしていくか。将来を予測する上で重要なモデルとして注目しています。
「イヅツワイン」は「五一わいん」とは路線が異なり、在来の国産ブドウ品種によるワインを中心に据えていますが、
フランス種などもいくつか手がけています。
「五一わいん」では2002年のシャルドネ、「エステート・ゴイチ」(1,585円/720ml)、
向かいに立地するイヅヅ・ワインでは2002年のシャルドネ、「果報」(1,270円/720ml)を購入し、10名くらいの愛好者と試飲しました。
シャルドネとしては、他の産地に較べて、低価格ラインですから、単純比較は出来ませんが、コストパフォーマンスには優れているという、全員の感想です。
イヅツの「果報」は若いというか、フルーティーというか、独特の風味であるのに対して、エステート・ゴイチは、オーク匂のあるフランス・バーガンディーのシャブリなどに近いという感想でした。
日本人の遺伝子は、欧米人に較べアルコールの分解酵素が少ない人の比率が高い、といわれています。
今回も、お酒の強い人の好みと、弱い人の好みは、かなり明確に分かれました。お酒の弱い人には、ドイツ種のようなブドウの香りの強い、渋みや苦味の少ないワインが好まれる傾向があります。永らく欧州タイプが好まれず、赤玉ポートワインや蜂ぶどう酒が選択された背景といえます。
酒飲みには「五一」、飲めない人には「イヅツ」という印象でした。
林農園ではメルローに加え、カベルネ(Cabernet Sauvignon)、セミヨン(Semillon)、ピノ・ノワール(Pinot Noir) シャルドネ(Chardonnay)や、日本人好みのドイツ種の栽培にも取り組んでいます。
山形、北海道で栽培が盛んなリースリング(Riesling)系統の交配種、ケルナー(Kerner)や、ドイツや隣接のアルザス(フランス)などで評価が高いシルヴァネル(Silvaner)とリースリングの交配種、ミュラー・トゥルガウ(Muller-Thurgau)などです。
また、貴腐郷40と命名された貴腐ワイン(シャルドネとセミヨンのブレンド)、フランスの交配種セイベル9110(Seibel)、など「五一わいん」は混乱するほど種類が多く、アイデンティティーが希薄になっているともいえます。国産ワインが量より質に変換している時代にあって、将来の方向性を模索しているのでしょう。
注1)地ワイン(ローカル・ワイン)とは何か。
ナショナル・ブランドもローカルから成長するのが一般的ですが、ワインのような成熟商品では、国際的な成長を遂げるのは至難です。
成熟したワイン市場のマーケッティングは、ナショナル・ブランドか、ローカル・ブランドに徹する必要があるでしょう。中南信地区のワイン産業はどちらを目指しているのでしょうか。
ローカルの地ワインに徹するならば特徴的で、良質なものが求められます。
特徴的、良質とは「言うは易し」ですが、実行は非常に困難なことですから、なかなか採算がとれません。結局のところ、拡大策に進まざるを得なくなります。
「特徴的、良質」とは、例えて言えば、客の絶えない小規模経営の小料理屋や居酒屋ともいえます。
このようなお店は、調理人兼オーナーがメニュー限定で、一人でまかなっています。料理の質が高く、コストパフーマンスが良ければ、消費者に歓迎される好例です。
地ワインの世界も、オーナーの顔が見えて、個性的な感性が伝わってくるワイナリーが望まれるのではないでしょうか。
注2)桔梗ヶ原
行政的には宗賀地区に属します。塩尻から中山道沿いにやや下った、高原地域です。
桔梗ヶ原の気候は寒暖の差が激しく、土質は関東ローム層です。
関東ローム層は地域により組成が異なり、中部、南部の信濃地区には砂礫の多い地域、粘土質の多い地域の双方が存在するため、それぞれに適した多種類のワイン用のブドウを栽培することが出来ます。
急速に進む地球の温暖化は桔梗ヶ原に有利に働いているようです。
甲府盆地の高温化によって、甲州のブドウ栽培は苦戦を強いられていますが、代わって、晩霜や氷結などに悩んできた桔梗ヶ原が、日本でも有数のブドウ栽培の適地となっているそうです(林農園、猪飼専務)。
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