米国のチョウザメが乱獲で絶滅してからは、世界のキャビア生産の90%はカスピ海沿岸地方で生産されています。
カスピ海沿岸に関しては、数多い情報がありますから、本稿では簡単な解説に留めますが、政治、経済、環境に問題が多く、自然に生育するチョウザメは絶滅が危惧されており、自然繁殖が何時まで続くのかという現状です(HP前編参照)。
1.激減するカスピ海沿岸地方のチョウザメ

カスピ海沿岸部では、石油と石油ガスの生産、石油化学などによる汚染、都市化、ダム建設などによる自然環境の破壊が進んでいます。
最高品種のベルーガ・キャビアを産するオオチョウザメは体長数メートルになる貴重な最大型種ですが、黒海とアゾフ海(Sea of Azov)ではほぼ絶滅しています。
2.カスピ海キャビアの生産量と歴史
カスピ海沿岸地方では1900年代に14,000トン捕獲された後は急減を続け、1970年の捕獲量は2,800トンとなりました。現在は放流により漸増しているとも言われますが、条約(CITES)(前編参照)により放流に見合う155トンほどに漁獲制限をしています。
保護団体の記録では、産卵にヴォルガ川(Volga River)に現れるオオチョウザメの固体は1960年代前半には26,000匹程度認められたものが、1990年代前半には約7,000匹、2000年では約2.800匹になっているということです(NRDC)。
オオチョウザメはカザフスタン(Kazakhstan)のウラル川(Ural River)と内陸湖のアラル海(Aral sea)には2,500匹/2002年程度生息しているといわれますが、この地域も環境破壊が急激に進んでいるといわれます。
カスピ海で捕獲されたチョウザメには、受精卵が見られず、すでに生殖能力を失っており、現在漁獲出来るものは、全て放流物といわれています。
カスピ海の稚魚放流はロシア、イラン合計で8,000万匹以上/年(推定)といわれますが、生存率は1-3%以下、成熟が大幅に遅くなり、性的成熟に至らない固体が多いことも心配されています。
毎年、カスピ海地方ではキャビア生産の全体量を決めて、沿岸各国に割り当てをしていますが、カスピ海のキャビア取引は組織的な密漁などによる闇取引が相当量(割り当ての10倍ともいわれる)に上るため、生産量を把握することは困難であり、統計は実態を表していないといわれます。
最近はカスピ海沿岸国の問題意識も高まり、環境汚染、密漁に関しては改善も見られるようですが、やや遅きに失し、楽観は出来ない状況です。
フランス、イタリアなどキャビア先進国がチョウザメ養殖を急増させている背景がここにあります。
キャビアの歴史はペルシャ王国が立地したクラ川(Kura River)沿岸のアゼリス(現在のAzerbaijan)で、ペルシャ人がキャビアを採卵して食べていたのが始まりといわれます。
オスマントルコがカスピ海沿岸からヨーロッパを勢力範囲としていたとき、また「元」のジンギスカンがカスピ海沿岸まで進出したときにキャビアを賞味していたともいわれますが、いずれも定かではありません。
現代では、ロシアで皇帝(Czar Nicholas II)が領地のアストラカン(Astrakhan)(古くは羊毛、現在はガス油田で著名)やアゼルバイジャン(Azerbaijan)から11トンのキャビアを献上させていたという信頼度の高い文献があります。
3..キャビアの新しい首都、バンダリアンザレ
キャビアの新しい首都はバンダリアンザレ(Bandar-e Anzali)です。
北米のキャビア産業が壊滅してからは、通称キャビアの首都も米国東部のペングローブ(Penns Grove)(前編参照)からイランに移転しました。新首都はイランのテヘランから380 Km北西にある、カスピ海に面したアンザリ港の町、バンダリアンザレ(Bandar-e Anzali)(ギラン県Gilan Provinnce)です。ここでは財務省傘下の国営会社(The Iranian Fishing Company)が全てを取り仕切ります。
4.カスピ海沿岸周辺国とアムール川のチョウザメ産業
天然キャビアの生産と国際取引には七カ国が関与しています。
生産はカスピ海、黒海、アゾフ海(Azov Seas)、アムール川(Amur River,黒竜江)の沿岸国に限られます。生産国は、ロシア(Russia), イラン(Iran), 中国(China)の他、1990年にソ連より独立した、トルクメニスタン(Turkmenistan),カザフスタン(Kazakhstan,) アゼルバイジャン(Azerbaijan)とブルガリア(Bulgaria), ルーマニア(Romania)です。2000年にはこの8カ国で公称239トンのキャビアを取り扱いました。
カスピ海産キャビアは圧倒的に旧ソ連邦の取り扱いが大きく、古くはイランの10倍以上、最近でも、旧ソ連邦総計ではイランの4倍くらいになります。(1977年のデータでは抽出されたカスピ海産キャビア総量が約360-400トンでイラン取り扱いが約100トン)
現在のロシア分割り当ては、限られた会社が扱うようになりましたが、OJ-sC Аtiraubalyk*が最大の業者で、25トン/2,000年のキャビアを取り扱っています。この年のロシアは公称60-80トン(捕獲チョウザメ重量で560トン)のキャビアを生産しています。
アムール川(Amur Rive:黒竜江)では米国のエングストローム氏(Mats Engstrom )(前編参照)の指導で、ロシアと中国の双方がキャビアの生産をしています。現地でケルーガ(Keluga)と呼ばれるシベリアオオチョウザメ(ダウリアチョウザメ)(Huso dauricus)のロシア産、アムール・キャビアは日本にも輸入されていますが、20グラム5000-6000円と非常に高価です。
OJ-sCはオープン・ジョイント・ストック・カンパニーの略語。ロシアの株式会社組織。キャビアの取り扱いでは、モスクワ、サンクトペテルブルグなど都市部に供給しているロシア・キャビア社(OJ-sC Russian Caviar)があります。

5.カスピ海産チョウザメの種類
(カッコは英名と学名)
6..カスピ海産キャビアの種類と価格
カスピ海産キャビア (Beluga, Osetra, Sevruga)の欧米市場での種類と価格。
カスピ海キャビアは色と大きさで分類され、大きく、薄い色が高級品です。1オンスから35オンスくらいまでのガラス容器(glass jar)または缶詰となって小売されています。価格は1オンスあたり。*1キロ=2.1ポンド 1ポンド=16オンス