1.CDCのエイズ調査報告
CDCが米国における過去5年間のエイズ関連統計と調査を分析し、詳細な報告書を公表しました。
送られた報告書は2001年から2005年までの統計と調査を分析したもので、州別、民族別、性別、年齢別、感染経路別、予防法、治療法などで、最新のトレンドを分析しています。
多岐にわたる分析のなかでCDCが重大な関心を寄せているのは、各年の報告数増減にかかわらず、
実態は増大していると考えられるヒスパニック系住民(Hispanic)の感染者です。
ヒスパニック系住民は居住実態がつかみ難いことに加え、各州からの詳細報告がカリフォルニアなどを除く33州に限られるために、各々の実数は統計とはかけ離れていることが推察されています。
33州(全米は50州)で得られる統計は、医療機関で比較的正確に計算できる発症者(エイズ)総数は63%、ヒスパニックの発症者(エイズ)総数は56%をカバーしているとしていますが、
通院しないHIV感染者の実態をつかむことは大変難しいために、感染者数は推定と断っています。
2001年から2005年までの感染者と発症者(以下HIV/AIDS)は、報告のあった33州合計で184,167人です。
内18%の33,398人がヒスパニック系、51%の93,017人がヒスパニック以外の黒人、29%の54,029人が白人、1%がアジア人、ハワイなど太平洋諸島、1%がアメリカインディアンやアラスカ原住民でした。
クリックして拡大する2.ヒスパニック系のHIV/AIDS. HIV/AIDS(HIV感染者と発症者)
2005年の全米ヒスパニック人口比率は14.4%ですが、エイズ発症者(AIDS)は18.6%になります。
ヒスパニック系男性のHIV/AIDS数推計は10万人当たり56.2人、女性は15.8人です。
年齢別分類で最も多いのは30才から39才のカテゴリーで10万人当たり86.3人でした。
女性は40才から49才のカテゴリーが最も多く、10万人当たり25人です。
表面的には黒人に較べ、人口比も絶対数も少ないのですが、潜在感染者が多数予想されることに
CDCでは危機感を持っています。
HIV/AIDSの中心地がワシントンDC、ニューヨーク州など東部海岸各州であることに変わりはありませんが、
東部海岸の多くの州やヒスパニック系住民の多いカリフォルニアのHIV感染者数が報告されていないために
実態はより深刻であると推察されています。
3.非ヒスパニック系のHIV/AIDS
米国の非ヒスパニック白人男性のHIV/AIDS数は 10万人当たり18.2人、
非ヒスパニック黒人HIV/AID数は10万人当たり124.8人です。
非ヒスパニック白人女性のHIV/AIDS数は10万人当たり3.0人、
非ヒスパニック黒人女性は10万人当たり60.2人です。
4.治療方法が難しいヒスパニック系のHIV/AIDS
エイズ・ウィルスは9種類以上のタイプが識別されており、変異種、耐性ウィルスなど様々です。
2001年から2005年に感染が診断されたヒスパニック系HIV感染者と、2005年に発病している発症者(AIDS)の特徴を分析すると、生まれた地域によって感染経路に大きなばらつきがあることも判明しています。
例えば男性同士(MSM)のHIV感染経路は米国生まれ(46%)より、南米(65%)、キューバ(62%)、メキシコ(54%)出身者の発生率が高い。
異性間経路は米国生まれ(28%)よりドミニカ共和国(47%)と中米出身者(45%)が多い(売春婦が多い)。
また注射針経路(IDU)は米国生まれ(22%)よりプエルトリコ出身者(33%)が多い(麻薬、覚醒剤常習が多い)というトレンドがあります。
したがって、一括した治療は効果的でないとしていますが、ヒスパニック系入国者は国民、移民、住民としての登録が不明確である居住者(不法入国、ホームレス、売春婦など)が多く、適切な処置が困難なのが実態です。
カリブ諸国、中南米を含めたラテン系の諸国は「ラテン系国民がエイズに関心を持つ日」(National Latino AIDS Awareness Day)(10月15日)(NLAAD)を定めて啓蒙に努めていますが、道半ばです。
5.CDCのHIV感染経路分類法(transmission categories)
1) 性交渉による男から男への感染(male-to-male sexual contact)(MSM)
2) 麻薬、覚醒剤の注射針経路(injection-drug use) (IDU)
3) 1と2の混合(MSM with IDU)
4) 感染者または発症者(エイズ)との異性間性交渉(high-risk heterosexual contact )
5) その他。血液製剤など(例として輸血、移植など外科手術に伴うもの)
6.ヒスパニック系居住者のHIV感染経路
男性ヒスパニック系感染者の61%が性交渉による男から男への感染、17%が感染者または発症者(エイズ)との異性間性交渉、17%が麻薬、覚醒剤の注射針経路です。
女性ヒスパニック系感染者、発症者は40才から49歳のカテゴリーに最も多く、76%は感染者または発症者(エイズ)との異性間性交渉です。
次に多いのは麻薬、覚醒剤の注射針経路(IDU)の23%でした。
7.(参考)エイチ・アイ・ヴィーとエイズの相違
WHO, CDCでは多くのの統計にHIV/AIDSという表現を使用しています。
HIV(エイチ・アイ・ヴィー)(ヒト免疫不全ウィルス) (human immunodeficiency virus infection)
エイズを引き起こすウィルスを指します。
検査によりウィルス感染が確認された潜在感染者をエイチ・アイ・ヴィー感染者と呼んでいます。
潜伏期間が長いことと、発症を長期にわたり抑える医薬品の開発で、エイチ・アイ・ヴィー感染者数は
発症者数の10倍以上、数十倍とも推定されています。
AIDS(エイズ)(後天性免疫不全症候群)(acquired immunodeficiency syndrome)
エイチ・アイ・ヴィー感染者が発症した場合にエイズと呼ばれます。
医薬品により延命できるようになりましたが、副作用も強く、いまだに完璧な治療薬はありません。
8.(参考) 日本のHIV感染者
日本では新規のHIV/AIDSが毎年1,000人を超えるペースです。
20代の若者の同性愛を中心に首都圏、中京、近畿など大都市圏に発生数が多いのは米国同様です。
累積HIV/AIDSは2006年3月で7,500人くらいと発表されていますが、潜在患者はより多く、
1万人以上、またはその数倍(?)とも推測されています。
治療薬の進歩で延命が可能となっているために、先進国に較べて関心と危機感が薄れているようですが、
ウィルスの耐性や変異もあり、現在の治療薬も完璧ではありません。
多剤併用療法ですから毎日の服用の複雑さや副作用の激しさについていけない人も多数存在するようです。
HIVに感染しやすくなるといわれるクラミジアなどの性病も増加していますから油断のならない兆候があります。