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クロイツフェルト・ヤコブ病と狂牛病 米国産食用牛肉の輸入再開が決まる

2005年05月08日 16:06
医療と健康のトレンドニュース
(食の安全)(狂牛病)

牛海綿状脳症(BSE)とクロイツフェルト・ヤコブ病
米国産食用牛肉の輸入再開が決まる

2005年5月6日に政府の食品安全委員会は牛海綿状脳症(BSE)対策として行われてきた、食用牛肉の全頭検査を見直すよう答申しました。感染牛と病原体伝染経路の因果関係解明が進まぬ中で、米国産牛肉全ての輸入を規制することは、政治的にこれ以上続けられないということです。
「疑わしきは規制せず」が根拠と言われます。
今後は個人の責任による自己判断が必要となりますので、牛海綿状脳症(狂牛病)を再検証いたしました。今回の食品安全委員会の答申により2005年夏ごろ以降には輸入が部分解禁される予定です。

INDEX-----------------------------------------


  1. 米国産牛肉と米国産ゼラチンに依存していた日本の市場
  2. 膨大な費用となる米国の牛海綿状脳症(BSE)検査
  3. クロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt and Jakob Desease)(CJD)
  4. 牛海綿状脳症(Bovine spongiform encephalopathy, BSE)(狂牛病)
  5. 日本の牛海綿状脳症(BSE)の現状とクロイツフェルト・ヤコブ病
  6. 伝達性海綿状脳症(プリオン病)(TSE)
  7. クールー(Kuru)とクールー斑  
  8. 狂牛病の検査とホースラディッシュの酵素ペルオキシダーゼ
  9. エライザ(イライザ)(ELISA)固相酵素免疫検定法
  10. ホースラディッシュ(horseradish)
  11. ホースラディッシュの成分
  12. モリンガ(Moringa)(わさびの木)


1. 米国産牛肉と米国産ゼラチンに依存していた日本の市場
米国の肉牛飼育数はテキサス州を筆頭に9,740万頭(2001年)にもなり、年間牛肉生産量は日本の約18倍の1,200万トン(2003年)です。
米国での狂牛病(BSE)発生は、米国産牛肉や牛由来ゼラチンの輸入に頼っていた日本の関連市場を揺るがし、深刻な打撃を与えました。米国産牛肉が日本の牛肉輸入総量の約40数%を占めていたからです。また米国産牛由来ゼラチンには製菓産業を始め、ゼラチン・カプセルを使用する製薬業界、健康食品業界などが大きく依存していました。

日本の対米牛肉輸入量は自由化1年目の1991年以来増加を続けていました。BSE発生による輸入禁止前には、対日輸出が米国の総輸出量の約4分の1、28万トン近くにもなり、2003年後半には家畜農家保護のセーフガード(関税38.5%から50%)の適用が検討されているほどでした。

2. 膨大な費用となる米国の牛海綿状脳症(BSE)検査
これまでは米国が無条件の対日輸出再開を迫る中で、全頭BSE検査を主張する日本が拒絶する展開となっていました。
議論となっている米国のBSE検査の問題点は、検査費用の負担額に尽きます。
日本では過去2001年のBSE発生以来、食用牛全頭のプリオン検査を実施しています。他国に較べて、生産量が極端に少ないため、管理しやすいともいえます。一方、米国の牛肉輸出量は世界第2位(1位はオーストラリアの142.5万トン)の規模であり、肉牛1000万頭以上に相当する116万トンにもなりますから、全頭検査の実施は不可能との見識です。一件当たり5千円以上と言われる、第1次のスクリーニングテストの費用は、この輸出分だけでも500億円以上の膨大なものになります。

3. クロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt and Jakob Desease)(CJD)
ノーベル賞学者のCreutzfeldt(1920)とJakob(1921)が発見したことにより命名されました。日本の国内患者累計は1985年以降1998年までに908人が報告され、1999年4月から4類感染症に指定されています。クロイツフェルト・ヤコブ病と牛海綿状脳症(BSE)は、プリオンと名づけられた異常タンパク質を原因とするプリオン病の一つで、イギリスにおいて人間のBSEが発見された当初は、BSEをクロイツフェルト・ヤコブ病とも呼んでいました。プリオン病とも呼ばれるのは、プリオンと命名された蛋白が正常な蛋白を変換させながら、脳内の中枢神経に蓄積し、脳が海綿状となり、神経系が犯されて、死に至らせる感染性疾患だからです。

4. 牛海綿状脳症(Bovine spongiform encephalopathy, BSE) (狂牛病)
狂牛病(Mad Cow Desease) と通称される。1986年11月に英国で発見された牛のプリオン病で、これまでにEU中心に世界で130万頭(この数字は噂であり、農水省統計では約18万頭)の牛が発病したといわれています。感染の原因として羊のプリオン病であるスクレイピ-に感染した羊肉、羊骨を飼料として用いたことが挙げられています。日本国内でも2001年9月に初めて狂牛病の存在が確認されました。平成13年度10月18日―平成15年7月14日までの統計では、症状を呈する牛(疑い例)が6,200頭に上りましたが、検査対象210万頭のうち陽性牛は約百頭、本物のBSEは6頭でした。日本での感染の原因はBSEに感染した牛の骨粉を飼料としたためと言われています。EUでは減少傾向にあるとはいえ、いまだに毎年2000件前後の新規発生が報告されています。

5. 日本の牛海綿状脳症(BSE)の現状とクロイツフェルト・ヤコブ病
最近の日本では牛海綿状脳症(BSE)発生の新規報告はまれで、人の発症も英国帰りといわれる1名の死亡が確認されただけです。ところがクロイツフェルト・ヤコブ病疑い例は2000年102人、2001年130人、2002年度145人が報告され、累計1200人にもなっています。クロイツフェルト・ヤコブ病とBSEとは似た症状を示しますが、異なる疾病といわれて、米国CDCはBSEからの感染を新変異性クロイツフェルト・ヤコブ病(a new variant of CJD、vCJD)と呼んで区別しています。しかしながらクロイツフェルト・ヤコブ病とvCJD 、BSEなど他のプリオン病との関連は依然解明されていません。


6. 伝達性海綿状脳症(プリオン病)(TSE)
プリオン病はクールー、ヤコブ病、新変異性ヤコブ病、牛海綿状脳症(BSE)、スクレイピーなどプリオン蛋白(proteinaceous infectious particle, PRION)の異常を起因とする疾病の総称で、専門的には伝達性海綿状脳症(Transmissible Spongiform Encephalopathies, TSE)とよばれます。相互関連と詳細なメカニズムは解っておりません。プリオンは1997年のノーベル賞受賞学者スタンリー・プルシナー博士 (Stanley B. Prusiner) 教授により1996年8月にScientific American に発表された論文「プリオン病と牛海綿状脳症の危機」(Prion Diseases and the BSE Crisis)で使用された言葉として著名です。253個のアミノ酸残基で構成されるプリオン蛋白は、タンパク質分解酵素が働かないために脳に蓄積して、正常構造のプリオン蛋白の立体構造を変え、長い潜伏期を経てプリオン病を発病させます。
伝達性海綿状脳症(プリオン病)にはその他にも、Transmissible mink encephalopathy (ミンク)、 Chronic wasting disease (鹿類)、Feline spongiform encephalopathy (猫類)、Exotic ungulate encephalopathy (アフリカのカモシカなど) 、Gerstmann-Straussler-Scheinker syndrome(ゲルトマン・ストロイスラー・シャインカー病)、Fatal familial insomnia(致死性家族性不眠症)などいくつかのヴァリエーションが知られ、人畜(獣)共通感染症ではないかとして、専門家の関心が高くなっています。最近では免疫細胞のBリンパ球(病原体抗原に応じた抗体を産生する細胞)がプリオンを運び、感染するというスイスでの研究があり、Bリンパ球を除去すれば血液感染するプリオン病を防ぎ、クロイツフェルト・ヤコブ病治療にも役立つと期待されています。

7. クールー(Kuru)とクールー斑 1957年にガイデュシェック(Carleton Gajdusek)とジガ(Vincent Zigas)らにより、パプアニューギニア高地の人食い人種フォア族に、死亡率の高い脳神経障害の存在が紹介され、クールーと名づけられました。ガイデュシェックらは、1966年には、このクールーが遺伝性疾患ではなく、スクレイピ-やクロイツフェルト・ヤコプ病と関連するプリオン病であることを解明し、フォア族が人食いの習慣をやめることでクールーを撲滅できることを立証しました。ガイデュシェック(Gajdusek)らには、このクールーとクロイツフェルト・ヤコプ病の病因に関する一連の研究成果によって1976年にノーベル賞が授与されています。

伝達性海綿状脳症(プリオン病)に感染した脳には、アミロイドが沈着した特徴的なアミロイド斑が現れますが、これをクールー斑と呼んでいます。クロイツフェルト・ヤコブ病には現れませんが、BSEで感染する新変異性クロイツフェルト・ヤコブ病には現れるといわれ、区別の根拠とされたりします。

8. 狂牛病の検査とホースラディッシュの酵素ペルオキシダーゼ
プリオンに異常が見られる牛海綿状脳症の第一次スクリーニング検査(陽性、陰性の検査)には、比較的簡便で、精度の高いエライザ(イライザ)法、ELISA)法が通常適用されます。エライザ法の検査方法では、あらかじめ用意した抗体に牛の検体を接触させて、異常プリオン抗原の反応と抗原量を測定します。
抗体には反応を容易に検出できるよう、色素反応を起こす酵素を添加しますが、この酵素に、ホースラディッシュのペルオキシダーゼ(peroxidase)が選択されることが多く、ホースラディッシュ(horseradish)が注目を浴びています。

9. エライザ(イライザ)法(ELISA)固相酵素免疫検定法
エライザ(ELISA)はemzyme linked immuno sorvent assayの省略です。
BSE、HIV(エイズ・ウィルス)、アレルギーなどの抗原の所在を確認する検査方法です。大掛かりな装置や高度な技術が不要なため、1次検査に多用されています。
標識酵素として、選択されることの多いのが、西洋ワサビのペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)です。標識酵素には、この他、アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)、βガラクトシダーゼ(β-galactosidase)などが使用されることもあります。

エライザ(イライザ)法の実施技術はいくつかありますが、サンドイッチ法(sandwich ELISAまたはdouble antibody ELISA)と呼ばれる方法の確度が高いといわれます。
この分野ではアベンティス ベーリング社(Aventis Boehring)が、プリオンの発見でノーベル医学賞を受賞したスタンリー・プルシナー博士( Stanley B. Prusiner)と、1998年に共同開発した構造依存性免疫試験(ダイレクトCDI 、Conformation Dependent Immunoassay)が著名です。最近はダイレクトCDIを進化させた、サンドウイッチ・コンフォメーション依存型免疫法を発表して、検査業界をリードしています。

10. ホースラディッシュ(horseradish)

学名Armoracia rusticana アブラナ科Cruciferae セイヨウワサビ属Armoracia
別名 ワサビダイコン、西洋ワサビ、レホール(仏、Raifort)
主要産地 北ヨーロッパ、中国、北米(California, New Jersey, Virginia, Illinois ,Wisconsin)

ホースラディッシュ(西洋わさび)と言えば、一般的にはローストビーフを連想すると思います。ローストビーフ料理にはクレソンと並んで無くてはならないものです。この西洋わさびの根に含まれる酵素、ペルオキシダーゼが、牛海綿状脳症(BSE)検査に活躍していることは専門家以外には、あまり知られていませんでした。
西洋わさびはギリシャ原産といわれ、地中海地方では3000年の歴史があります。古くから北ヨーロッパ、東欧では、その強い抗菌、殺菌作用が、肉や魚の腐敗防止、食中毒防止、疾病治療に役立っていたようです。
16世紀にはハーブとして医学者(1597 John Gerard、イギリス)に認知され、抗炎症、鎮痛、抗アレルギー、殺菌、抗腫瘍などに、幅広く使用されてきました。
ホースラディッシュを食用として、世界に普及させたのは米国の食品会社、ハインツ社(H. J. Heinz Company)のヘンリー・ハインツ(Henry J. Heinz)と言われ、米国は世界的な生産地となっています。
西洋わさびは、日本のわさび(ワサビ、山葵。学名Wasabia japonica (Miq) Matsum)と同じアブラナ科に属し、その成分も類似しています。

葉が縮れた一般的な種類と、病気に強いフラットな葉の種類(特にボヘミアン・タイプBohemian typeと呼ばれる)がある。葉が縮れたタイプは香りが強く、高級となります。元来多年草ですが、毎年新規に栽培するケースが多いようです。
ホースは馬と言うより、辛い(ハーシュ、ハース、harsh)が訛った言葉といわれます。ラディッシュはラテン語の根(Radix)を語源とする大根のこと。(ドイツ語で海の大根を意味するmeerrettichが語源と言う説もあります)。


11. ホースラディッシュ(horseradish)の成分
ホースラディッシュ(西洋わさび)は日本わさびと同様に、辛味の成分はイソチオシアン酸アリル(Allyl isothiocyanate, C4H5NS)です。含有する成分の配糖体、シニグリン(sinigrin)が、わさびを細分したり、摩り下ろす事により、酵素ミロシナーゼ(myrosinase)によって分解され、イソチオシアン酸アリルになります。イソチオシアン酸アリル(Allyl isothiocyanate, C4H5NS)は、前述のペルオキシダーゼ酵素と共に、薬用の有効成分といわれますが、多量に使用されると毒性が強い成分です。イソチオシアン酸アリルには、農芸用などに化学合成品もあります。
西洋わさびの加工品パウダーは、中国などから日本に輸入されて、日本わさびの代用としての粉わさび、練りわさびにもなります。


12. モリンガ(Moringa)(わさびの木)
学名, Moringa pterygosperma C. F. Gaertin(過去にはMoringa oleifera Lamと呼ばれました)ワサビの木科(Moringaceae family)
ホースラディッシュの木(和名、わさびの木)といわれインド、フィリピンや東南アジアで食用とされる、モリンガ(Moringa)はわさびの近似種に挙げられますが、ファミリー(科)が異なります。
インド原産の樹木。3-10メートルの高さに生育する。
産地: インド北西部、スリランカ、アフリカ、アラビア半島、マダガスカル島-----インド、スリランカ、東南アジアでは柔らかい葉、茎、花、実などが、カレー、スープ、ピクルス(実)などに使用される。わさび類の香りがある。
また、わさび類と同様に、根、樹皮が抗菌、抗炎症作用の薬として珍重される。
毒性が指摘されることがあるが、わさび同様、イソチオシアン酸アリルが含有されているため(?)と思われる。

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