健康ひろば(旧・健康と食品の解説)
キノコよもやま話:第二話:食用キノコ(茸)と毒きのこ
- 食用になるキノコは約300種類
- .毒キノコの識別は難しい
- キノコ毒素は神経伝達物質を阻害する
- 食べて美味しい毒キノコ
- 日本のキノコ中毒の特徴
日本ではきのこ狩りが秋の野山での楽しみとして定着しています。
特に初秋に雨が多い年は、沢山の種類が出現してマニアを喜ばせますが、欧米でもキノコは伝統的な食材として普及しており、きのこ狩り(Mushroom hunting)をする人が珍しくありません。
北欧、東欧などにはキノコ狩りで20種類以上の天然きのこ類を食用とする国があります。
中国、北欧、東欧などには、毒キノコを脱毒して常食する文化もありますから、日本よりは天然きのこ先進国。
欧米ではキノコの愛らしい姿が、アニメやイラストで多用され、毒キノコのベニテングタケ(Amanita muscaria)は特に人気者です。
キノコ毒素の応用研究も医療分野などで進んでおり、非常に身近な食品となっています。
きのこは世界に10,000種類以上は確認されているといわれますが、日本には推定2000種前後が自生し、食用になるものは約300種、市場価値があるものは栽培種を含めて約20種です。
マツタケのように栽培が困難なものを除き、しいたけ(椎茸)、ナメコ、しめじ、まいたけ(舞茸)、エリンギなど、美味しいキノコはほとんどが栽培種となっていますが、ナメコ、シメジ、舞茸などは天然物の味覚にはかないません。秋はきのこ狩りマニア待望の季節ですが、毒キノコ中毒の危険性も高くなります。
きのこ狩りにおいて、毒キノコを確認するのは簡単ではありません。色が毒々しい、縦に裂けないキノコは毒キノコ、などと間違った「言い伝え」が多々ありますが、毒キノコを外見で識別する法則はありません。
日本の毒キノコは約30種類、欧米では100-150種類ほどが確認されています。
食用の品種に近い(食べることが出来そうな)形態や味覚をもつ毒キノコは、きのこ全体から見れば1%くらいといわれ、決して多くありません。米国のデータですが、きのこ中毒は11年間で8万件以上、死亡例の報告のあったキノコは14種類。猛毒といわれる致死率の高いキノコはテングダケ属(Amanita)以外には僅かです。
きのこ先進国である中国やヨーロッパのデータは不明ですが、米国では各種毒素による事故が約220万件報告された中で、キノコの事故は約9000件(1999年)、死亡者は6人ですから、致死率は低いといえます。
毒キノコの毒素には6-8種類ぐらいが分類されています。毒キノコは通常、複数の毒素を持っており、毒素類は、しびれ、痙攣など筋肉の動きに支障を与えること、幻覚症状を与えること、嘔吐、激しい下痢など消化器官に影響を与えることなどが知られています。ただし、アマトキシン以外は、一般的な摂食量で死ぬことは稀です。
きのこの毒素には神経ペプチドとも呼ばれる神経伝達物質を阻害するものがあります。
発見されている神経伝達物質は10種類くらいで、まだまだ未知の物質多数の存在が予測されています。したがって阻害作用のメカニズムの全てが解明されているわけではありません。神経伝達物質で発見されている代表的なものは、アセチルコリン,セロトニン,γ-アミノ酪酸(GABA)、ノルアドレナリン,ド−パミン,グリシン,グルタミン酸、エンケファリン,エンドルフィンなどです。
食べて美味しいと言われる毒キノコは、世界に広く分布するシャグマアミガサタケ(Gyromitra esculenta)、テングダケ(Amanita pantherina)、ベニテングダケ(Amanita muscaria)など、一部のキノコに限られるそうです(試したことはありません)。不味いキノコは食べませんから事故を起こすキノコは限定されます。
テングダケ、ベニテングダケの非常に優れたうまみの味覚はL-イボテン酸(ibotenic acid)、L-トリコロミン酸(tricholomic acid)が多く含まれるからともいわれます。L-イボテン酸、L-トリコロミン酸はうまみの素となり、食用のキノコ類にも微量に含まれることが多いという成分ですが、毒素として分類されています。
海外同様に、日本のきのこ狩でおきる事故の品種は限られており、共通性があります。日本では北米に多い、猛毒のテングダケ属(アマニータ)(Amanita)の事故はあまりありません。
アマニータのドクツルタケは通常サイズを1本も食すれば致死量(アマトキシン20-50g)となることがありますが、日本で多いツキヨタケやクサウラベニタケの事故はよほどの量を食さなければ致命的にはなりません。(㊟食用なることが少ないはずですが、例外として近年話題の猛毒カエンタケは3g位の少量で致命的な中毒になることがあります)
ただし、キノコの毒素の種類やその含有量は、同種キノコでも、産地や個体間で大きなばらつきがありますから、キノコの種類に猛毒、弱毒の定義を安易にすることは危険です。また日本にはデータがありませんが、米国では幼児、子供の誤食による事故が圧倒的に多いようです。下記は事故が報告される代表的な品種です。
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クサウラベニタケ
a)「しいたけ」に似たツキヨタケ ツキヨタケ:キシメジ科、ツキヨタケ属(Lampteromyces japonicus.)
b)「まいたけ」に似たクサウラベニタケ クサウラベニタケ:イッポンシメジ科、イッポンシメジ属 (Entoloma rhodopolium)
c)「シメジ、ナラタケ、ハツタケ」などに似たドクササコ ドクササコ(毒笹子)(ヤブシメジ):キシメジ科、カヤタケ属(Clitocybe acromelalga )
d)「クリタケ」に似たニガクリタケ ニガクリタケ:モエギタケ科、クリタケ属(Naematoloma fasciaulare)
英語通称サルファー・タフト(Sulphur tuft)
e)ニワタケ(Paxillus atrotomentosus)。
ヒダハタケ科の毒キノコであるヒダハタケ近似種です。
東欧などで、平均10件位/年、中毒が発生している
ヒダハタケ科のヒダハタケ(Paxillus involutus)(Brown roll-rim)は、
10年間で4-5人の死者が報告されています。
毒素は特定されていませんが、
オレラニン(Orellanine)中毒のような症状を呈し、
意識不明となります。
f)スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)
2004年秋に新潟、秋田などで16人の死亡事故が報告されました。
(20041022-1504-156参照)
常食していた野生キノコが突然毒キノコに変わる事例です。
何らかの変異で毒素が強力化したと推測されています。
通常安全といわれる野生キノコも、
大量摂食は避けることが賢明な選択肢かもしれません。
魚毒にもこのような事例が多々あります。
g)カエンタケ(カエンダケ:火炎茸)(Hypocrea cornu-damae)
東日本以南では時々みられるそうですが、数年前より、毒性が話題になりはじめた猛毒キノコ。
他の食用キノコ類には近似しない棒状、ヤマトイモ状の子実体が群生します。
2011年8月頃より滋賀県内で続けて発見され、中毒患者が発生したことで話題となっています。最近の気候の変異により菌の拡大が予想されるために警戒したほうがよさそうです。
一般的なキノコ毒と異なり、食品類などに発見されるカビ毒のマイコトキシン(Mycotoxin )類が含有されます。マイコトキシンは数百種類ありますが、アフラトキシンなどに代表される猛毒が知られています。
比較的希少種ですが山林に菌が好む枯れたブナ類が増えて、蔓延しだしたといわれる。
中米、東南アジアに近似種がみられる。
固い食感が良くない(食べたことがありません)といわれ、食べる人が滅多にいないため問題が少なかったのですが、中毒者が発生したことから話題となっています。
生薬になる冬虫夏草に類似することや、食用になるといわれるベニナギナタタケ (Clavulinopsis miyabeana)に類似することから事故が起きるのではといわれます。
食べる人は少ないといわれますが、食べれば下痢、嘔吐など消化器系疾患、液状体(汁)に触れるだけでかぶれ、発疹が起きます。

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