健康ひろば(旧・健康と食品の解説)
DHA/EPA(オメガ3)のすべて DHA、EPA、オメガ3とは?(2008年5月改訂)
2008年5月4日改訂
- 脂肪と脂質をもっと詳しく知ろう
- オメガ3(EPA/DHA)は血管の内外で機能します
- シス型不飽和脂肪酸とトランス型不飽和脂肪酸
- トランス脂肪酸の原因となる焼き魚と食用油、食用油脂
- オメガ3(DHA/EPA、α―リノレイン酸)の過酸化脂質とトランス脂肪酸
- 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランス(脂肪酸バランス)
- オメガ3、オメガ6、オメガ9 名前の由来
- 不飽和脂肪酸の分子構造式
- 多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸
- DHAとEPAの違い
- オメガ3が関与する脂肪酸代謝物
- 酸素添加酵素シクロオキシゲナ−ゼ(COXと略す)によって、各種のプロスタグランディン(PGと略す)やトロンボキサン(TXと略す)が生成される代謝系。この代謝回路は炎症と血流に関連する重要な回路であり、心血管対策薬、鎮痛剤等はこの代謝回路に働くように設計されています。
- 酸素添加酵素リポキシゲナ−ゼによって5−ヒドロ_ペルオキシ_イコサ_テトラエン(HPETEと略す)、ロイコトリエン(LTと略す)、リポキシンなど過酸化脂質が生成される代謝系に分けられます。
- トロンボキサンA2(TXA2)(血管を収縮して血小板を凝固させる。血栓によって血流を止める作用が極めて強い)
- プロスタサイクリン(PGI2と略す。血小板を安定化させて、血管を弛緩する)
- ロイコトリエン(LT)類
特にロイコトリエンはヒスタミンに較べ数千から10000倍もの活性作用がある物質といわれます。
- オメガ3がアレルギーを抑制する
- 血管の異常収縮とオメガ3
脂肪といえば、悪いイメージをお持ちかもしれませんが、脂肪はエネルギー源となるばかりでなく、性ホルモンや細胞膜の大部分を形成する原料として生体に必須な重要栄養素です。
人間の脳の60%をも脂質が占めることから、1996年頃より、脳神経、視神経や脳の発達と脂肪酸の関連研究発表が相次ぎ、特に脂肪酸の中でも視力、記憶力など脳視神経に重要な働きを持つオメガ3が話題になってきました。
近年の遺伝子学、分子細胞学では、たんぱく質研究の急進展とともに、炎 症、アレルギーとオメガ3の重要な関連も、より詳細に報告されるようになりました。(栄養解説「脂質とは」を参照してください)
オメガ3(EPA/DHA)は血液をサラサラにするという表現があります。
これは血中で脂質を運ぶリポたんぱく質や血管内皮細胞膜の脂肪酸バランスをオメガ3が整え、内皮細胞膜機能が正常に働くようにするからです。細胞膜は脂質が多いために脂肪酸バランスが悪いと栄養素などが出入りできなくなります。内皮細胞の機能低下、死亡はアテロームや動脈硬化の原因となります。オメガ3には血管を拡張、収縮させる血管平滑筋に作用する機能も解明されています。
このようなオメガ3の機能は高血糖、高脂血症、高血圧、視神経障害、脳神経障害、精神障害、月経困難症、関節 障害、皮膚障害、アレルギー、花粉症、前立腺障害、過敏性腸障害など数多くの疾病予防、改善に役立ちます。
オメガ3のEPA エチルエステルは医薬品として 動脈硬化症、高脂血症の治療に使用されます。
脂肪酸を構成する炭素の二重結合にはシス型とトランス型があり、動植物に存在する不飽和脂肪酸中の二重結合は全てシス型です。シス型の分子構造は不安定で、水素が結合することにより、トランス型脂肪酸へと変わります。反対に飽和脂肪酸はトランス型と同様に安定した飽和状態ですからトランス型脂肪酸には変換はされません。
トランス型脂肪酸に変換されると分子構造が安定し、変質や酸化が、しにくい特徴があります。パン、クッキーなどの形状を維持する利点もありますので、不飽和脂肪酸の植物性食用油(シス型脂肪酸)は、水素を部分添加して意図的にトランス脂肪酸を生じさせた商品がほとんどです(日本、アジア諸国などの法令で禁止していない国)。
ところが、2000年ごろよりトランス型脂肪酸はLDLコレステロール(悪玉とよばれているもの)を過酸化させ、動脈硬化を誘引する最大の原因となることが明らかになり、欧米の食品業界は大混乱に陥りました。(栄養解説の「トランス脂肪酸」を参照)
米国ではトランス型のオメガ3サプリメントで動脈硬化になるという笑い話のような事実が指摘されていますから、オメガ3脂肪酸の摂食はトランス脂肪酸を排除しなければ意味がありません。
魚類や植物性油の不飽和脂肪酸で注意すべきは高温調理などで生ずるトランス脂肪酸です。一般の植物性食用油による魚のフライでは多量のトランス型脂肪酸が生じます。これは植物油そのものが製造過程でトランス脂肪酸を生じているからで、加熱魚類から生じるトランス脂肪酸と相乗して過大になります。
低温抽出の米油、菜種油や生絞りのオリーブ・オイルを選択した場合でも170−200℃以上での調理は不飽和脂肪酸がトランス型不飽和脂肪酸となります。
トランス型脂肪酸や過酸化脂質は病気や老化の原因である活性酸素を生じさせます。なかでも最も悪玉といわれる ヒドロキシラジカルを増加させ、DNA損傷などもおこしてガンやアトピーの原因ともなります。
植物性油脂を抽出したマーガリンが心臓冠動脈疾患、ガンの原因といわれるのはトランス型脂肪酸のことを指しています。
過酸化脂肪酸、トランス脂肪酸の害はビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、また醗酵大豆を充分摂取することで軽減できることが報告されていますが、シス型のオメガ3脂肪酸摂食量を増やすことで、大きく改善できます。
オメガ3はDHA/EPAとして、いわし、さば等の青魚、サーモンの魚油に多く含まれ、植物性ではα―リノレイン酸としてフラックスオイル(亜麻仁油)、しそ油、 ごま油、胡桃油等に含まれます。
オメガ3含有食品は健康に最も重要な食品のひとつといえますが、酸化させない工夫や、トランス脂肪酸を排除する工夫が必要です。不飽和脂肪酸は生では酸化しやすく、調理ではトランス脂肪酸が出来やすいのが欠点です。新鮮でない青魚などが油臭くなるのは酸化が原因です。過酸化脂質防止には新鮮な魚を選ぶことが最も重要です。
日本の大豆や菜種の植物性食用油、油脂はトランス脂肪酸が排除されていませんが、トランス脂肪酸は過酸化脂質と共に動脈硬化の最大原因です。
脂肪酸の摂取目安量の比率は飽和1、一価1.5、多価1が理想といわれ、多価のなかで はオメガ3が1に対してオメガ6は2から4の比率が推奨されています。脳心臓血管病予防の臨床や実験のデータはDHA,EPAの投与量が1000mg−1500mgから得られていますので、このあたりが有効量と推測されています。一般的には魚100gの摂取で1日の必要量が満たされるといわれます。脳卒中などの発症後に使用される量はこれよりはるかに多量ですが、投与は医師の分野です。(脂肪酸のバランスについては「美肌作りは美しい細胞作り第一話」を参照してください)
オメガ3とは、DHA(docosahexaenoic acid)、EPA(eicosapentaenoic acid)、α―リノレイン酸の総称です。オメガ3は分子構造からの分類名で、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)は脂肪酸の分類固有名詞です。
脂肪酸は分子構造の炭素が鎖状に並んでいます。(参考:飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸の炭素鎖)
便宜上、一方の端(メチル基 CH3) をオメガエンド、もう一方(カルボキシル基 COOH)をデルタエンドと呼んでいま す。
ところどころに炭素が重なって結合していますが、オメガエンドから数えて炭素の二重結合の始まりが三番目と四番目におきている脂肪酸をオメガ3と呼んでいます。同様に六番目と七番目はオメガ6です。
数字はオメガエンドから数えた二重結合の存在位置ですから、研究者達はn-3、n-6(オメガ6)、n-9(オメガ9)と呼ぶこともあります。
オメガ3(n-3)の分子構造式
オメガエンドから数えて炭素の二重結合の始まりが三番目と四番目に起きています
オメガ3(n-3) 多価不飽和脂肪酸

オメガ6(n-6)の分子構造式
オメガエンドから数えて炭素の二重結合の始まりが六番目と七番目に起きています
オメガ6(n-6) 多価不飽和脂肪酸

オメガ9(n-9)の分子構造式
オメガエンドから数えて炭素の二重結合の始まりが九番目と十番目に起きています
オメガ9(n-9) 一価不飽和脂肪酸

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炭素
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酸素
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水素

図を見てください。オメガ3は炭素間の二重結合が三番目、四番目だけでなく、六番目、七番目や九番目、十番目の間にも起きています。 またオメガ6も六番目、七番目と九番目、十番目の間に起きていることが解ります。このように複数炭素の二重結合が起きている脂肪酸を『多価不飽和脂肪酸』と呼び、オメガ9のように炭素の二重結合が一箇所だけ起きている脂肪酸を『一価不飽和脂肪酸』と呼んでいます。
EPAとDHAは近似種類で体内ではEPAからDHAがつくられます(DHAからEPAのケースも あります)。この区別は炭素の二重結合の全体数が異なることで区別されています。双方ともに血液を凝固させにくくさせる作用がありますが、特にEPAの血液の流れを改善し、血液の粘度をさげて脳内血管の血栓を防ぐ作用、脳内血流のスムースな循環や、過労や加齢による 視力の低下を防ぐ作用が注目されています。 高脂血防止の医薬品はEPAが99%です。
α-リノレン酸は体内でDHAやEPAに合成されます。
a. エイコサノイド
脂肪酸から作られる「エイコサノイド」は「プロスタグランディン」「プロスタサイクリン」「トロンボキサン」「ロイコトリエン」という4つの生体調整ホルモン物質の総称ですが、摂取 している脂肪酸の種類によって「エイコサノイド」のタイプは異なります。
b. プロスタグランディン
プロスタグランディンは1958年にひつじの精嚢から分離され、研究が進展しました。医学界では重要な発見であり、発見者はノーベル賞を受賞しています。プロスタグランディンには幾つもの種類がありますが、いずれも脂肪酸から作り出されるものです。大別して、善玉といわれるガンマリノレン酸(GLAと略す)からのプロスタグランディン1と、オメガ3と呼ばれるEPAエイコサペンタエンから作り出されるプロスタグランディン3があります。
悪玉といわれるアラキドン酸(下記解説を参照してください)からのプロスタグランディン2があります。現在PGにはその化学構造の違いからAからJ迄命名されていますが、最初に見つかったのはEとFです。
PGE1やPGE2の様に番号が振られていますが、この番号はその化合物の二重結合の数を表しています。
c. ガンマリノレン酸
ガンマリノレン酸は牛乳やバター、オートミールに含有されますが、リノール酸からも体内で合成することができます。しかしながらアルコールやトランス型脂肪酸等の過剰摂取、ストレス過多は合成を妨害します。またガンマリノレン酸は身体がインスリン過多の状態(大食い、高糖分などでの血糖値を高くする環境)にあると、プロスタグランディン2を作るアラキドン酸へと変化してしまいます。
d. アラキドン酸
アラキドン酸(C20H32O2分子量304.47)はリノール油から作られるリノール酸(C18H32O2分子量280.45)が変換したものです。
炭素鎖構造からはオメガ6とよばれています。アラキドン酸の代謝物は100近くあり、構造が少しずつ変化して善玉、悪玉のどちらにもなる強力な作用物質です。
細胞の細胞膜リン脂質からアラキドン酸が遊離されると、細胞の種類ごとに特定の酵素が働いて、種類の異なるアラキドン酸代謝物へ変換されます。
大別して、
花粉症の場合はT細胞(免疫細胞)が刺激を受けて、B細胞よりプロスタノイド(下記)が合成される代謝経路です。
e. プロスタノイド
プロスタノイドとはプロスタグランディン(PG)類縁体のことで、いくつかの種類があります。
f. ロイコトリエン、トロンボキサン
エイコサノイの中でもロイコトリエン(LT)、トロンボキサン (TX)という物質 が話題となっています。これはオメガ6系のアラキドン酸などから動物体内で合成さ れる一群の生理活性物質で、その合成は、主として、免疫系のマスト細胞、好中球、好塩基性 白血球で行われます。
ロイコトリエン(LT)、トロンボキサン(TX)ともに幾つかの 種類に分けられますが、基となる脂肪酸の種類によって善玉作用をもつもの、悪玉作 用を持つものがあります。このなかでもアラキドン酸から合成されるトロンボキサン A2 (TXA2) は血小板凝集作用、血管平滑筋の収縮作用、気管支平滑筋の収縮作用、 動脈の収縮作用などの強力な生理活性を示し、特に TXA2 は血栓症、狭心症、気管支 喘息などの原因の一つであると考えられます。
アレルギー体質はロイコトリエンやヒスタミンを大量に放出しますが、ロイコトリエ ンはヒスタミンに較べ数千から10000倍もの活性作用がある物質といわれます。ロイ コトリエンは喘息の患者の血中にみられます。最近ではロイコトリエンが喘息の原因 物質と特定されて、オノン等この作用を抑制する薬品が開発されていますが、ロイコ トリエンの発生体質を決定づけているのが各種の脂肪酸バランスだということもわかってきました。
ロイコトリエン発生を抑制し、除去するのにはオメガ3が役立ちます。リノール酸から作られるタイプ2型のエイコサノイドとα-リノレン酸から作ら れるタイプ3型のエイコサノイドはその作用を抑制しあう関係にあるため、アトピー
性皮膚炎や喘息、アレルギー体質の場合は、α-リノール酸とオメガ3のバランスが重要です。
植物油のリノール酸等のオメガ6は日常の食生活で充分とれるため、過剰に摂取する 人がほとんどといわれます。この原因のひとつには「リノール酸はコレステロールを低下させ、体に良いという認識があるようです。(一時的に低下するだけということが すでに解明されています)。また過剰のリノール酸の摂取は発癌を促進します。
オメガ3(DHA、EPA)にはある種のプロスタグランディンに働き、抗炎症作用や過酸化LDL(悪玉コレステロール)からの動脈硬化を防ぐ作用が確認されていますが、作用はそればかりではありません。EPAにはカルシューム拮抗剤などの効果がない、血管平滑筋の異常収縮を防止するという研究と実績があります。高血圧や心血管病の可能性を持つ方には必須の栄養源といえます。
くも膜下出血などを起こした人が、手術後に一旦回復した後、血管痙攣(Spasm)や血管収縮を起こし、急死することがあります。この原因は血管平滑筋の異常収縮によるものとみられており、通常処方されるカルシューム拮抗剤などの効果がありません。
カルシューム非依存性といわれる血管平滑筋の異常収縮の解明と原因物質の同定の研究は世界に注目されていますが、イワシのEPA、特に生のカタクチイワシの脂肪分になどに、この異常収縮を防ぐ画期的な作用があることが確認されています。

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