世界の健康ニュース解説
スズメバチによるアナフィラキシー・ショック
これは2004年に書かれた記事の改訂版ですが、データは改定されていません。
- 住宅地に多くなったスズメバチによる被害
- 蜂類攻撃の予防法
- アナフィラキシー・ショック(Anaphylaxis)
- エピペンとアナペン
- スズメバチの種類
- キイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera Cameron)
日本では最も多い種類で、スズメバチ類の約80%を占めます。攻撃的でスズメバチ類では最大の巣を土中、樹木、住宅の屋根裏、軒先、納屋などに造ります。幼虫や蛹を食用とする地方もあります。体長は働き蜂で24mmくらいまでです。 - ケブカスズメバチ(Vespa simillima simillima)
キイロスズメバチの亜種。生態は類似。 - オオスズメバチ(Vespa mandarinia)
その名のとおり、最も大型種。攻撃性が強く、体長は働き蜂で27-45mm、女王蜂は55mmにもなります。大スズメバチは土中に巣作りするため山間部に多い。100kmくらいが行動範囲となるといわれ、住宅地にも出現します。オオスズメバチ、キイロスズメバチはミツバチの天敵として、時には巣を全滅させてしまうため、養蜂家は駆除に苦労しています。 - ヒメスズメバチ(Vespa ducalis)
土中、住宅地などに巣を造ります。固体はスズメバチに次いで大きい(働き蜂で24-37mm)が、巣は小さい。攻撃性は強くありません。 - モンスズメバチ(Vespa crabro)
キイロスズメバチに生態が似ています。住宅地にも巣作りをします。攻撃性が強い中型種(働き蜂で22-28mm)ですが、比較的稀です。 - コガタスズメバチ(Vespa analis Fabricius)
住宅地に比較的ありふれている種類ですが、攻撃性は弱いといわれます。中型種(働き蜂で22-28mm)。 - チャイロスズメバチ (Vespa dybowskii)
キイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取り、巣作りをします。やや小型(働き蜂で24mmくらいまで)。希少種。 - ツマグロスズメバチ(Vespa ducalis)
小型(働き蜂で22mmくらい)南方系で、日本では宮古島以南、八重山諸島で見られるようです。黄色のみの体色に黒色の尾部が美しい。スリランカなどでは食用とされます。 - その他の危険な蜂類
- スズメバチ科(Vespidae)クロスズメバチ属(Vespula)
クロスズメバチ(Vespula flaviceps lewisii ,Cameron)は温和な小型種(働き蜂で10-12mm)で黒色。スズメバチという名がついていますが、他の種類とは形体が、かなり異なります。蜂の蛹や幼虫を食用にすると言う場合はクロスズメバチを指すことが多く、「地蜂」「へぽ」とも呼ばれ、信州の佐久や伊那地方、甲州、三河、美濃地方などでは、蛋白源として珍重されていました。シダクロスズメバチ(Vespula shidai)という亜種も多く見られます。
- スズメバチ科(Vespidae)。アシナガバチ類(Polistes)
スズメバチ属(Vespa)に較べて、形体が細身です。大きな違いは巣に外皮が無く、巣房(honey comb)が露出していることです。英名でペーパーワスプ(paper wasps、紙のスズメバチ)と呼ばれるのは、巣の質感が紙の様だからです。日本に11種類生息するといわれますが、主として次の3種類が身近です。
- セグロアシナガバチ(Polistes jadwigae Dalla Torre)
- フタモンアシナガバチ(Polistes chinensis antennalis Perez)
- キアシナガバチ(Polistes rothneyi)
- ミツバチ科(Apidae)
ミツバチ類(英名honeybee)は2種類です。
- セイヨウミツバチ(Apis mellifera Linnaeus)
- ニホンミツバチ (Apis cerana Fabricius)
- コシブトハナバチ科(Anthophoridae)
英名でバンブルビー(bumblebee)といわれるクマバチ(Xylocopa appendiculuta circumvolans Smith)が主です。花に集まる丸みのある蜂です。
クリックして拡大する例年夏の終わりごろから11月にかけてスズメバチ類の活動が活発になり、毎年のようにアナフィラキシー・ショック(アナフィラキー)による死者が報告されています。特に好天と猛暑は蜂類の巣作りが容易になり、餌の昆虫も多く発生しますから、キイロスズメバチなどの繁殖が通常以上に多くなり、被害が拡大します。
2007年には9月になり横浜市緑区の「新治市民の森」でスズメバチによる事故が報告されました。ウォーキングをしていた中高年男女の14人に被害がでたそうです。
住宅地が拡大して山間部を侵食するようになってから、蜂に刺される事故が増え続けていますが、2005年7月には川崎市の麻生区でコガタスズメバチによる死者が発生[*]して大騒ぎとなりました。
この10年間で、蜂に刺される事故が10倍にもなったといわれ、保健所、病院などに報告されている件数だけでも年間5万件を超えているようです。
最近は都心部の住宅地でキイロスズメバチなどが繁殖し、行動半径が広い(100kmを超える?)オオスズメバチが、山間部より飛来するようになっています。
信州の一部地方(東信地方)に統計がありますが、キイロスズメバチの巣の駆除数は1997年に177件、1998年が236件に増加しているそうです。種類によって異なりますが、スズメバチ類は一つの巣に幼虫を育てる房が400-1,000ありますから繁殖速度は速いほうです。
*「2005年7月8日午前、川崎市麻生区で、生垣手入れ中の作業員男性がコガタスズメバチと見られる巣を破壊してしまい、10数匹のハチに襲われました。刺された男性はアナフィラキー・ショックにより数十分も経たずに死亡したそうです。例年、蜂の行動が活発になるのは夏の終わりから、秋にかけて。女王蜂が独立する分蜂活動が起きる時期ですから、この事故は巣を破壊された特殊事情によるもので、7月の襲撃は稀です。」
日本のハチ毒による死者は、多かった1989年が70人、毎年少なくとも30人を超えるといわれます。原因は主としてキイロスズメバチとオオスズメバチによるアナフィラキシー・ショック(Anaphylaxis)です。
アナフィラキシー・ショックは誰もが起こすわけではありません。遺伝的なものもありますが、特に過去に蜂に刺されて抗体が出来ている場合に起こしやすくなります。
また喘息や食品アレルギーの激しい人は、蜂毒によるアナフィラキシー・ショックを引き起こしやすいといわれています。
このような方々は秋の蜂に刺されないよう、注意する必要があります。
野山への外出時の衣服は黒が危険色で、白系統が推薦できます。スズメバチ類は香水、においの強い熟れた果実、発酵飲料などやアルコール類に誘引されます。 飲み残しの飲料や食べ残しの果実を、身辺に放置しないことも重要です。
毒素はヒスタミン系ですから、一般的な腫れなどには抗ヒスタミンやステロイド系の医薬品が有効ですが、刺されたら毒素をすぐ搾り出すことが重要です。ミツバチ類は針を残しますからすぐに撤去します。
異常な腫れ、痙攣、しびれ、血圧低下などはアナフィラキシー・ショック症状発生の可能性がありますから、直に医師に診てもらう必要があります。
ハチ毒による死亡被害は欧米でも珍しくなく、ミツバチによる死者も稀ではないそうです。
抗原抗体反応と呼ばれるアレルギー反応の一つです。人体では免疫反応により、最初に刺されたとき、抗原である蜂毒に対して、抗体が出来ます。この抗体が、次に刺されたときに、毒素(抗原)に反応してショック症状を起こすのがアナフィラキシー・ショックです。
欧米ではピーナッツなど、食品によるショックが多いといわれます。またラテックス、薬品などでも起きます。
蜂毒の作用メカニズム詳細は不明ですが、蛋白質系のアミン類、ペプチド類といわれる毒素に反応を起こした抗体の酵素(ホスホリパーゼ:phospholipase、プロテアーゼ:Protease)が細胞膜で作用し、細胞内へのイオンチャネルを塞ぎ、ナトリウムの流入を阻止します。したがって、ふぐ毒と同様に血管系、呼吸器系が正常な作用をしなくなります。
蜂に刺されておきるアナフィラキシー・ショックは、処置が早ければ医薬品によって防ぐことができます。
日本では認可が遅かった(2003年8月、蜂用のみ認可)ため、いまだに広く普及していないようですが、イギリスやカナダなどでは、呼吸困難などのショック症状の危険が予測されるアレルギー体質の人や、養蜂産業に携わる人は、アドレナリン(adrenaline)主剤のアナペンやエピペンの救急キットを携帯しています。処置には数分を争う必要があるからです。
アドレナリンは副腎髄質ホルモンで、神経伝達物質となります。アドレナリン(英語)は米語ではエピネフリン(epinephrine)と呼ばれます。
日本では携帯キットがメルク社(Merck Ltd.)より、商品名エピペン(EpiPen)で発売されています。
海外の著名なブランドにはエピペン(EpiPen)の他、英国セルテック社(Celltech Pharmaceuticals)のアナペン(Anapen)があります。
一般人の救急薬キット携帯が可能になってからは、アナフィラキー・ショック死は50人未満に限定されるようになりました。
膜翅目(ハチ目)(hymenoptera)スズメバチ科(Vespidae)
世界には亜種を含めると数多くの種類が生息していますが、日本のスズメバチ科はアシナガバチ類(Polistes)を含めて26種類が分類されています。
その中でスズメバチ属(Vespa)には亜種を含めて8種類が確認されています。
中国、インドに多く、韓国、日本、タイ、インドネシア、スリランカ、ロシアの一部に分布します。
欧米にはスズメバチ属(Vespa)は多くありませんが、アシナガバチ類(Polistes)が生息し、ホーネット(hornet)、ワスプ(wasp)、イェロージャケット(yellow jacket)などいくつかの呼び名で身近な昆虫となっています。
日本ではスズメバチ属(Vespa)以外にも危険がある蜂類が生息します。人が仕掛けなければ、各々の攻撃性は強くありませんが、どの種類も、刺されたときの症状が重く、危険です。カッコ内は学名です。
(蜂の仲間には蟻も含まれます。世界には4,000種以上が確認されて、亜種も多数存在するために、分類法には諸説があります。)

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