世界の健康ニュース解説
プールも大浴場も湖も感染症の危険が一杯--水遊び感染症(Water Recreational Ilness)
- プールも大浴場も湖も感染症の危険が一杯
- 水遊び感染症は人畜共通感染症
- クリプトスポリジウム症(Cryptosporidium parvum)
- ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)(Giardia intestinalis)(Giardia lamblia)
- 0−157(オーイチゴーナナ)
- 水が媒介する感染症を防ぐには
- 下記に該当する人は公衆水施設(海水浴場。プール。スパ。銭湯。温泉浴場。宿泊施設、ゴルフ場などの大風呂)を避けるようお勧めします。
- 幼児、高齢者。
- 夏風邪などで体力が低下している人
- 睡眠不足、過労などで体力低下している人
- 他の感染症を罹病中の人
- 海外旅行中の人
- 妊婦。(治療薬Metronidazoleの服用が出来ません)
- 水道水を飲用しない。特にホテル、マンション、オフィスビル等、高層建築物での水道水飲用を避ける。山、川の自然水の生水も危険です。
- 海水や湖、池などはクリプトスポリジウム、ジアルジアの他、腸炎ビブリオ菌、人食いバクテリアとも言われるビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、セレウス菌、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫、日本住血吸虫など危険が一杯です。
傷のある素足で水浴することは絶対に避けたいものです。住血吸虫の感染者は世界に2億人はいるといわれます。
温浴施設にはレジオネラ菌等に感染する危険性もあります。ジアルジア虫は牧畜など家畜や山野の動物を経由して、湧き水、泉など自然水にも多数存在します。 - 日本では厚生労働省の水質基準をクリヤーしている水施設のみを利用すること。日本では水質について、大腸菌、レジオネラ菌、発癌物質のトリハロメタン濃度(塩素濃度が高すぎると危険性が増します)、水素イオン濃度(水が酸化していると殺菌作用が落ちる危険性がある)、等など、幾つもの基準を設けて、細かな指針が出されています。
- ペットや動物との濃密接触や混浴は避けること。寄生虫のトキソプラズマ、エキノコックスの危険性もあります。
- 衛生状態が悪いと思われるところでは、生ものは摂食しない。十分な加熱食品が安全です。最近はリステリア菌、エルシニア菌感染なども多くなりました。
- 幼児を水遊びさせる時の注意事項
- 下痢をしている人、オムツの取れない幼児は水施設に入らないこと。水を媒介してばら撒かれた微生物は他人に伝染します。
- 水遊び施設の水は飲みこまないこと。口に含むことも危険です。
- トイレの後やオムツ換えの後は石鹸で手を洗ってください。この行為は他人を感染から予防します。
- 子供たちが「行きたい」といわずとも、頻繁にトイレに連れて行きましょう。水の中での粗相は病原体を撒き散らします。
- オムツ換えはプールサイドでしてはいけません。サイド表面に微生物が付着して蔓延します。
- 子供や幼児のおしりは良く洗ってから水遊びをさせましょう。病原性微生物蔓延は、便に最も危険性があります。
クリックして拡大するお盆休みを迎え、夏休みの最盛期に入りました。水遊びが最も盛んな時期ですが、綺麗に見える水も、水を媒体とする寄生虫、ウィルス、細菌などの微生物が非常に多いことは知られていません。
レジャー先進国の米国では海、湖、滝つぼ、プールでの冷水浴、スパ、ジャグジーなどのホットバスタブ(日本では銭湯、温泉、宿泊施設、ゴルフ場などの大風呂)などで温水浴する幼児や老人に、水が媒介する感染症の詳細を示し、警戒するよう呼びかけています。
米国中央疾病対策センター(CDC)が水遊び感染症(Water Recreational Ilness)(SWI)と名づけて警告している代表的な感染症はクリプトスポリジウム症、ジアルジア症、0−157, 細菌性赤痢(Shigella)です。細菌性赤痢、アメーバ赤痢は世界で4億人も感染者が発生すると言われているために対策も普及していますが、他の3つは対策が十分ではありません。
特にクリプトスポリジウム原虫には塩素(通称カルキ)耐性があることが判明したため、プールなどの危険性が指摘されています。
動物とともに水遊びする人がいますが、感染症に無防備な行為といえるでしょう。また混雑するプールやスパで水を口に含んでしまう人も見かけます。渓流や湧き水を飲用することも危険です。
0−157は牧場や家畜飼育場の周辺地域の野菜が危険といわれていますが、その他にも家畜はサルモネラ菌、ウェルシュ菌、カンピロバクター菌など様々な感染症を媒介します。
0−157や細菌性赤痢はおなじみの細菌ですが、寄生虫(原虫)であるクリプトスポリジウム症、ジアルジア症は最近まで、日本での感染が散発的でした。水系感染例も知られていなかったために,話題となることも少なく、実態調査もわずかでした。クリプトスポリジウム症、ジアルジア症、0−157は代表的な人畜(獣)共通感染症ですから、ペットや動物との濃密接触や混浴によっても感染します。水や動物が媒介する病原性微生物は、幼児、老人や免疫力の低下している人々などが感染すると重篤な症状になり、死にいたる場合も少なくありません。
クリプトスポリジウム症は胞子虫類のコクシジウム目に属する寄生性原虫で、人に感染するのは腸管に寄生する小型種のパルバム(Cryptosporidium parvum)(オーシストの大きさが小さい)ですが、胃に寄生する大型種(Cryptosporidium muris)(オーシストの大きさが大きい)もあります。 HIVエイズ等、免疫不全患者は大型種に感染する場合があります。
クリプトスポリジウム原虫の宿主は牛、犬、猫などで、哺乳動物の消化管内で増殖します。便等で伝染し、外部ではオーシスト(発育環境,生活環境における虫体の一つの形)の形態となり、比較的長時間生存します。激しい水様下痢のほかに吐き気、むかつき、食欲減退等々の諸症状があります。
1976年に動物の寄生虫症としてアメリカで初めて報告されましたが、人間への感染が話題となったのは1980年代です。1993年4月に米国のミルウォキー州で起きた例では約40万人が感染したといわれ、1995年までの約2年間で100人以上の死者が出ました。
日本では1994年8月から9月にかけて平塚市の雑居ビルで461名、1996年6月初旬には埼玉県越生町において、8705名の感染者が報告されました。越生町のケースが住民の約7割に相当したため、厚生省では、この後、急遽クリプトスポリジウム暫定対策指針を出しています。
ジアルジア症は世界中に分布しており、特に発展途上国への海外旅行中の下痢で、最も多い原因といわれます。クリプトスポリジウム同様、哺乳類の動物の腸の中に寄生します。便により感染が拡がります。ジアルジア虫(Giardia intestinalis)は人や動物の体外でも長期にわたって生き延びることができます。
潜伏期間は1-2週間くらい。水様便、吐き気や嘔吐。寄生虫は慢性的に住み着くことがあり、長期にわたって症状が続くことがあります。また感染しても何の症状も見られない人もいます。米国では年間に250万人のジアルジア症の患者が発生しているとも言われます。
日本の感染症発生動向調査においては、平成11年4月の感染症予防法施行以来、平成13年6月15日現在までのジアルジア患者発生報告数は総計209人です。ジアルジア虫の検出は、先進国では2-5%、発展途上国では20-30%です。
クリプトスポリジウム症は特効薬がないそうですが、ジアルジア症はTinidazole とMetronidazole が有効といわれています。前者はファイザー製薬のファシジン(Fasigyn)、後者には塩野義製薬のフラジール(Flagyl)があります。
病原大腸菌類は種類が多く、旅行者が下急激な下痢をする程度の一般的な腸管毒素原性大腸菌から命にかかわる腸管出血性大腸菌の0−157(オーイチゴーナナ)まで色々あります。
大分類では腸管の粘膜に接着する細菌とヴェロ毒素の産生細菌(VTEC)(Verotoxin-producing Escherichia coli)に分けられていますが、0−157はヴェロ毒素の産生細菌で出血性下痢をおこします。ヴェロ毒素の産生細菌(VTEC)は長期に渡る腎障害(HUS)をもたらす危険な細菌グループです。詳しくは2006年12月16日の「またレタスから?オーイチゴーナナの集団感染」を参照してください
寄生虫に取り付かれても、免疫力が働く人は発病しないことも珍しくありません。免疫力強化が最も効果的ですが、「君子危うきに近寄らず」です。
米国(CDC)では水遊びをする人々に6つのPleaseと題する注意を呼びかけています。




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