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海洋性生物の毒素:第二話--海洋性生物の多様な毒素
(この記事は2004年02月13日の改訂版です)
- 海産毒素の原因物質
- テトロドトキシン(テトラドトキシン)(TTX)(tetrodotoxin C11H17O8N3 分子量319)(ふぐ毒)
- ふぐ毒と同様なテトロドトキシンを持つ生物たち。(カッコ内は毒素が同定された年)
- シガトキシン(ciguatoxin)(CTX) C59H84O19 分子量 1110
- マイトトキシン(maitotoxin)(MTX) 分子量3422
- パリトキシン (Palytoxin)(PTX) 分子量2677
- サキシトキシン(saxitoxin)(STX) C9H17N7O4 分子量299(タイプにより異なります)とスルガトキシン(Surugatoxin)
- コノトキシン(conotoxin)
- ブレベトキシン(Brevetoxin)(BTX) タイプ6の構造は C50H72O14. 分子量897.
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1985年には海洋性生物がもつ毒素は、それが体内で合成されているというより、摂食した渦鞭毛藻、細菌などの海洋微生物によるものであるとの学説が定説となりました。
しかしながら不明な部分も残されており、フグを内陸養殖し、原因物質から隔離した「無毒ふぐ」を販売する特別区の申請は厚生労働省の許可を得られませんでした。
毒素(toxin)の解明には、毒素の有機化合物合成が欠かせないプロセスになりますが、この分野では日本人が目覚しい活躍をしています。
パリトキシン合成の岸義人教授や、シガトキシン全合成の平間正博教授(東北大)のグループなどの成果は国際的に高い評価を受けています。
海洋性生物より検出される主要な毒素は以下の7種類が著名です。(括弧内は分子構造が同定された年)
テトロドトキシン(1964年)の毒素にはStaphyloccus,Bacillus, Micrococcus, Alteromonas, Acinetobacter, Vibrio 属の細菌などが原因物質として単離されています。
ふぐ毒(フグ毒)の原因物質は帝大(東大)の田原良純博士が最初に発見、1909年にテトロドトキシンと名づけました。
以後名古屋大学の平田教室などを中心に日本の海産毒の研究が発展します。
ふぐを食する習慣が日本の海産毒研究を世界的レベルにし、数多くの有力な研究者を輩出しました。フグ毒はイオンチャネルにナトリウムイオンが流入するのを阻害することにより、神経を麻痺させます。
現在ではふぐ類以外にも数多くのテトロドトキシン含有動物が世界中より報告されています。
カリフォルニアイモリ
(Taricha torosa 1964年)イモリ科(Salamandridae)
Taricha属イモリには毒を持つ種類が10種はある。米国カリフォルニアと太平洋岸に生息する。
毒を持つTaricha属には他にT.rivularis T.granulosaなどがある。
ツムギハゼ
(Yongeichthys criniger 1970年代)奄美大島、南西諸島などに生息する。
ヒョウモンダコ類
(Hapalochlaena fasciata, Hapalochlaena maculosa 1980年頃)
オーストラリア、南西諸島、南九州、伊豆七島、房総などに生息。
ヤドクガエル
(Atelopus属)(A.varius varius, A.varius ambulatorius, A.chiriquiensis 1975年)
ハーレクイン・フロッグ(Harlequin Toad, Harlequin Frog)と呼ばれる蛙類コスタリカ原産、中南米に生息する。
スベスベマンジュウガニ
(Atergatis floridus 1986年)
甲殻類オウギガニ科(Xanthidae)台湾など熱帯、亜熱帯海域に生息する。
同科のウモレオウギガニ(Zosimus aeneus)、ツブヒラアシオウギガニ(Platypodia granulosa)も有毒。
ボウシュウボラ
(Charonia lampas sauliae)
ホラガイ(Tritons)の仲間、フジツガイ科(Cymatiidae)日本では中部太平洋沿岸地域に産する。
シガトキシンはシガテラ中毒(ciguatera)の原因物質として1967年に分離され、1989年に構造決定されました。
名前は毒を持つ巻貝シガに由来します。
マイトトキシン同様、渦鞭毛藻(Gambierdiscus toxicus)が産出する毒素の一つ。
シガトキシンは実験的にはフグ毒(テトロドトキシン)の約100倍の強い毒性があります。
生物個体の毒素含有量は微量ですが、摂食した餌による個体差が大きく、中毒死亡例も数多く報告されています。
シガトキシンは大量に抽出するのが困難なために、研究が遅れていましたが、2001年秋に科学技術振興事業団の事業として、東北大学大学院理学研究科の平間正博教授らが、毒素のメカニズム解明に必須な、あるタイプ(CTX3C)のシガトキシンの全合成に成功しました。
シガトキシンにはナトリウム透過性を高める作用があります。
言い換えればナトリウムチャネルを活性化する作用があります。
マイトトキシン(1996年)はサザナミハギから検出された。
渦鞭毛藻(Gambierdiscus toxicus)が産出する毒素の一つで、天然物(非蛋白化合物)毒素では最大、最強といわれる。
Gambierdiscus toxicusはシガトキシンも産出する。細胞内のカルシウムの濃度を引き上げる作用がある。カルシウムの透過性を高め、カルシウムチャネルを活性化させます。全合成はいまだ開発途上です。
パリトキシン(1981年)は渦鞭毛藻 (Ostreopsis siamensis)が産出する毒素。
パリトキシンは岸義人教授が完全合成に成功しました(1994年)
腔腸動物、甲殻類、藻類に含まれますが、ハワイや亜熱帯地域などに生息するさんご礁の腔腸動物パリトア(Palythoa tuberculosa)(イワスナギンチャク)から検出されて、パリトキシンと名付けられました。パリトアの生息するさんご礁海域で中毒事故が多いといわれます。日本も本州南部地域以南には生息しています。
前述のマイトトキシンと共に巨大天然物(非蛋白化合物)毒素の双璧。サンゴ礁に棲む、ナポレオンなどアオブダイの毒として、シガテラ毒とは異なる物質の存在が、知られていました。
パリトキシンは、ナトリウムイオンの透過性を高め、ナトリウムチャネルを活性化します。
この作用はフグ毒テトロドトキシンの反対作用です。1971年に成分が検出されて後、1981年に構造解明、1994年に岸教授により全合成されました。
サキシトキシン(1975年)は渦鞭毛藻属が産出する毒素。
米国などでは、バイオ兵器として研究されていました。
北半球の太平洋、大西洋沿岸に発生する赤潮の渦鞭毛藻類属(Alexandrium)3種類(Alexandrium tamarense、Alexandrium catenella、Gymnodinium catenatum)が主原因といわれる。フグ毒テトロドトキシンと活性や中毒症状が類似しています。Alexandrium種の赤潮は春から夏にかけて大量発生し、冬に終息する。フグ毒同様、神経細胞のナトリウムチャンネルを特異的に阻害します。
麻痺性貝毒 (Paralytic Shellfish Poison)(PSP)と呼ばれるサキシトキシンには、構造がやや異なるネオサキシトキシン(neosaxitoxin、neoSTX)、ゴニオトキシン(gonyautoxin、GTX)など、多数の近似有毒成分が発見されています。日本ではAlexandrium catenellaによるホタテガイの毒化が報告されています。
サキトキシンの近縁毒素としてスルガトキシン(Surugatoxin)があります。
1960年代に駿河湾の静岡県で発生したバイ貝の中毒多発を受けて、岡田邦輔(名城大学薬学部教授)らによる研究がなされ、1972年に構造が解明されスルガトキシンと命名されました。
さらに、1981年に強毒性のネオスルガトキシン、続いてプロスルガトコシンの構造が明かとなりましたが、いずれも関連のある毒素です。
ネオスルガトキシンには瞳孔散大作用、ニコチン受容体の阻害作用があり、視力減退、瞳孔散大、口渇、腹部膨満、便秘がみられるといわれます(岡田教授の報告より)。
ムラサキイガイ、ホタテガイ、コタマガイなど二枚貝による食中毒の原因物質となります。
毒貝として著名なイモ貝の主要毒素。特異な作用が新薬開発に大きな期待がされている。
ペプチド毒(peptide toxins)で 11-30のアミノ酸が結合している。毒素の由来、生理活性などが多様で、詳細に不明部分が多い。ユタ大学のB. M. Oliveraらの グループにより完全なアミノ酸配列が決められた。
コノトキシンはこれまでに三つのタイプ(α-, μ-, ω-)が発見されており、それぞれ毒素が作用する細胞部位が異なるといわれる。
α-コノトキシンGI(GIomega-conotoxin)が最初に発見された。
カルシュームイオンチャネルのアセチルコリン受容体(nicotinic receptor)を阻害する作用がある(calcium ion channel blocker)。
μ-コノトキシンは三菱化学生命科学研究所が1980年代に沖縄産のイモ貝 を用いてアミノ酸配列を決定したと報告している。μ -コノトキシンは筋肉のナトリウムチャネル(Na+チャネル)を阻害する。
ω-コノトキシンは痛覚の神経伝達物質チャネルといわれるN型カルシュームチャネルを阻害する。
アイルランド(Dublin, Ireland)のエラン社(Elan Corporation)がコノトキシンより開発しているジコノチド(Ziconotide)が注目されています。
ジコノチドは進行癌や帯状疱疹(ヘルペス)など、モルヒネや消炎鎮痛薬などが効きにくい激痛に対応する新薬といわれています。
渦鞭毛藻(Gymnodium breve)が原因となる。
ブレベトキシン(BTX)(Brevetoxin Bタイプ1995年, Aタイプ1997年)赤潮(red tide)のプランクトンで、摂食した広範囲の魚が毒魚となる。
ニュージーランドやメキシコ湾で多発するというが、分子量など詳細は不明。研究途上の物質。牡蠣がこの毒を持つ例の報告がある。


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