世界の健康ニュース解説
集団訴訟に発展するカリフォルニアのO-157汚染ほうれん草事件
- カリフォルニア産ホウレンソウのO-157汚染事件(続報)
- 確認された感染源は同一ブランド
- カリフォルニア野菜産業の三つの問題点
- 第一は酪農地帯と畑作地帯(野菜、果実、ナッツなど)とが隣接、近接(数十マイルから100マイル)していることです。
サリナス・バレーと南北に平行する、カリフォルニア最大の農業地帯セントラル・ヴァレーの
サンホワキン・ヴァレー(San Joaquin Valley)にはフォスター・ファーム・デーリー(Foster Farms Dairy)(モデストの南部)やジョゼフ・ガロ・デーリー(Joseph Gallo dairy)(リビングストンに近いアトウォーター)など全米でもトップクラスの酪農会社が牧場を展開しています(Livingstone. Modesto. Atwater)。
べロ毒素産生大腸菌のO-157:H7は牛の腸管に常在するために、牛や牛肉から感染するケースが相当部分を占めます。
1981年にミシガン州、オレゴン州で発見された最初のヴェロ毒素産生大腸菌O-157も同一ブランドのファーストフード・ハンバーガーからでした。
日本でO-157が分析されたケースも50%近くが牛肉であり、鹿、豚を含めると半数を超えます。
牛などからのO-157の感染には直接、間接のあらゆる経路が考えられます。
他の微生物に較べ千分の一から十万分の一の微量で発病しますから、動物や食肉からの直接的な接触感染ばかりでなく、他の農産物、人、動物、水、物質の移動などを経由する
疑わしい経路が多々あります。
日本のデータでも牛肉の次にO-157汚染が多いのが野菜の14%です。
したがって酪農王国カリフォルニアの農産物には常にO-157感染の危険があることが指摘されています。
今回の集団感染のケースも感染経路は近隣の酪農の牛が疑われているようです。
過去10年でカリフォルニアのレタス、ほうれん草から感染したと疑われる集団発生は20件を越えるといわれ、ほとんどのケースで、酪農などからの直接、間接の感染が疑われています。
- 第二はカリフォルニアの野菜、酪農などは生産シェアーが非常に大きく、全米に商品供給をする巨大な企業が出現していることです。
パッケージ・サラダ(bagged salad)で全米のシェアー40%を持つフレッシュ・エキスプレス(Performance Food Group. 2005年にバナナで著名なチキータ 社が買収)や、有機栽培のバッグ・サラダで全米のシェアー75%を持つナチュラル・セレクション・フーズの商品はサリナス・バレーのレタスやほうれん草を主として使用し(8-9月)、大手食品スーパーを通じて広い範囲で販売されています。
O-157に限らず生産地で微生物汚染された農産物が僅か1-2日で全米、カナダ、メキシコの広い範囲に広がってしまうことを意味します。
カリフォルニアの農産物は16%以上が輸出され、カナダ、メキシコなどはレタス、ホウレンソウなどの生鮮品を多量に輸入しています。
日本も果実やナッツなどを相当量輸入していますが、野菜輸入は中国産が多く、カリフォルニアからは季節補助的なブロッコリー輸入などです。 - 第三はカリフォルニアのレタス、ほうれん草の相当部分を生産するサリナス・バレーが19世紀からの古い農業地帯のために上下水道の老朽化、潅漑システムの不備が指摘されていることです。
これは生鮮野菜ばかりでなく、サラダ加工工場の衛生管理が難しくなることにも通じます。
また農業従事者のほとんどが若い季節労働者であり、衛生思想の徹底が困難なことです。
カリフォルニアには74,000軒の農家があり、大半の74%は小さな家族経営ですが、100万ドル以上(1億1千5百万円)を売り上げる組織が5,000はあり、生産量全体の75%を占めます。
この大規模経営農場の労働力は95%が季節労働の若い外国人女性で維持されています。 - 米国の食生活変化と共に発展したカリフォルニアの農業
- 日本の食中毒とO-157発生状況
- 動物は感染症で一杯、安易な接触は危険です
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米国疾病管理予防センター(CDC)より2006年10月6日現在のヴェロトキシン産生大腸菌O-157:H7の感染現況が発表されました(Verocytotoxin producing E. coli)(VTEC)。
感染者はウィスコンシン州の49名を筆頭に、オハイオ州の25名、ユタ州の19名など全米26州の総数が199名。
9月25日発表より24名の増加です。
102名が入院中、31名に腎臓疾患 (HUS)が見られます。
アイダホ州、ネブラスカ州で9月に死亡したO-157感染者の今回事件との因果関係が新たに確認されたため、死亡者は2人増えて合計3名となりました。
今回の事件は腎臓疾患(溶血性尿毒症症候群)の発生率が高いこともあり、関係者はH7のベロ毒素変異を懸念しています。
これまでに10州で、13ケースのサラダパッケージ(ベビー・スピナッチ)から遺伝子が同一なO-157:H7が発見されています。
パッケージは全て同じブランドだそうです。
連邦政府のFDA,CDCやカリフォルニア州行政関係者などが、素材を供給したと見られる9箇所の農場を調査しているそうですが、感染源、感染経路の詳細はいまだに不明です。
感染源とされるパッケージ・サラダを販売したナチュラル・セレクション・フーズ(Natural Selection Foods LLC)社は全ての感染者に対し、必要費用の負担を申し出ていますが、被害者は損害賠償集団訴訟の準備をしており、今後の成り行きが注目されています。
前回の記事でもお伝えしましたが、感染者、死者が少数にも関わらず、広範囲な同時発生で全米を揺るがす事件となった背景には、感染源となったカリフォルニア・サリナスバレーの野菜生産に構造的な欠陥があることが考えられます。
1970年ごろより健康志向の高まりで、米国の野菜、果実、ナッツの個人消費は24%も増加しています。
この恩恵を受けたのがカリフォルニアの農業で、この3アイテムは州の農産物売り上げ248億ドル(約2兆8千億円)の半分を占めます。
またカリフォルニアの酪農は全米ナンバーワンの18%を占め、1999年には41億ドル(約4500億円)を売上ました。
これはカリフォルニアの全農産物売上248億ドルの17%を占める重要産業です。
雇用は21万人を超え、酪農従事者の総所得は110億ドル(約1兆4000億円)になります。
日本で最初の腸管出血性大腸菌O-157の発生は1984年に大阪で確認されました。
米国で最初に発見された年から3年後です。
その後は散発的でしたが、1996年5月に岡山県で給食による集団感染が発生し、発病者468名、死亡者2名の事件となりました。
同年6月には全国に拡がり、7月に大阪で「かいわれ大根事件」が発生しました。
この事件は5,727人もの発病者、死者8人を数えて社会問題となりましたが、後の裁判でカイワレ大根が感染源との判断は否定されました。
日本で計上される食中毒は年間25,000人から46,000人くらいです。
O-157が集団発生した1996年は死者15人、2002は18人と二桁になっていますが、通常年の食中毒死亡者は平均一桁、確認された死亡者の累計は2005年までの10年間で約80名です。
この内、O-157、O-26を含む腸管出血性大腸菌の年間感染発病者はO-157多発年を除くと、3,000名から4,000名前後、O-157による死者は累計22名です。
微生物による食中毒はノロウィルス、ロタウィルスが多いといわれますが、食中毒原因の確認は費用がかかるために、集団感染を除くと病原検査、感染経路確認が困難となっています。
O-157を含めてほとんどの微生物感染は自己免疫力により自然治癒しますから、通院、入院などによって統計に計上されるケースは5%とも10%とも言われ、中毒の発生は膨大な数が推測されています。
食肉や海産物の生食はよほどの注意が必要です。
O-157、O-26 などの腸管出血性大腸炎は今年(2006年)も各地で発生しており、報告件数は9月までで950件を超えています。
特に秋田県では5月に二次感染を含めて40人以上の集団感染があり、1名の死者が報告されています。
テーマパークの秋田ふるさと村で動物を触らせるイベントがあり、O-157の感染源はこれらの動物とみられています。
テーマパークの秋田ふるさと村はコストパフォーマンスが悪いといわれ、赤字が続いて経営形態が安定せず、経営者の不正事件なども加わり、管理に問題があったことが報道されています。
7月には新潟県の学校で飼育していた2頭の羊から生徒一人がO-157に感染し、家族にも2次感染しました。
感染児童には激しい症状が出ましたが腎臓疾患を併発せず全快したのは不幸中の幸いです。
この羊は牛と共に飼育された経歴を持つそうですが、鳥類、亀類を含めて、学校での動物飼育は非常な危険が伴います。

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多くの動物園には子供に動物を触らせるコーナーがありますが、これも危険な行為です。動物はO-157ばかりでなく、O-26、O-111など、各種病原性大腸菌、寄生虫、ウィルス、サルモネラ菌など危険が一杯ですから、安易に接触してはいけないものです。
カリフォルニアの事件に関しても、州、郡の監督官庁、関係学者、酪農経営者、農産物生産加工業者、その従業員などがO-157に関して「あまりに無知である」と指摘する連邦衛生管理当局の関係者がいます。

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