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世界の健康ニュース解説

脂肪酸が関わるアレルギーと喘息(2)
(脂肪酸由来の生理活性物質)

  1. アラキドン酸(arachidonic acid) (AA)
  2. リノール油などのオメガ6系で作られるリノール酸(C18H32O2分子量280.45)はα-リノレン酸を経て、強力な諸作用を持つ物質のアラキドン酸(C20H32O2分子量304.47)を合成します。
    アラキドン酸(AA)は主として脂肪細胞(マスト細胞)、好中球など白血球の細胞膜リン脂質から遊離されますが、細胞の種類ごとに特定の酵素が働いて、構造の異なる生理活性物質群のアラキドン酸代謝物を善玉、悪玉を合わせて100種近く合成します。
    細胞膜リン脂質から滲出したアラキドン酸は大きく分類して、二つの経路を経てアラキドン酸代謝物へと変換されます。
    一つがリポキシゲナ−ゼ酸素添加酵素(lipoxygenase)によってプロスタグランディン類縁体である5-HPETEを経て、ロイコトリエン類の過酸化脂質が生成される代謝系です。
    もう一つが酸素添加酵素のシクロオキシゲナ−ゼ2(cyclooxygenase2)(COX2)によって、プロスタグランディン(PG)類、プロスタサイクリン(PGI,2)トロンボキサン(TX)類が生成される代謝系です。
    *5-HPETE (5−ヒドロ・ペルオキシ・イコサ・テトラエン)(5-hydroperoxy eicosa tetraenoic acid)

  3. エイコサノイド(eicosanoids)
  4. このアラキドン酸が合成する生理活性物質群の内、20(eicosa)の炭素鎖で構成される物質をエイコサノイドと呼ぶことがあります。
    「エイコサノイド」は「プロスタグランディン」と、プロスタノイドとも一纏めに呼ばれる「プロスタサイクリン」「トロンボ キサン」「ロイコトリエン」という4つの生体調整ホルモン物質の総称で、20の炭素鎖で構成される多価不飽和脂肪酸(オメガ3、オメガ6など)から合成されます。ちなみにオリーブオイルなどのオメガ9は単価不飽和脂肪酸です。

  5. プロスタノイド(prostanoid)
  6. プロスタノイドはプロスタグランディン類縁体のことです。動物体内で合成される一群の生理活性物質で、その合成は、主として、脂肪細胞(マスト細胞)、好中球、好塩基性、 白血球で行われます。
    プロスタノイドには、トロンボキサンA2(TXA2)、ロイコトリエン(LT)、プロスタサイクリン(PG12)、などの過酸化脂質があります。

  7. ロイコトリエン(leukotriene)(LT)
  8. ある種のロイコトリエンは炎症作用の原因となります。ロイコトリエン(LT)は、幾つかの種類に分けられますが、基となる脂肪酸の種類によって善玉作用をもつものと、喘息や花粉症、炎症の原因物質と言われる悪玉作用を持つものが産出されます。ロイコトリエンとして解明された物質は喘息を引き起こす物質といわれていたSRS(slow reacting substance of anaphylaxis)と同じでした。

  9. トロンボキサン(thromboxane)(TX)
  10. トロンボキサンもいろいろありますが、血小板凝集作用、血管平滑筋の収縮作用、気管支平滑筋の収縮作用、 動脈の収縮作用などの強力な生理活性を示し、特にトロンボキサA2(TXA2)は血栓症、狭心症、気管支 喘息などの原因の一つであると考えられます。

  11. プロスタサイクリン(prostacyclin)(PGI,2)
  12. アラキドン酸(AA)がシクロオキシゲナ−ゼ2によって変換される経路で産生する善玉物質です。血管平滑筋を弛緩させます。血管平滑筋を弛緩させる物質にはプロスタサイクリンの他、一酸化窒素(NO)、アドレノメデュリン 、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、ブラジキニンなどがあります。

  13. 酸素添加酵素シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase)(COX)
  14. シクロオキシゲナーゼ(COX)にはCOX-1、COX-2、COX-3と3種類が発見されており、COX-1は人体の組織に常在して、胃粘膜の保護などに働きます。COX-2はアラキドン酸(AA)を変換させて炎症や発熱などにかかわる悪玉のプロスタグランジンや善玉のプロスタサイクリン(PGI,2)の生成に関与する物質です。COX-3の存在は最近になり研究発表がありましたが、機能はまだはっきりしません。
    アスピリンなど解熱鎮痛剤(NSAIDと略称される非ステロイド鎮痛剤)には胃が荒れる副作用があります。
    胃を守る酵素のシクロオキシゲナーゼ1(以下COX1)を破壊するためです。アスピリンはCOX-1、COX-2の2タイプのCOXを破壊するために、炎症を防ぐと同時に胃も荒らします。 COX-2のみを選択して作用する鎮痛剤があれば胃を荒らすなど副作用が少なくなることから、COX-2選択鎮痛剤が開発されました(スーパーアスピリン)が問題点もあり、爆発的に販売された後は普及しなくなりました。

  15. プロスタグランディン(prostaglandin)(PG)
  16. プロスタグランディン(PG)は生体調整ホルモン(内因性生理活性物質)の化合物群です。
    AからJ迄命名されており、PGE、PGFのように表されていますが、これはプロスタグランディンの化学構造中にある5員環(あるいは6員環)の構造の違いです。またアルファベットの後にはPGE1やPGE2の様に番号が振られています。この番号はその化合物の二重結合の数を表しています。最初に見つかったのは血管収縮に関与するEとFです。生理時には子宮と卵巣でこのE型PG、F型PGが大量に作られ、子宮を収縮して痛みとなって現われます。

  17. プロスタグランディンの発見
  18. プロスタグランディンは1958年に羊の精嚢から分離されてから研究が進展しましたが、1971年になって英国の薬理学者ジョン・ベイン(Sir John R Vane)がプロスタグランディンの機能を発見し、1982年にノーベル賞を受賞しました。
    プロスタグランディンの機能解明によりアスピリンは鎮痛メカニズムが解明されると共に、血小板凝集抑制作用(血栓を作らないようにする作用)が注目されて、現在ではその作用が最大の用途となっています。

  19. 脂肪酸の種類で異なるプロスタグランディン
  20. プロスタグランディンはいずれも脂肪酸から作り出されますが、脂肪酸のタイプによって大別して三系統があります。
    オメガ6のリノール酸が造るガンマリノレン酸(GLAと略す)からは善玉といわれるプロスタグランディン1が造られます。
    同じくオメガ6のリノール酸が造るアラキドン酸からは悪玉のプロスタグランディン2が造られます。
    プロスタグランディン2の機能が解明されたのは比較的最近ですが、鎮痛剤の開発に大きな役割を果たしています。
    オメガ3(EPAエイコサペンタエンサン)から作り出されるのはプロスタグランディン3です。