世界の健康ニュース解説
トランス脂肪酸の害:第四話--トランス脂肪酸は追放できるか?
禁断の実を選択する食品業界の多国籍企業
- トランス脂肪酸か?遺伝子組み換えか?飽和脂肪酸か?の選択
- トランス脂肪酸(トランス脂肪)とは
- トランスファットフリーとは
- 巨大資本に支配される植物性食用油の世界
- 巨大な世界の食用油生産、販売会社
- ユニリバー(ユニリーバ)・グループ(Unilever Group)「英国、オランダ:16.8%」
- モンテジソン(Montedison SPA)「イタリア : 3.1%」
- 日清製油。「日本: 2.3%」
- ブンゲ・インターナショナル(Bunge International ltd)「オランダ系:2.1%」
- ライシオ・グループ(Raisio Group)「フィンランド:1.9%」
- コナグラ(コンアグラ)(ConAgra Inc)「米国:1.8%」
- 味の素。「日本:1.4%」
- カーギル(Cargill Inc)「米国:1.3% 」
- トランス脂肪の削減に飽和脂肪酸を選択する多国籍食品企業
- . トランス脂肪酸の完全な追放が出来ない行政当局
- トランス脂肪酸削減を遺伝子組み換えで解決?
- トランス脂肪排除を表明する多国籍食品企業
- クラフト(Kraft)多国籍総合食品会社。オレオマーガリン(oleo-margarin、獣脂から採った油のタローを圧縮して作る)を生産している。これは飽和脂肪酸を使用することによりトランス脂肪を排除した製品。オレオ油は飽和脂肪酸ですから、トランス脂肪の発生はあり得ません。
- フリトレイ(Frito-Lay)現在はペプシコ(PepsiCo)の子会社。ポテトチップスで著名なフリトレイ(Frito-Lay)は、来年の表示義務化までには、全てトランス酸を除去すると表明しています。これは植物性のパームオイルや動物性のオレオ油(oleo oil)などを使うということであるようです。
- キャンベル(Campbell)日本ではスープで有名です。トランス脂肪フリーのクラッカー、ペパーリッジファームス・ゴールドフィッシュ(Pepperidge Farms Goldfish crackers)を発売するそうです。
- クリスコ(Crisco)スナック菓子で著名なクリスコは肥満の元凶とも言われることがありますが、トランス脂肪フリーの商品を企画しています。ひまわり油(sunflower)、大豆油に飽和脂肪酸のバター半分を混合したショートニングをトランスファットフリーとして売り出します。
- マクドナルド(McDonalds)フレンチフライからトランス脂肪を48%削減するそうですが(これまでの含有量比)、うまくいかなかった前例(1530トランス型脂肪酸訴訟とマクドナルド社)もあり、まだ確かではありません。
- ネッスル(Nestle)世界最大の食品会社だけに真剣に取り組んでいるようです。現状は暫定的な処置のみであり、決めてとなる結論は出ていないようです。 公表されている数字によれば売上の1.6%に当たる14億ドル(1,400億円)を心臓疾患の研究開発に費やしているそうです。
- タイソン(Tyson)食肉処理の米国最大手会社。 食肉からトランス脂肪など心臓病に悪い含有物を取り除く工夫と研究をしているそうです。反芻哺乳動物の乳や肉にはトランス脂肪が含まれますが、植物の不飽和脂肪酸が変化したトランス脂肪との違いは明確ではありません。したがって食品表示法では対象外です。
- 遺伝子組み換え農産物、多国籍企業の対応
- クエーカー・オーツ(Quaker Oats)現在はペプシコ(PepsiCo)の子会社。オートミールで有名。「非組み換えと組み替え食品を分別する方法があるなら教えてもらいたい。不可能である」
- ハインツ(Heinz)「赤ちゃん用の食品からは組み替え食品を排除する」。主力商品のトマトケチャップは完全な遺伝子組み換え食品。
- ガーバー(Gerbe)赤ちゃん用食品大手「赤ちゃん用の食品は組み替え食品を排除する」この会社は遺伝子組み換え農産物開発大手のノヴァルティス(Novartis)(スイス)の子会社です。
- マクドナルド(McDonald)組み替え農産物を使用しない方向。「米国のジャガイモの組み替え産物は6%くらいであるから、簡単に排除できる」しかしながらポテトフライの油は組み替え油といわれている。
- フリトレイ(Frito-Lay)ポテトチップス大手「契約農家に非組み換えの既存品種を作らせる」
- ペプシコーラ(PepsiCo)「ソフトドリンクのコーンシロップから組み換え食品を排除することは困難である」
- マッケイン・フーズ(McCain Foods)冷凍ポテトの世界最大手「遺伝子組み換えのジャガイモは使用中止する決定をした」
- クラフト(Kraft Foods)「遺伝子組み換えより人工甘味料のアスパルテームがより重要な問題である」他の添加物の排除へ消費者の目を逸らさせていると非難された。
- ケロッグ(Kellogg) 「連邦の監督官庁は良い仕事をしている。バイオテクノロジーの科学は遺伝子組み換え農産物の安全を立証している。監督官庁が許可しているものが悪いはずはない」このような発言の裏ではヴェジタリアンの有機野菜を生産しているワーシントン(ウォーシントン)・フーズ(Worthington Foods) を買収したといわれる。
- ジェネラル・ミルス(General Mills)ケロッグ同様の発言をしているが、有機栽培食品に特化した会社の買収を進めている。
- マース(Mars,Inc)コンボ、ミルキーウェイなどのスナックで有名な多国籍食品企業。ペットフードのぺディグリーでも有名。ジェネラル・ミルスと同様、有機栽培食品に特化した会社の買収を進めている。
- パームオイル(palm oil)とアブラヤシ(obe palm)
- タロー(tallow)とは

トランス脂肪は悪玉コレステロールを増やし、肥満や、重大疾患である心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、胆石、アテロームのリスクファクターとして最大のものであるといわれています。
特に心臓の冠状動脈疾患死亡者が年間50万人を越える米国では、トランス脂肪の排除に真剣に取り組み、来年(2006年)1月1日にはトランス脂肪酸表示が義務化されます。
ヨーロッパの先進各国はこれに追従する動きを見せており、トランス脂肪の削減ないしは追放を迫られる大手食品会社の悩みは尽きません。加工食品の40%以上に食用油が使用され、トランス脂肪に深く関与しているからです。
世界の食品業界は、巨大メーカーと巨大流通業者が支配する業界だけに、小回りが効きません。これら世界企業がトランス脂肪の追放に、旧有害食品御三家の一角である飽和脂肪酸や、新種の遺伝子組み換え食品を利用することが、新たな問題となっています。
トランス脂肪は大豆、菜種など植物性の不飽和脂肪酸が変化して生じます。不飽和脂肪酸は常温で液状であるため、パンやケーキなどがその形を保つことができません。したがって不飽和脂肪酸である植物性の食用油は、工業用に使用出来るよう生産過程において水素を添加して、トランス脂肪と呼ばれる安定した形にしています。トランス脂肪は調理用食用油を製品化する量産過程の高熱でも発生していますが、搾油時、調理時の高熱によっても発生します。
市販される植物性食用油のほとんどがトランス脂肪酸を高率に含有するのは、スーパーなどでの販売方法の欠陥もあります。不飽和脂肪酸の植物性油は不安定ですから酸化が急速に進みます。空気に暴露すると酸化することは周知されていますが、酸化の大きな原因が紫外線や蛍光灯であることはあまり知られていません。
スーパーなどの店頭で酸化を防ぐには遮光ボトルに変えるしかありませんがコスト高になります。
米国で使用され始めた業界言葉です。本来フリーとはゼロを指すことが多いのですが、この場合は許容量以下を意味します。トランス脂肪酸は非常に有害であるということが確定的になってきているために、本来は許容量の基準というものは存在しません。米国では暫定的な許容量として、脂肪分14グラムに対し500mg以下の摂食を許容の基準にしています。これ以下の場合はトランスファットフリーという表現が使われます。
欧米などの先進国では、近いうちに食品のトランス脂肪含有量の表示が義務化されるでしょうが、これは消費者に選択肢を与えるということです。食品業界が対応できるようになるまでは、使用を禁止することは不可能でしょう。使用を禁止したといわれるデンマークでさえ、一日2グラムという寛容範囲があります。
植物性の食用油生産と販売は非常に特殊な業界です。世界の販売量の約38%が9つの生産会社に支配されています。特にオランダのユニリバー(ユニリーバ)・グループ(Unilever)は巨大で、世界の販売量の約17%を占めます。食用油はヨーロッパ諸国を中心に生産規模の小さい自家生産、自家消費農家が相当量(推定で約30%)を占めますから、世界の食用油市場における多国籍企業の支配は寡占といえます。
どの会社も巨大な生産設備を持つ工場を世界各地に設置しており、トランス脂肪酸、遺伝子組み換え原料が簡単に排除できない原因の一つとなっています。
巨大な会社群に支配される植物性油市場は舵とりに小回りが効かない巨艦にも例えることが出来ます。世界の食用油市場を支配するのは下記の会社群です。(2004年)
大手の食品会社はトランス脂肪の削減を、タロー(牛脂)、パームオイルなどの飽和脂肪酸に、一部(加工食品用油)を代替することで解決しようとしています。飽和脂肪酸は善玉コレステロールなど必要成分にもなりますが、過剰な摂取は肥満の元ともなり、トランス脂肪同様に心臓血管に有害であるとされています。
飽和脂肪酸には、動物性のバター・ラード・タローなどや、植物性のパームオイル、ココナッツオイルなどがあります。飽和脂肪酸はすでに安定した形ですからトランス脂肪酸は生じません。
飽和脂肪酸は常温で固形化するために家庭用の調理用油より、インスタントラーメン、パン製造、洋菓子製造など工業用に大量に使用されています。
トランス脂肪フリー(これはゼロという意味ではありません。基準値以下という意味です)に取り組んでいる巨大食品会社やマクドナルドなど飲食業界はトランス脂肪フリーの商品作りにいろいろな方法を検討し、一部はすでに実行されています。この中で最も簡便で、コストの安い方法が一部(加工食品用油)を飽和脂肪酸へ転換することです。
これまでの常識を覆し、飽和脂肪酸はトランス脂肪酸より害が少ないといわれるようになりましたが、飽和脂肪酸の心臓への有害論もトランス脂肪と並び根拠がある学説です。
食の安全を考える消費者団体などは、飽和脂肪酸で打開を図る大手食品会社の方針に異論を唱えています。最も使用量の多い飽和脂肪酸のパームオイルには有害物質が含有されているとの説もあります。
加工食品の40%近くが食用油を使用しているといわれ、その大部分が飽和脂肪酸含有に代替されれば、新たな問題が起きることは必至とも言えます。
大問題化したトランス脂肪も、ワインの添加物が規制できないことと同様、これに代わる新技術が確立しない限り禁止することが不可能です。
このため、食の安全を管理する米国FDAも、消極的表現である「出来るだけ摂食を少なくするように」といわざるを得なく、消費者団体の抗議を招いています。
すでに昨年(2004年)米国医学会で結成する、ナショナル・アカデミーの医学研究所(The National Academies' Institute of Medicine)はトランス脂肪酸の安全レベルなどはあり得ないと結論しました。
昨年の春には多くの巨大食品会社がトランス脂肪フリーを目指すことを表明しましたが、どのような方法で、どのように進展したのでしょうか?
また遺伝子組み換え食品へ、どのような対応をしているのでしょうか?
巨大食品会社はトランス脂肪酸と同時に遺伝子組み換え食品の追放も迫られていますが、現時点での対応は困難です。結局、販売の主力はこれからも既存の商品で継続し、トランス脂肪や遺伝子組み換えを排除した食品は、高価格な販売ラインの一つとして考えているようです。(2004年5月現在)
トランス脂肪削減を飽和脂肪酸への代替で達成することに新たな疑問が生じることは必至です。このため遺伝子組み換え植物の大手生産会社や販売会社は遺伝子の組み換えにより、低トランス脂肪達成が可能な植物の開発をしています。すでに大豆油の大部分や菜種のキャノーラなどは遺伝子組み換え食品ですが、新種の組み替え植物の出現も、消費者にとっては難しい判定と選択を迫られる問題です。新たな論争の火種となることも予測できます。
元来、大豆、菜種、キャノーラ、ゴマ、オリーブ、米、ひまわり、紅花などの植物性油は不飽和脂肪酸ですから、高温搾油や水素の添加が無い限りトランス脂肪は含有されていません。
しかしながらトランス脂肪が発生しなければパン、ケーキなどの成型ができません。
開発している新たな遺伝子組み換え植物は、水素添加が無くともパンなどの成型が可能であり、且つ加熱によるトランス脂肪の発生を低く抑えるものです。米やオリーブなどの油がオレイン酸を多量に含有し、加熱によるトランス脂肪発生が少ないことがヒントとなっています。
遺伝子組み換えのキャノーラを開発したダウ・アグロサイエンス社(Dow AgroSciences)は2004年6月に、低飽和脂肪酸、トランスファットフリーの新種キャノーラ「ナトレオン・キャノーラ(Natreon canola oil)」を発表しました。
大豆油大手のブンゲ社(Bunge)、遺伝子組み換え大手のデュポン社(DuPont)なども、新種の植物開発でトランス脂肪削減に取り組んでいます。
最近では遺伝子組み換え大手のバイエル・クロップ・サイエンス社(Bayer CropScience)や、食品大手のカーギル社(Cargill)が提携し、2007年までに、トランス脂肪を削減できる新種の遺伝子組み換えキャノーラを開発することを発表しています。
米国の食品スーパー、グローサリーなどの販売量の約70%が遺伝子組み換え食品といわれます(2000年、the Grocery Manufacturers of America)。
二大農産物である大豆とトウモロコシを使用しているスナックや朝食のシリアル、食用油は、遺伝子組み換え品の量が圧倒的に多いために、非組み換え食品を一部商品に使用したくとも、混入を避けることが困難であるといわれます。
大豆とトウモロコシの作付面積は6千万エーカー/2004に及びます。したがって巨大メーカーといえども、市場に出回る農産物を組み換え品が混入したか、否かの識別することが困難になっています。たとえ非組み換え農産物を使用していると主張しても、大豆とトウモロコシに関しては「立証できない」といわれています。(ニューヨーク・タイムスなどより)
パームオイルはアブラヤシから搾油され、食用植物油では最も安価です。パームオイルの統計にはココヤシ(Cocos)、ヤシ核油(kernel oil)を含む場合もありますが、ココヤシは異なる品種です。大豆と並んで世界で最も生産量の多い油脂で、食用のみならず、石鹸などにも加工されます。
パームオイルは飽和脂肪酸ですから、トランス脂肪同様にパンやケーキなどの形を保つことが出来、トランス脂肪の有害論を受けて需要が伸びています。
値段が安いこともあり、1990年ごろより需要が急増。世界の総生産量は3,000万トン/2004で、植物性食用油の28%を占めます。これは大豆3,500万トン/2004に次いで、世界第2位の生産量となり、近々に大豆を追い越すとも言われています。
マレーシアの1,400万トン/2004が世界最大で、インドネシアの1,100万トン/2004がそれに次ぐ生産量です。マレーシアは1980年が258万トン、1985年が410万トンですから、その生産量の急増は、プランテーションの造成、廃棄物の増大など自然破壊を引き起こし、国際的な論議を招いています。マレーシアのアイ・オー・アイ(IOI group)が著名な多国籍企業で、一時はユニリーバの傘下であったローデルス・クロックラーン社(Loders Croklaan)を買収しています。
パームオイルの2004年の平均値段は340米ドル/トンであり、大豆の470米ドル/トン、生産量第3位の菜種(遺伝子組み換えのキャノーラを含む世界の総生産量1,500万トン)の666米ドル/トンに較べてはるかに安価な油です。
アブラヤシ(学名:elaeis guineensis)(学名:elaeis melanococca)
ヤシ科(palmae)俗名:オベ・パーム(obe palm), アフリカ・パーム(African oil palm)
ヤシの種の外側(メソコープ:mesocorp)から搾油します。
核から搾油したものがヤシ核油(ケルネル:kernel oil)です。
一般にイメージされる椰子はココヤシ(Cocos nucifera)ですが、種の40%が油脂成分といわれるアブラヤシは、パームオイルを採るためのヤシといえます。
変種が出来やすいようで、近似種がいろいろありますが、品種改良されて、搾油目的のヤシとなっています。近年は搾油用改良種が広大なプランテーションで栽培されています。
ちなみにココヤシのココ(Coco)はポルトガル語で猿のことです。産地ではリューマチ、鎮痛、利尿の生薬ともなりますが、根拠は不明です。
牛脂、羊脂などの総称ですが、主としてビーフ・タローがタローの代名詞です。加熱や蒸気によって脂を絞ります。これを濃縮したものがオレオ油です。マーガリン、化粧石鹸、潤滑油、化粧品など、多様な用途があります。成分は中性脂肪主成分のトリグリセライド(triglyceride)やグリースと同様です。BSE騒ぎでは狂牛病の感染媒体とも言われました。
常温では固形で、融点は摂氏40度以上です。オレイン酸を40%近く含有します。

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