世界の健康ニュース解説
米国を蝕む覚醒剤MDMA(通称:エクスタシー)の恐怖
- 急増する世界のMDMA汚染
- MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)とは
- MDMAの作用と副作用
- 神経伝達物質の減産

ところが薬による大量のセロトニンなどの生成が繰り返されると、平常時にも覚醒剤抜きでは神経伝達物質が順調に生産出来なくなります。若年層にはこの傾向が顕著に出ます。神経伝達物質が正常に作用しなくなれば、ボケ、パーキンソン病を始め、運動障害、筋肉作動障害など、様々な疾病が誘発されます。
- 肝臓障害

進行が遅いために使用者が気付かない、もうひとつの重要な副作用が肝臓障害です。
作用の強い医薬品は、肝臓の解毒作用が働くために、肝臓に大きな負担が掛かります。正式に発売される医薬品は肝臓負担を軽減する工夫がされますが、覚醒剤の肝臓への負担は非常に大きいままです。肝臓障害そのものも死に至る病ですが、様々な重要機能を持つ肝臓は、重篤な疾病を誘発します。
- 脱水症状、体温の異常上昇

MDMAは過剰飲酒、高温など、服用する環境が悪く、多量摂取した場合は、脱水症状(dehydration)、体温の異常上昇(hyperthermia)などによる直接的な死亡事故も報告されています。
この環境はオールナイト・ダンス・パーティーといわれています。
睡眠不足で抵抗力が弱り、暖かい雰囲気で、お酒が入り、激しい運動(ダンス)をすることが、他の副作用の発現も促進します。 - MDMAと混ぜ物による死亡事故
- MDMAの主要生産地
- レイヴ(レイブ)で拡大する米国社会のMDMA汚染
- 米国の麻薬規制と麻薬消費量
昨年ごろから、日本では覚醒剤のMDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン 通称:エクスタシー 以下MDMA)の輸入密売が急増しています。
昨年(2004年)は前年度比200%を超える約41万錠が押収されましたが、今年の2月11日に埼玉県で摘発されたケースは史上最大の規模で約29万錠、末端価格で11億円強ともいわれています。覚醒剤のMDMA汚染は若年層を中心に世界中で急増しており、健康への新たな脅威となりました。特に米国社会の汚染は深刻です。
国際警察(Interpol)のMDMA押収データは新しいものが入手できませんが、1999年の世界レベルの押収量は2200万錠といわれており、これは前年の約4倍増となります。このうち米国での押収量が半分以上を占めます。1999年のヨーロッパ全体の押収量は141万錠で、これも前年(1998年)の約3倍増です。欧米ともに2000年以降も増加傾向は収まっていません。
MDMAは「麻薬への移行」、「経済的理由で重大犯罪を実行する」、などが主な害悪とされて、ヘロイン、コカインなどの麻薬に較べ、体に害になると思わない使用者が多いようですが、MDMAの本当の怖さは神経障害から始まる肉体の損傷です。
メチレン・ジオキシ・メタ・アンフェタミン(3,4-Methylene-dioxymethamphetamine)C11H15NO2の頭文字です。
ほとんどの麻薬、覚醒剤が天然由来か、その化学式で合成されたものですが、MDMAは化学的にデザインされて合成されたものです。このようなものを欧米ではデザイナー・ドラッグと呼びます。経口で使用される白色の粉末ですが、様々な形や色の錠剤、カプセルに加工されており、純度なども様々です。日本では「エクスタシー(Ecstasy)」が最も著名な通称ですが、世界にはE, X, Adam, B-bomb Disco biscuit, Morninng shot, Cristalなど30以上の隠語があるようです。
類似のものにMDA(メチレンジオキシアンフェタミン)(3,4-Methylene-dioxyamphetamine)があります。
経口で服用後4-6時間、幻覚作用や覚醒作用が続きます。
神経の混乱、不安感、鬱病的状態、不眠作用が副作用と言われますが、本当に恐ろしいのは神経障害と肝臓障害から併発する重篤な疾病です。
HIV(エイズ)やBSE(狂牛病)と同様に遅効性で死に至るために、現時点ではMDMAを原因とする疾病の罹病者が多い割に、死亡者は少なく、切迫感がありません。しかしながら時の経過とともに死亡者が増加していくのは間違いないでしょう。知識が薄い、無知な若年層の服用が増えていることが憂慮されます。
MDMAの幻覚作用はセロトニン(serotonin)、ドーパミン(dopamine)、ノルエピネフィリン(norepinephrine)など神経伝達物質(neurotransmitters)が急増することで起こります。
もう一つMDMAが怖いのは、混ぜ物(adulterants)が多いことです。MDMAは他の薬品が混入された場合や他の薬品と併用した場合に事故率が急激に高くなることが多いそうです。混入の場合は使用者がそれを存知していないことがほとんどといわれますから厄介です。
最も多い混ぜ物はパラメトキサンフェタミン (paramethoxyamphetamine)(PMA)という類似品ですが、闇ルートではMDMAとして売られることが多いそうです。これは効果発現がMDMAに較べてやや遅いために、追加量を服用する人が絶えないそうです。このドラッグは多量に服用すると直接的な死の危険もあります。
PMA以外の混入物には*メスカリン(mescaline)、メタアンフェタミン(methamphetamine)コデイン(codeine)、デクストロメトルファン(dextromethorphan)(DXM)等いくつもあります。
(November 2002 Pulse Check report)
また、多くの使用者はマリファナ(marijuana)や*ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)、コデイン(codeine)、バイアグラ、LSD(HP1470参照)等他のドラッグや診断処方薬と併用します。ヘロインの補助にMDMAを併用する人もいるそうです。これは非常に危険な行為で神経障害、肝臓障害を急速に促進させることになります。
*メスカリン(mescaline):サボテン(ロフォフォラ・ウィリアムシー)(Lophophora williamsii)の幻覚物質として知られる。
*ベンゾジアゼピン系誘導体には睡眠薬で著名なハルシオン(Halcion)があります。成分名はトリアゾラム(triazolam)(C17H12Cl2N4)です。
MDMAは米国を蝕んでおり、陸海の税関(The U.S. Customs Service) (USCS)で摘発されたMDMAは1999年が350万錠、2000年が930万錠と急増しています。国内で取り締まるEDA(the Drug Enforcement Administration)が押収した300万錠を加えれば、合計1230万錠となり、米国は世界の最大消費地と言えます。(2001年のEDA摘発量は550万錠)(ONDCP資料)
米国では1993年ごろから流行が始まり、2001年には年間180万人が新たに手を染めたそうです。調査によれば18-25歳の使用者が675千人を超えて、社会問題化しています。
米国疾病予防管理センター(CDC)のデータに拠れば、2000年のドラッグ関連の死亡者は19,698人に上ります。前年も同様に19,102人を数え、年々死亡者は増加傾向にあります。
MDMAは米国の文化でもある学生などのオールナイト・ダンスパーティーや夜のクラブなどで使用されていましたが、近年は個人の家、高校、学生寮などにも拡がってきています。
現在MDMAの温床はレイヴ(rave)といわれます。1980年代後半にサンフランシスコ、ロスアンジェルスで始まったレイヴは「ドンちゃん騒ぎナイトクラブ」のことですが、最近では都市部のどこにでもあります。高い入場料を取るレイヴが人気あるのは、MDMAが入手出来て、服用効果を高める、飲酒やダンスなどをする施設だからといわれます。政府や自治体はレイブの規制を模索していますが、堅気の方が近づくところではなさそうです。
1992年の米国社会全体では、麻薬撲滅対策関連費用として推計1020億ドル(約12兆円)が投じられており、2000年にはこれが1607億ドルになったそうです。議会では2004年の対策費として117億ドルの国家予算を要求しています。テロ同様に麻薬や覚醒剤は米国社会の大きな脅威となっているわけです。
MDMAは1988年にはすでに規制物質となっていましたが、2000年にはエクスシー不拡散条例(Ecstasy Anti-Proliferation Act of 2000)が施行されて、規制が強化されました。それでも増加傾向にあるMDMAの規制は2001年11月の改訂で、更に懲役など罰則が強化されました。規制強化の効果により、学生など若年層の使用は漸減しているそうです。
米国では末端価格で総計700億ドル近くの麻薬、覚醒剤が消費されます。内訳は、歴史のあるコカインが年間360億ドル、マリワナが110億ドル、ヘロインが100億ドル、メタアンフェタミンが54億ドル、ドラッグ類は24億ドルと言われます(2000年)。キロ当たり1-3万ドル前後のコカイン、5万-20万ドルはするヘロインに較べれば、MDMAは単価が安いこともあり、消費金額は小さいのですが、問題は使用者が増加していることです。MDMAの卸売り価格は5-17ドル/錠、小売価格は10-50ドル/錠といわれます。

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