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スギヒラタケ中毒で死亡?
スギヒラタケは新潟などではモタセと呼ばれ、愛好者が多い食用キノコです。このキノコは食用のヒラタケ(栽培種ではマイタケとも呼ばれる)の仲間であり、杉林に群生する美味しいキノコとして、きのこハンター達の人気の的となっていました。
きのこ研究先進国の欧米でも、天使の翼(angel's wings)と愛称され、食用として認識されています。
スギヒラタケはスギの朽木などの側面にびっしりと生えますので、発見したときには大量に収穫できます。急性脳症との因果関係はまだ不明ですが、弱毒キノコといわれるものや、安全と考えられているキノコも、同一キノコを大量に摂食すれば、中毒原因となる可能性は否定できません。
ただし、これまでの例では、毒キノコといわれる品種でさえ、特別な猛毒キノコを除いては、よほど大量に食さない限り、死に至るきのこは稀でした。
キノコ毒素は6-7種類くらいが分離されており、通常は複数の毒素が一つの個体に含まれます。キノコは一般的に大なり、小なり毒素を持っているといわれます。含有量、含有比率は個体ごとに大きく異なりますから、安全といわれたキノコの品種が危険なキノコになる可能性は大いにあり、否定はできません。
また摂食した人の体重や体質も中毒発生の可否に関係してきます。少量の摂食で致死率の高いのはアマトキシン(amatoxins)などのペプチド毒(Cyclopeptide)ですが、この毒素は研究が進んでおり、毒素を大量に含有するキノコはタマゴテングタケ(Amanita phalloides)、シロタマゴテングタケ(Amanita verna)、ドクツルタケ(Amanita virosa)など、テング属を中心にかなり限定されます。
スギヒラタケに多く含まれる糖結合タンパク質のレクチン(Lectins)が原因(血液を凝固させる)になることも考えられますが、少なくとも欧米では死亡中毒原因物質としての研究報告が見当たりません。脳障害はウィルスが原因となることがほとんどですから、今回の事件の背景は複雑なのかもしれません。腎臓病の透析をしている人が多いとも言われており、その辺りに何か原因があるかもしれません。
原因をウィルスではなくキノコと断定するならば、推測できる毒素はシロシビン(Psilocybin)、L-イボテン酸(ibotenic acid) 、オレラニン(Orellanine)、ギロミトリン(Gyromitrin)ですが、シロシビンは幻覚をおこす毒素ですから可能性は低いといえます。
キノコのうまみの成分ともされるのがL-イボテン酸と派生物のL-トリコロミン酸(tricholomic acid)です。テングダケに含まれる成分とされていますが、今回のスギヒラタケには、これらが特別に大量含有されていた可能性もあります。この成分は旨みの基ですから美味しいキノコに多く含まれているといわれます。L-イボテン酸は毒素に分類されており、大量に摂食した場合は、脱炭酸して生成されるムッシモ−ル(muscimol)により神経障害を起こすことが報告されています。オレラニン(Orellanine)は腎臓障害をおこす毒素(nephrotoxic)として知られていますが、毒素含有キノコはヌメリササタケ(Cortinarius pseudosalor)が報告されているくらいです。
またギロミトリン(Gyromitrin)は美味しいといわれるシャグマアミガサタケ(Gyromitra esculenta)に含有される水溶性の猛毒ですが、ヒラタケ類に毒素として含まれる可能性は不明です。
事件の詳細は、わかり次第続報いたしますが、当分はスギヒラタケの摂食を控えることが賢明です。欧米では中毒の対応として強制嘔吐、胃腸洗浄の他、消化器系の中毒には、炭粉やトリペプチドのグルタチオン、神経毒の解毒にはチオクト酸(α-リポイック酸)(α-lipoic acid)が有効といわれています。
※ 2004.11.11現在、スギヒラタケ中毒と疑われる事例は、新潟、秋田、山形、福井、鳥取各県で50数件の発生、死者16人の報告があります。

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