世界の健康ニュース解説
ひじきの砒素は危険 英国食品規格庁が摂食中止を勧告
(このコラムは2009年1月に構成のみ再編集されています)
- 英国の食品企画庁がヒジキの摂食に警告
- ヒジキ(Hizikia fusiformis)とは?
- 日本製ヒジキに含有された無機砒素
- 無機砒素(亜ヒ酸)の危険性
- 英国食品企画庁発表の背景
- 日本海、東シナ海沿岸地域国に多い砒素摂取量
- 日本の行政機関からの警告は?
- 砒素とは
- 人体が砒素を吸収するルート
2004年7月28日に、英国の食品企画庁(Food Standards Agency)が発表した、海藻に含まれる無機砒素(inorganic arsenic)の調査報告が波紋を呼んでいます。英国政府はヒジキを食べないように全国レベルの警告を出しました。食品企画庁(Food Standards Agency)は2000年に新たな立法に基づき設立された、食の安全を監視する官庁。農水省や厚生省からは独立した機関です。
ヒジキ、ひじき(Hizikia fusiformis)(ホンダワラ属:Sargassaceae)
日本、韓国の特産。温暖な日本近海の岩礁が主産地。最近では日本、韓国ともに養殖も行われています。産地により形状が異なりますが、最大80cmくらいに成長し、茎(長ヒジキ)、葉(芽ヒジキ)が食用とされます。
日本の生産量は7,247トン/2000年、長崎県、千葉県、三重県の三県で60%を占めます。
日本では韓国からの輸入品の量が国産を上回るようになりました。
生のヒジキは褐色をしています。食用の商品は 煮沸後、乾燥した黒色が大部分です。
英国ヨーク州の中央科学研究所 (the Central Science Laboratory, Sand Hutton, York.)では、アラメ、ヒジキ、昆布、海苔、ワカメ(arame, hijiki, kombu, nori and wakame)の5種類の分析が行われましたが、大量の無機砒素(a significant level of inorganic arsenic)(乾燥品、約66-90mg/kg)が検出されたのは、ヒジキのみでした。
ロンドン近郷のスーパーなどで買い集められたサンプル数は合計31個です。分析の対象となった31個体のブランド数は不明ですが、日本製と、名指しでの発表ですから、日本から輸出されたものでしょう。
ヒジキの無機砒素は分析された9個全てから大量に検出されました。
一般的な有機砒素は、ある程度全ての検体から検出されたそうですが、無機砒素は昆布、海苔、ワカメからは検出されていません(分析精度不明)
無機砒素は肺癌、皮膚癌などの発ガン物質(carcinogen)として危険視され、特にガンの進行を早める物質(promoter)として認識されています。
砒素はいろいろな形で存在しますが、特に三酸化砒素の亜砒酸(As2O3)は歴史的に毒物として著名です。和歌山のカレー混入事件(1998年)や、古くは森永の砒素入りミルク事件(1955年)で脚光を浴びたのは亜ヒ酸です。
日本などで、ヒジキの摂食が問題にならなかったのは、無機砒素は海洋生物の体内でメチル化し毒性の弱い有機の砒素になると考えられていたからです。また褐藻類(brown kelp)に含まれる砒素の80%くらいは糖結合物(sugar derivatives)として存在するという報告もありました。
この調査はカナダの食品検査局(Canadian Food Inspection Agency)がヒジキの無機砒素を問題視して、摂食を止めるよう勧告(2001年)したのがきっかけでした。
欧米ではダイエットなど健康食品として海藻が珍重され、特にヴェジタリアンの需要も多くあります。また中国人、韓国人、日本人の居住者も多く、各国の郷土料理、伝統料理には欧米人のファンがいます(食品企画庁の警告は英語、中国語、韓国語、日本語でも出されています)
魚類の好きな中国人(沿海部)、韓国人、日本人の砒素摂取量は世界のビッグスリーとなっています。欧米人に比べ5-10倍*以上の摂取量といわれてきましたが、今回の警告は、この伝統的な習慣が自国民にとって危険であると言うことでしょう。
今回の研究報告に関連して、甲殻類を含めた魚類の無機砒素含有も話題となっています。
海洋生物は陸上生物に較べ、最高1000倍くらいの砒素を含有するといわれていますが、カレイ、ひらめ類(plaice)など底魚の危険性が特に指摘されています。
日本の農林水産省、厚生省、環境庁からは、英国やカナダのような調査報告は得られませんでした。
民間には、ヒジキの含有砒素は60%が有機の砒酸塩(arsenate)、20%が無機の亜ヒ酸塩.(arsenite)という研究報告(Fukui et al., 1981)(未確認)などがあります。また海水に含有する砒素(0.001-0.008 mg/l)の3分の1から半分は、亜ヒ酸という研究(Andreae, 1978, Johnson, 1972)(未確認)もあります。
* 砒素の研究は環境汚染の激しかった1970年代のデータが多いのが特徴的ですが、環境汚染対策が進んでいる現在は、当時に較べて諸データ数値が低くなっています。
8. 砒素とは
砒素、ヒ素(Arsenic)(As)分子量 299.68、半金属性元素。
砒素は硫砒鉄鉱(Arsenopyrite)(FeAsS)、鶏冠石(Realgar)(As4S4)、黄鉄鉱(Pyrite)(FeS2)などから分離流出しています。結合鉱物によって黒、灰色、黄色など同素体があります。
土中では銅、鉄、鉛などとともに砒素化合物(arsenides)(硫化鉱物:sulfidesの一つ)として存在することが多く、平均的な土壌では40 mg/kg位になります。
工業用途として、合金添加剤、ガリウム砒素など半導体、木材防腐剤、脱硫剤、ガラス脱色剤、農薬、殺虫剤などに使用されます。
生薬では鶏冠石に近い、硫化砒素化合物の雄黄(ゆうおう)があり、毒性を解毒、殺虫に利用します。
砒素は鉛(Pb)、総水銀(Hg)とともに、土壌、水が環境汚染の調査対象重金属となっています。
(中毒症状など健康被害については、他に多くの情報がありますので割愛します)
砒素は、水、空気、食品の三つのルートから人体に吸収されます。
(空気)空気は一部の鉱山や火力発電所(石炭は1000 mg/kg含有するものがあります)、特殊な金属加工場等汚染場所は限定されます。空中の砒素は危険な亜ヒ酸(As2O3)が主であり、吸入量が多い場合は肺がん、気管支がん、胃腸管出血、肝障害、皮膚角化症、多発性神経炎など重篤な中毒症状になります。
(水)ヒ素は従来から、特に水の汚染が問題視されており、砒素を多く含む鉱物を産する地方*では濃度が高くなり、砒素公害の原因となります。
*宮崎県土呂久鉱山、島根県笹々谷鉱山、栃木県足尾鉱山など。
ヒ素は土壌にはごく一般的なミネラルですが、一般的な水道水に0.01 mg/lくらいは含有されているという報告があります。1mg/l 位の水道水も海外にはあるそうです。500mg/lを超えるものが汚染水とされます。インドの西ベンガル州では黄鉄鉱(Pyrite)由来のヒ素の汚染水で20万人を超える中毒患者が出たそうです。
(食品)植物性の食品には一般的に<0.02 mg/kgくらいのヒ素が含有されています(米国FDAの分析調査では日常的な食品の24%から砒素が、検出されたそうです)。
韓国人、日本人は海産物経由(魚の砒素含有量は、平均的に5 mg/kg以上といわれます。またカニ肉から30 mg/kgが検出された例もあるそうです)の摂取が大部分ですが、欧米人や中国人には豚や鶏経由(1 mg/kgから最高10 mg/Kgくらい)が多いといわれています。英国のデータでは平均的な英国人で81マイクログラム(µg)/日くらいの摂取があるそうです。
豚や鶏は成長促進や病気予防に砒素が投与されていたことがありました。
人体の寛容摂取量はFAO/WHOなどで、体重辺りの目安はありますが(0.05 mg per kg body weight per day)いまだに確定データが不足のようです。
また体内蓄積が少ないと思われていた、ヒジキ摂取後のヒ素代謝実験も、個人差が激しく、代謝量の結論は得られないようです。
砒素はワインや、出所が確かでないウィスキーからも0.1 mg/lから0.4 mg/l位検出され、健康を謳う海藻類などのサプリメントからは50 mg/kgが検出されたそうです。

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