世界の健康ニュース解説
マラリア特効薬のアーテスネート(artesunate)
世界保健機構(WHO)がヨモギ・パワーを全面的に推奨
今年も4月25日はアフリカ・マラリアの日です。アフリカ諸国及びマラリア撲滅に指導的な地位にある世界保健機構(WHO)はマラリア撲滅キャンペーンの折り返しに当たる今年は、特にアーテスネート(アルテスネート)などのアルテミシニン(アルテミンシン)治療法を徹底するよう訴えています。
- アフリカ・マラリアの日(Africa Malaria Day)
- マラリア感染の現状と抗マラリア薬耐性寄生虫の増加
- マラリア原虫(malaria plasmodia.)とは
- クソニンジンから抽出されるアーテスネート(アルテスネート)(artesunate)
- アルテミシニン(アルテミシン)(artemisinin, artemisine)の予防薬、治療薬
- Arinate(アリネート): アーテスネート。中国の桂林薬品(製薬)
- Artequin(アルテキン):メフロキンとアーテスネートの複合剤。メファ社(Mepha)
- Alaxin(アラキシン):ジヒドロアルテミシニン。ナイジェリアの会社(Greenlife Pharmaceuticals Company Limited)著名なCotexin(コテキシン)の模倣として訴訟中。
- Coartem(コアルテム):アーテメターとlumefantrineの合剤(artemether-lumefantrine)。lumefantrine-blood schizonticideの詳細はわかりません。ノバルティス・ファーマ社(Novartis Pharma AG)
- Cotexin(コテキシン):ジヒドロアルテミシニン。東アフリカで非常にポピュラー。ナイジェリアの会社(Churchbells Pharmaceuticals Ltd)が発売元。中国の北京コルテック新技術社とのライセンス(Beijing Cotec New Technology Corp)。桂林薬品製との関連は不明。粉末と錠剤がある。
- Riamet(リアメ):コアルテム(Coartem)のヨーロッパ・ブランド
- Paluther(パリュウテル)(パリュウサー):アーテメター。ブラジル、サンポーロのディア社(Rhodia Farma Ltda)注射薬のみといわれる。
- Plasmotrim Lactab(プラズモトリム・ラクタブ):アーテスネート。メファ社(Mepha)注射薬、座薬、錠剤
- Plasmotrim Rectocaps(プラズモトリム・レクトキャップ):メファ社(Mepha)
- タイのアトランティック製薬(Atlantic Pharmaceuticals ,Bangkok)が発売するアーテスネートは桂林製薬製品の詰め替え品です。
- 混同されるカワラニンジン(青蒿)とクソニンジン(黄花蒿)
- キク科(Compositae)ヨモギ属(Artemisia)の主要な薬草
- クソニンジン、Chinese wormwood 、Qing Hao黄花蒿(おうかこう)(Artemisia annua L)

- カワラニンジン、Chinese wormwood 、Qing Hao青蒿(せいこう、チンハオ)(Artemisia apiacea Hance)、解熱、疥癬。
- ニガヨモギ、wormwood、(Artemisia absinthium Linn消化器疾患。リキュールのベルモットの主成分に使用される。スピリッツのアブサンにも混合されています。

- タラゴン、Tarragon、(Artemisia dracunculous)消化、下剤、催眠。
- ヨモギ、 艾葉(かいよう)(Artemisia princes Pamp) 若芽が草もち、草団子に。灸のモグサにも使用される。胃、貧血、下痢。
日本にはヨモギの類似種が30種はあり、場所名など様々な名がつけられています。

- オオヨモギ、Arnica、 艾葉(かいよう)(Artemisia Montana Pampan)灸のモグサ。胃、貧血

- カワラヨモギ 茵陳蒿(いんちんこう)(Artemisia capillaries Thunb) 黄疸、皮膚疾患。

- WHOが推奨するACT治療(artemisinin-based combination therapy)
- アルテミシニン(アルテミシン)の需給が緊迫
- 2004年開催国セネガル(Republic of Senegal)とは
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アフリカ・マラリアの日は2000年4月25日に制定されました。この日にナイジェリア(137,253,133)の首都アブジャ(Abuja, Nigeria)において、マラリア撲滅サミット会議がアフリカ諸国44カ国によって開かれたことに始まります。会議では10年間でマラリアを撲滅することを誓いましたが、2005年はその中間点に当たります。
昨年(2004年)のスローガンは「マラリアの無い未来」、「子供の感染を防ごう」(A Malaria-Free Future。 Children for Children to Roll Back Malaria.)、2005年は「マラリアに対して団結しよう」「共にマラリアを撲滅しよう」(Unite Against Malaria、Together We Can Beat Malaria)です。キャンペーン都市は毎年変わり、昨年の催事が行われたのは旧フランス領セネガルのマタム(Matam region of Senegal)でしたが、今年は旧イギリス領のザンビア(Zambia)(人口10,462,436)です。
昨年のキャンペーンではセネガル人(セネガルの解説は巻末)の世界的なポップ歌手ユッスー・ンドゥール(Youssou N'Dour)なども協力公演をおこない、マラリアの日が世界的に知られるようになりました。
(2011年4月注:アフリカ・マラリアの日は2007年5月から、毎年4月25日を世界マラリアの日とすることになりました。当初の議決目標よりだいぶ先になりましたが、WHOが主導して世界の協力により2015年までのマラリア撲滅を目的としています)
世界人口の40%を超える24億人、90カ国の人類とマラリアの戦いは世紀を超えています。
いまだに世界では2〜3億人が感染し(3-5億人の説もあります)、5歳以下の幼児を中心に毎年250万人近くの死者が出ています。
これは感染症としては結核に次ぐ規模です。サハラ砂漠以南のアフリカ大陸が世界の発生の90%を超え、30秒に一人の子供が死亡していますが、これは出生5人に対して一人の死亡率です(WHO)。
マラリアの発生は貧困と密接な関係があります。
過去に多発地帯であったタイのバンコック、中国の沿海部南などの地域では、経済が豊かになるとともに、マラリアは大幅に減少しています。
現在のアジア太平洋地域の感染は395,607人、死者は1507人/2003年で、死者の多い順ではカンボジア、パプア・ニューギニア、ラオス、フィリッピン、ソロモン群島、中国、ヴェトナムなどが挙げられます。
これに反して経済的な問題国が多いアフリカ諸国では、蚊を防ぐことも、治療薬を入手することも困難なために感染者が絶えません。
撲滅を困難にしているのは、主たる感染地のアフリカ諸国はもとより、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで、抗マラリア薬の主流であるメフロキンに耐性のある熱帯熱マラリア原虫が急増していることもあります。
このような状況下で2000年ごろから話題となっているのが、ヨモギ由来の安価で、耐性寄生虫に有効なマラリア治療薬のアルテミシニン(アルテミシン)水溶性誘導体です。
マラリア原虫はアジア、アフリカ、中南米、オセアニア、カリブ諸島など熱帯、亜熱帯で非常に多い寄生虫で、感染地は地球人口の40%を占めます。
マラリアは熱帯、亜熱帯特有のハマダラ蚊(Anopheles)のメスによって媒介されます。ハマダラ蚊によって人体に侵入する寄生虫はマラリア原虫(malaria plasmodia.)と呼ばれます。マラリア原虫には熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)の他、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax) 、卵形熱マラリア原虫 (Plasmodium ovale) 、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae) などの種類があります。
4種類の原虫の中で、特に熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)の病害性が強いと言われます。高熱、脳障害、腎不全など様々な症状が発症し、死に至ります。古くは第二次世界大戦の南方作戦で、日本の軍隊に多発しました。当時はコレラなども多く、疫病死が戦死者を上回るとも言われたものです。
マラリア治療には、伝統的なキニーネ系のメフロキン(mefloquine)治療薬などに、寄生虫の耐性が出来ている問題点があります。
2000年ごろより、耐性を持ったマラリア原虫の駆除に世界が注目しているのが、中国の伝統的な漢方薬、黄花蒿より開発されたアーテスネート(artesunate)です。
大手製薬会社の関心が薄いマラリア治療薬市場で、中国の桂林製薬(Guilin Pharma)(広西チワン自治区:Guangxi)は独自に生薬由来のマラリア治療薬を開発しました。ヨモギから抽出されたマラリア治療薬はアリネート(Arinate)と名付けられ、困窮する西アフリカに広範囲に供給されています。
特効薬として知名度が上がると共にタイ、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどでは桂林製薬製品の偽薬が大量に出回っており、WHOなどでは注意を呼びかけています。桂林製薬では、偽物が価格的に対抗できないように、大量生産によって価格を引き下げることを考えているそうです。
アーテスネートはヨモギの近似種類であるキク科ヨモギ類のクソニンジンから抽出したアルテミシニン(アルテミシン)の水溶性誘導体(C15 H22 O5.)です。
クソニンジンは紀元前より暑さを凌ぐ薬草や痔の薬として知られていましたが、1972年に中国薬学院(Chines Institute of material medicine)で分析され、1980年代に広東省を中心に抗マラリア、抗ワイル氏病(Weil's decease)に著効を示すという研究が進みました
アーテスネートはキニーネ系のメフロキンと併用すれば重症な熱帯熱マラリア原虫に特に有効と言われます。メフロキン(mefloquine)製剤の商品名にはスイスのメファ社(Mepha)のメファキン(Mephaquin) 、ロシュ社(Roche)のラリアム(Lariam)などがあります。
現在までのところアルテミシニン誘導体にはアーテスネート(artesunate)、ジヒドロアルテミシニン(dihydroartemisinin)、アーテメター(アーテメセリ)(artemether, artemetheri)などが知られています。
中国の桂林製薬が開発したアーテスネートは学名Artemisia annua L、漢方薬名では黄花蒿(おうかこう)を基本にしているといわれます。黄花蒿は和名ではクソニンジンを指します。古来の漢方薬名である青蒿(せいこう)は学名がartemisia apiacea Hance、 和名はカワラニンジンです。
欧米では学名:Artemisia annua Lを青蒿と訳していますが、この学名は近縁類の黄花蒿(おうかこう)です。青蒿と黄花蒿は中国、日本でも古くから混同していたようです。
カワラニンジンとクソニンジンは本州以南では野山、平地に普通に見られる植物ですが、中国や欧米でもごく普通の植物です。欧米ではキク科のヨモギ類にSweet Wormwood Herb, Sweet sagewort, sweet Annie, Chinese wormwoodなど通称が沢山ありますが、かなり混同して使用されています。
ニガヨモギを青蒿と混同する解説もありますが、これはArtemisia absinthium Linnという別種です。
カワラニンジン(青蒿)とクソニンジン(黄花蒿)が混同されている背景には、現代中国(中華人民共和国薬典:1977年)で双方の植物を生薬の青蒿(チンハオ)として認定していることがあるようです。
クソニンジンの香りはカワラニンジンより数段に強いことから、主成分のトリテルペン類セスキテルペン(sesquiterpene lactone)がより多いことが推察されます。

写真提供:王壮快
ACT治療はアルテミシニン・ベース混合治療(artemisinin-based combination therapy)の略語です。
(アルテミシニンとアルテミシンは同義語です)
マラリアにはいまだにワクチンがなく、現在開発途上ですが、完成するまでにしばらく時間がかかります。
WHO は急増する抗マラリア薬耐性寄生虫の対策として、これまでの抗マラリア薬のみの治療をACT治療に換えることを推奨しています。マラリアは種類によって効果のある薬が限定されますが、もっとも重篤な症状がでる熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)にはACT治療が最適といわれます。
これまでの抗マラリア薬とはキノリン混合体(quinoline compounds)のキニン(quinine)、クロロキン(chloroquine)、アモディアキン(amodiaquine)やスルフォナミド(sulfonamides)、ピリメタミン(pyrimethamine)等です。
ACT治療はアルテミシニン誘導体(artemisinin derivatives)医薬品 を主体として上記のキノリン系、スルフォナミド系抗マラリア薬等を組み合わせたものです。
WHOによればACT治療の要求は2004年で3,300万セットあり、2005年では132百万セットと予測しています。昨年開かれたWHOなどと生産者による会議では、本年(2005年)は最低でも1億セット分の生産が必要としています。
WHOがACT治療を推奨していることから、アルテミシニン(artemisinin)を抽出するクソニンジンの生産が追いつかなくなっています。
アルテミシニン医薬品群ではジェネリック医薬品(generic)を生産するノバルティス・ファーマ(Novartis)のコアルテム(Coartem)がWHOにトップ推奨されています。
WHOが中国製品でなく、後発のノバルティスを推奨するのは、同社がジェネリックにより困窮するアフリカ諸国にコアルテムを格安に提供しているからです。クソニンジンは栽培に6ヶ月はかかり、アーテスネートなどの製品を作るには、更に2-5ヶ月かかります。
ハーブは生産地、生産時期によって成分が大幅に異なりますが、農業生産物は前もって、充分な生産計画があれば目標を達成することはそれほど困難ではありません。これまではこのような急増を予想していませんでしたので、しばらくは一時的な不足状態が続く可能性があります。

西アフリカの北大西洋に面した、サハラ砂漠南側の独立国。日本の約半分(197,161km2 )の国土。ギニア・ビサウ(Republic of Guinea-Bissau)、モーリタニア(Islam Republic of Mauritania)ギニア(Republic of Guinea)、マリ(Republic of Mali)、ガンビア(Gambia)に隣接しています。
人口約10,580,307人 ( 2003年)、旧フランス領で1960年に独立しました。首都はダカール(Dakar)。
1982年にはガンビアと合併(Senegambia)しましたが、現在は離別しています。イスラム教徒(Muslim)が 94%を占め、労働人口の70%は農業、漁業従事者ですが、国民総生産に占める農業の割合は低く、18%くらいにしかなりません。失業率は都市部の若者で約48%(2001年)にもなります。

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