<<< ノギボタニカルのトップページへ

世界の健康ニュース解説

インドネシアで動物由来感染症のデング出血熱拡大

インドネシアで広範囲な地域にデング出血熱(dengue hemorrhagic fever,:DHF)の増勢が続いています。
連休などでアジアを訪問される方は注意が必要です。


INDEX

1. インドネシアのデング熱ウィルス汚染地
2. デング熱(dengue fever)とは
3. デング出血熱(dengue hemorrhagic fever)
4. デング熱ウィルスは変異を繰り返す
5. デング熱、デング出血熱の防御対策
6. 新殺虫剤ピペリン「SS220」の開発
7. 防虫繊維の開発

    1. インドネシアのデング熱ウィルス汚染地
    WHOとインドネシア厚生省より公表された数字は、今年1月1日から2月26日までの期間で、感染者14,626人。死者は260人でしたが、3月3日には感染者23,857人、死者367人となりました。
    現在までに、感染地として、ジャワ島(Java:首都ジャカルタが所在する。人口の60%が居住)、
    南カリマンタン(South Kalimantan:ボルネオ島)、南スラウェシ島(South Sulawesi)、バリ島(Bali)、東西のヌサ島(East and West Nusa)、チモール島のテンガラ(トゥンガラ)(Tenggara)、スマトラ島のアチェ(Aceh)など、広範囲の地域が挙げられています。


    2. デング熱(dengue fever)とは
    デング熱(dengue fever)は熱帯の蚊(Aedes aegypti 、Aedes albopictu)によって媒介されるフラビウィルス科(flavivirus)のズウノティック感染症(zoonotic disease)です。ズウノティックは動物由来感染症(animal borne disease)ともいわれ、ウェストナイルウィルス、日本脳炎、黄熱病、セントルイス脳炎など(ライブラリー0280参照)が近縁種です。
    デング熱ウィルス(dengue virus)の血清タイプ(serotypes)には4種類ありますが、今回の流行で検出されたのはタイプ3(DEN-3)が大部分でした。
    デング熱は熱帯の蚊が媒介するウィルスに感染する風土病です。感染者は非常に多く、通常はインフルエンザ様の症状が見られる程度で収まることが多いのですが、デング熱既往症があると、はるかに重篤な症状のデング出血熱(dengue hemorrhagic fever, DHF)感染の確率が高くなるといわれます。

    3. デング出血熱(dengue hemorrhagic fever)
    デング出血熱は潜伏期間3−7日間で、血漿漏出、腹水、胸水、肝臓膨張などがみられ、死亡率も格段と高くなります。
    すでに数百を超える異種株(strain)が出来ているため、有効なワクチンはありません(有力なワクチンがタイで開発中という情報はあります)。
    最近ではアジア、中南米で5年ぐらいを周期として多発し、特に平年より平均温度が摂氏2度くらい高い年に、重篤な症状となるデング出血熱の流行(epidemics)が見られるといわれます。


    4. デング熱ウィルスは変異を繰り返す
    周期があるのは、インフルエンザのように遺伝子が多様に変化して異種株(strain)を創りながら流行するためです。最近では1998年に東南アジア、中南米56カ国で、120万人がデング出血熱に感染した記録があり、ミャンマーでは毎年5,000人から15,000人くらいのデング出血熱発生が見られるとのことです。日本人がバリ島などで感染したケースも珍しくありません。
    デング熱が発見されたのは200年以上前ですが、最近では、世界中で、毎年1億人以上の感染者がいるといわれ、重篤な症状となるデング出血熱(dengue hemorrhagic fever, DHF)は250,000人位の罹病が報告されています。デング出血熱は東南アジア、中南米のみならず、オーストラリア、インド、アフリカ、ハワイ、中国、台湾など、蚊が生息できる熱帯地方では、何処でも発生する可能性があると考えてよいと思います。


    5. デング熱、デング出血熱の防御対策
    蚊を防ぐことが一番です。軍用に防虫剤を研究している米国では、この蚊にはDEET(ディート)(N,N-ジエチル-m-トルアミド:N,N-diethyl-m-toluamide)が最も効果があると発表しています。日本でも「虫除け」はほとんどディートです。低濃度のものが使用されています。
    DEET(ディート)は安価で効果的なため、防虫剤として世界に普及しており、今回のインドネシアのケースでも、50%濃度のDEET(ディート)が推奨されています(ただしこの濃度は噴霧用です。塗布用は子供で10%、成人で33%くらいが適当といわれます)。
    DEET(ディート)は揮発性であるために使用時間と薬効持続時間を考えて使用する必要があり、一般的に低濃度のものほど早く効果が失せます。
    ただし、濃度が高いと毒性が低いとは言えず、肌に直接使用するものは、神経障害、皮膚障害などを起こすことがあるとの報告があります。
    東南アジアや米国では100%濃度の殺虫剤も市販されていますから、含有濃度のチェックをしてください。


    6. 新殺虫剤ピペリン「SS220」の開発
    イラク、パキスタン、アフリカなどの紛争地域では、蚊を原因とするフラビウィルス(flavivirus)の流行が多発するため、国防省のウォルター・リード陸軍研究所(Walter Reed Army Institute of Research:WRAIR)では毒性の低い殺虫剤の開発が進められております。有力な製品として、50年ほど前に開発された胡椒 (Piper nigrum)などの成分、ピペリン(piperine)を原材料とする「SS220」などが候補として挙げられています。この成分は黒胡椒に最も多く含有されますが、現在、環境適合性、安全性、コスト面での検討が進められているといわれます。

    7. 防虫繊維スコーロンの開発
    衣料品に関しては、蚊を防御できる繊維のスコーロンが発売されるようですので、アジアなどに旅行機会が多い方は利用されるとよいかもしれません。
    スコーロン(SCORON)は繊維有機エステル系殺虫剤を使用した防虫繊維。人体への害が少ないという。2004 年度春夏シーズンから衣料品などに展開開始予定。帝人ネステックス株式会社、アース製薬株式会社の協同開発商品。
    ▲PageTop