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世界の健康ニュース解説

ニパウイルス(Nipah virus)の再発と宿主の大こうもり(オオコウモリ)

INDEX
1. バングラデシュでニパウィルスが発生
2. ニパウィルス(Nipah virus)とは?
3. ニパウィルスは4類感染症。
4. ニパウィルスはオオコウモリが宿主。
5. ニパウィルスの中間宿主はブタか?
6. バングラデシュ人民共和国(People's Republic of Bangladesh)
7. こうもり(蝙蝠)(学名:Chiroptera)とは 
8. オオコウモリ亜目(学名:Megachiroptera)
9. フルーツ・バット(fruit bat、Old World fruits bat)
10. 小コウモリ亜目(学名:Microchiroptera)
11. 熱帯のウィルス類に有用な抗ウィルス剤のレベトロン

    1. バングラデシュでニパウィルスが発生
    WHO(世界保健機関)は2月12日、バングラデシュ人民共和国においてニパウイルス(Nipah virus)の死者が発生したことを発表しました。
    バングラデシュ疫病研究所(the Institute of Epidemiology Disease Control and Research)やWHOは、2004年1月4日から2月8日までに、首都ダッカの近県で42件のニパ様ウイルス(Nipah-like virus)が発生し、14 名の感染者が死亡したことを報告しています。報告ではニパ様ウイルスとよばれていますが、ニパウィルスは脳炎症状などを呈する、死亡率の高いウィルスです。

    2. ニパウィルス(Nipah virus)とは?
    ニパウイルス(Nipah virus) パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae.)
    1998年から1999年にかけてマレーシアで発生し、1999年に新ウィルスとして同定された。発生地域のニパ(Nipah)にちなんでニパウイルスと命名されている。この時の記録では、マレーシア・シンガポール両地域で257例の感染例が報告されている(うち100例が死亡)。
    ニパウィルスはブタ(豚)の中枢神経組織、肺、腎を冒します。人間の場合は発熱、頭痛に引き続き、全身痙攣、呼吸不全、血圧低下によって死に至ります。 1999年の当初は、ヘンドラ・ウイルス(Hendra viruses)に類似しているといわれ、ヘンドラ様ウイルス(Hendra-like virus)と呼ばれていました。 遺伝子解析された後に、双方は同一のウィルスと呼べることが解明されたため、現在はニパウイルスに統一されています。ヘンドラウィルスは1994年にオーストラリアのヘンドラ地域で最初に発生したため、ヘンドラ・ウイルス(Hendra viruses)と名付けられました。感染者3名のうち、2名が死亡しています。

    3. ニパウィルスは4類感染症。
    ニパウイルスは発生地における医療関係者に感染者が少ないため、これまでのところ感染力は強くないと思われていました。
    しかしながら、WHOや米国CDCはこのウィルスを危険ウィルス(biohazardous agent )として位置づけ、感染各国が第1級の安全管理体制(biosecurity)をとることを求めています。
    日本では2003年11月の改正法により、鳥インフルエンザ、サル痘、レピストラ感染症、E型肝炎などと共に4類感染症に分類されました。

    4. ニパウィルスはオオコウモリが宿主
    ニパウィルスの自然宿主はこうもり(bats)と発表されており、これは大コウモリのフルーツ・バット(fruit bat)のことと思われますが、大こうもりは熱帯、亜熱帯に200種類は生息しますので、種類は不明です。

    5. ニパウィルスの中間宿主はブタか?
    人への感染は1999年のマレーシアのケースにおいて、大部分の感染者が養豚場の従事者など、豚に接触する人であったため、豚が中間宿主として疑われています。
    こうもりから豚、または他の哺乳類への感染経路、人への感染経路など詳細は不明ですが、WHOはニパウイルスをズーノティック・ウィルス(zoonotic virus)と呼んで、警戒しています。ズーノティック・ウィルスとは人獣共通感染症(ズーノシス)の原因となるウィルスのことです。


    6. バングラデシュ人民共和国(People's Republic of Bangladesh)
    バングラデシュは2002年の推定人口が約1億33百万人、80%以上がイスラム教の農業国家です。英国領、パキスタン領を経て1972年に独立国家となりましたが、狭い国土による人口過密と貧困問題が解決できていません。
    ニパウィルス感染者が発生したのは、首都ダッカ(Dhaka)北西に隣接するManikganj県 とRajbari県(provinces)です。
    バングラデシュ国土の大部分はガンジス河Ganges river(パドマ・ガンジスPadma-Ganges)、ブラマプトラ河Brahamaputra river(ジャムナ・ブラマプトラJamuna-Brahmaputra )、メグナ河Meghna river(スルマ・メグナSurma-Meghna)などのデルタで形成された平坦な地帯です。
    デルタは農業に豊かさをもたらす半面、治水の遅れから、国土の大部分を冠水させるような洪水によって破壊が繰り返されます。バングラデシュにはニパウィルスに限らず、疫病が発生しやすい背景があるといえます。(カッコ内は、河が複数合流している地域の、二つの河を複合した地理学的名称です)

    7. こうもり(蝙蝠)(学名:Chiroptera)とは
    地球上の哺乳類約4000種類のうち約1000種類をこうもり目(翼手目)が占めます。
    こうもり(学名:Chiroptera)は熱帯雨林、亜熱帯に分布するオオコウモリ亜目(Megachiroptera約 200 種)と、洞窟などに生息し、樹木のある場所なら何処にでも分布する小コウモリ亜目(Microchiroptera、約800種)に分かれます。


    8. オオコウモリ亜目(学名:Megachiroptera)
    大コウモリ(Megachiroptera)は視力を有し、果実、花を好みます。熱帯雨林に生息し、習性は一夫多妻のグループ(camps)を作るか、群生(colonies)します。オオコウモリの大きさは、体長50mm-400mm、体重15gから、最大1.5kg位、翼を開くと、最大170cmを超える種類があります。こうもりの分類は混乱してきた歴史があり、大きさのみが亜目の分類となっていません。WHOより今回発表されたニパウイルス宿主の大コウモリ(種類は不明)生息地域はオーストラリア、インドネシア、マレーシア、フィィッピン、一部の太平洋諸島です。大こうもり類は熱帯雨林、亜熱帯の植物が結実するのに、重要不可欠な生物です。
    バナナ、マンゴー、ガヴァ、ジャックフルーツ、デーツ、カシューなど多くの植物の受粉(pollinate、seed dispersal)は大こうもりによってなされます。これがフルーツ・バットと呼ばれる由縁です。
    フィリッピンなど、地域によっては食用とされる種類もあり、ペットとして世界中に愛好者がいます。

    9. フルーツ・バット(fruit bat、Old World fruits bat)
    ニパウィルスの宿主が疑われているのがオオコウモリ亜目のPteropodidae科のフルーツ・バット(fruit bat、Old World fruits bat)です。42属、173種が分類されています。
    フルーツ・バットは狐に顔が似ているためにフライング・フォックス(flying foxes)とも呼ばれ、混同されることがありますが、正式なフライング・フォックスは分類上Pteropodidae科のもう一つのグループを指します。フライング・フォックスにはOtopteropus属1種類、Pteropus属59種類が分類されています。
    おおこうもり亜目のほとんどの種類の俗名には、セレベスコバナフルーツコウモリ、ジャワオナシフルーツコウモリなど生息地の名前が付けられています。

    10. 小コウモリ亜目(学名:Microchiroptera)
    小コウモリ亜目には視力がありません。
    超音波を発信して飛行するために、発信器の鼻は特殊な形をしており、耳が大きいのが特徴です。
    昆虫、魚などの捕食、哺乳動物からの吸血で生活します。種類も多く、物語に登場するこうもりは、ほとんどがこの小コウモリ亜目の種類を指しています。

    11. 熱帯のウィルス類に有用な抗ウィルス剤のレベトロン
    ニパウィルス感染者に対する明確な治療法はありませんが、塩酸アマンタジンなどの抗ウィルス物質とリバビリン(ribavirin)が使用されているようです。
    レベトロン(Rebetron Combination Pak)はリバビリン(Ribavirin)とインターフェロンα-2bの合剤。シェリング・プラウ社 (Schering-PloughPharmaceuticals)が発売。
    この医薬品は主としてC型肝炎、ラッサ熱などの熱帯性脳炎、インフルエンザ、髄膜炎、ウェストナイルウィルスなどに使用されています。
    リバビリン(Ribavirin)は1972年ごろ、ダービン社(B&S Durbin社:英国)により開発された抗ウィルス剤です。構造は(1-β-D-ribofuranosyl-1H-1,2,4-tri-azole-3-carboxamide C8H12N4O5)。
    単独での効果は疑問視され、1990年代ごろより、インターフェロンα-2b との合剤が研究されてきました。1998年には、米国でインターフェロンとの合剤レベトロンが極めて効果的であるとの、大規模な治験報告がなされました。


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