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世界の健康ニュース解説

ビールのホップは感染症のO-157に有効か?

    この春にビールのホップが感染症のO-157に有効な働きをすると評判になりましたが、噂によると、夏場の食中毒最盛期に、中毒防止のために一生懸命ビールを飲んだ人が多かったそうです。O-157は腸管壁から出血する腸管出血性大腸菌と呼ばれ、細菌から産生されるベロ毒素(ヴェロ毒素)は大変危険な毒素です。


    有効な抗生物質がないといわれていますので、ホップが有効ならば朗報ですが、目的のポリフェノールは、一般のビールでは醸造過程でほとんどが損失しているそうですから、ホップ自体はO-157に有効でも、ビールを飲むだけでは効果がなさそうです。


    ホップが感染症のO-157に有効な働きをするという研究はアサヒビールが千葉大学大学院医学研究院の野田公俊教授とともに2003年の第76回日本細菌学界総会で発表したものです。ウサギを使用した実験室での成果ですが、ホップのフラボノイドがベロ毒素の産生を抑えるというものです。
    ただし含有されるフラボノイド類のキサントモールxanthohumol C21H22O5は醸造過程でイソキサントモールisoxanthohumol C21H22O5 になり活性がほとんど失われてしまうといわれています。


    そのため、せっかくホップが含有する有用なポリフェノールを活用したいと、大手のビール製造会社から秋田県総合食品研究所に転職した主任研究員の新藤昌さんが、ホップのポリフェノールが損失しない製造法を開発し、地ビール「湖畔の杜ビール、花」を田沢湖町、「AQULA秋田美人のビール」を秋田市で製造して、この夏に販売開始しました。
    味については試しておりませんので、コメント出来ませんが、ホップのフラボノイド類(注)が持つ、植物性エストロゲンの骨粗鬆症に対する効能やコラーゲンを破壊するコラーゲナーゼの活性を抑制する作用なども享受できそうです。課題は、酸化し易く、不安定なポリフェノール類が賞味期間に継続した効果を発揮するかどうかです。

    ホップは11世紀にはヨーロッパで醸造用に栽培が始まっていましたが、16世紀にイギリスに持ち込まれたときには、何故か迫害に遭遇しています。ホップが大衆を危険な状態にするという理由でしたが、ホップは旧くから中枢神経をコントロールする鎮静物質(sedatives)として知られ、不眠、不定愁訴、欝に有効なハーブとして活用されてきました。現在でもヨーロッパでは乾燥ホップの花を安眠枕として使用する人も多いといいます。ビールの大手製造会社が健康食品の開発に注力していることから、癌などに有効な成分など、新たなる発見が期待されています。



    ホップ Hops Humulus luplus(Cannabaceae)

    北ヨーロッパ原産といわれる。丈が5メートルにはなる、つる状の植物。毬花Strobilesと呼ばれる雌花をビール醸造や生薬として使用する。北インド、イラン、中国などに産する大麻、 マリファナmarijuana(Cannabis sativa, Cannabinaceae)の近似種類。毬花のルプリン顆粒内には、250種類以上の精油成分(Essential Oils)が存在するという。



    ホップの代表的な種類

    • ヨーロッパ Saaz、Spalt、Tettnanger
    • 北アメリカ Cascade、Willamette
    • 英国Kent Golding、Fuggles
    • 苦味を強くするホップ(Bittering Hop)Eroica、Brewer's Gold、Northern Brewer、Galena、Bullion、Nugget (米国ビール事典)



    ビールのポリフェノール含有量
    ビールの総ポリフェノール含有量は、国内市販ビールで50-500mg/Lといわれ、ワインと並び含有量の多い飲料です。一般成人男子の食事からのポリフェノール一日総摂取量は500mg-1000mgといわれますから、他の食品と比べても多いほうです。

    ビールに最も多いフラボノイド類は苦味などの味に関連する8-prenylnaringenin C20H20O5など各種のプレニルフラボノイドで、主要成分はカルコンChalconeを基本骨格とするキサントフモールxanthohumol C21H22O5 です。キサントフモールはホップの重量あたり0.2〜0.6%位含有します。その他は、フラボノール配糖体(ケルセチンquercetin、ケンフェロールkaempferolなど)、フラバノール骨格が多数結合したポリマーポリフェノール分子の縮合型タンニン condensed tanninsです



    ビールに含まれる精油成分
    風味(flavor)、香り(aroma )の基となる精油成分の主成分は炭化水素(hydrocarbons)のテルペン類です。

    • フムレン(Humulene) セスキテルペン(sesquiterpenes)C15H24の不飽和炭化水素。
    • ミルセン(Myrcene) モノテルペン(monoterpenes) C10H16の不飽和炭化水素。
    • その他
      • フムレノール(Humulenol)
      • フムノール(Humulol)
      • フムロンhumulon, 骨流失を抑制する作用があるといいます。 
      • リュープリンLupulin,
      • リュープロンlupulon,

    全米で同時発生したオーイチゴーナナ(0-157)菌の集団感染