世界の健康ニュース解説
パリ世界陸上で話題となった新興奮剤モダフィニルとは
- モダフィニル(modafinil )とは
- 国際オリンピック委員会が禁止するドーピング薬物
- 興奮剤(アンフェタミン、フェンテルミン、メチルエフェドリン、コカイン等)
- 麻薬(モルヒネ等)
- 蛋白同化剤(ジヒドロテストステロン、オキシメトロン、テストステロン等)
- β遮断剤(ベタクソロール等)
- 利尿剤(フロセミド等)
- 隠蔽剤(エピテストステロン)
- ペプチドホルモン(人成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン等)
- 第三種向精神薬とは
- マジンドール(Mazindol:C16H13ClN2O)とジアゼパム(Diazepam:C16H13ClN2O)
- フェンテルミン(Phentermine Hydrochloride)
- フェンフルラミン(Fenfluramine Hydrochloride)
8月31日までパリで開催されていた国際陸上競技連盟IAAF(International Association of Athletics Federations)主催の世界陸上競技選手権で、女子100メートル、200メートルに優勝したケリー・ホワイト(Kelli White)選手がドーピングの疑いを持たれ、メダルの剥奪が検討されています。
対象の薬品は一般にモダフィニルと呼ばれている過睡眠症(ナルコレプシー:Narcolepcy)治療薬ですが、興奮剤、覚醒剤(stimulants)に分類されています。日本では未承認薬ですが、1994年にフランスで開発され、過睡眠症(Excessive Daytime Sleepiness :EDS)の人々の間では話題となっていました。欧米ではパイロットや長距離トラック、バスの運転手などが眠気防止に使用することもあるそうですが、動物実験では運動能力を高める作用があるとも言われています。
国際オリンピック委員会IOCが禁止する薬物リスト(注2)には未掲載ですが、今回問題になったのは、ケリー・ホワイト(Kelli White)選手が義務申告した、常用している薬、一時的に服用している薬にモダフィニルが含まれていなかったからだそうです。規約にはリストに含まれる薬品と同様な作用をする薬品も禁止しています。中枢神経に働く薬品にはダイエットで食欲を減退させる薬品うつ病など精神障害の改善薬、覚醒剤、麻薬などがありますが、何れも成分や作用において密接な関連があり、使用法を誤ると危険な薬品が数多くありますので、一般の方もこの薬品群の理解を深めることが必要です。
モダフィニルはフランス製薬品の商品名。プロビジル(Provigil)が薬品名。
アドラフィニル(adrafinil)の誘導体。中枢系のα1アドレナリン受容体刺激作用を持つ。カテコールアミン性ニューロン活動を刺激するアンフェタミン(amphetamine)とは作用メカニズムが異なるが、同様な覚せい剤、興奮剤といえる。使用経験者によれば、アンフェタミンよりは作用が弱いという報告がある。過睡眠症は不眠症(insomnia)に比べると患者総数が極端に少ないため、モダフィニルは開発に便宜の図られるオーファンドラッグ(オーファンは孤児.数が売れないという意味)に指定されている。
1994年にフランスのラフォン・ラボラトリー社(Lafon Laboratories of France)が開発。
1998年には米国セファロン社(Cephalon Inc)からも発売され、日本では日本商事が米社と開発・販売権の契約を結んだ。日本では代行輸入がされているようであるが、業者経由の場合は一日分1000円位するという。麻薬取締法違反の恐れがあるため、厚生労働省に問い合わせてから輸入したほうが良い。
神戸市内の20歳代の主婦がインターネットで購入したやせ薬で、体の震えなどの薬害が起きたことが、21日、厚生労働省から発表されました。
このやせ薬の錠剤、カプセルなどを分析した結果、第三種向精神薬として指定されているフェンテルミン、マジンドール、ジアゼパム等の医薬品成分が検出されたため、厚生労働省では薬事法、麻薬及び向精神薬取締法違反の疑いがあるとして、販売者所在地の宮城県、東北厚生局麻薬取締部が現在、捜査しています。
問題のやせ薬の商品名は「ホスピタルダイエット」「ニューホスピ」ですが、主婦は今年1月にホームページ上で5種類を購入、半年近く続けて服用したところ、極端に体重が減少し、震えや興奮状態を示したため、6月に病院で診察を受け、現在も治療中とのことです。
問題の「ホスピタルダイエット」はタイの病院が処方しているとされ、昨年12月にも、徳島県の女性が同国から個人輸入して服用し、肝機能障害などを発症して入院しました。この件は香川県が調査しましたが、同様の向精神薬を検出したそうです(厚生労働省)。
マジンドールとジアゼパムは異名同種です。前者はノバルティスファーマのサノレックス、後者は武田薬品のセルシン、中外のソナコンが著名ですが、内外にはたくさんの商品があります。
米国では一年の治験実績があるというシブトラミン(Sibutramine)(商品名:メリディア:Meridia:Knoll Pharmaceuticals、a division of BASF)が著名で、日本ではこれを違法に代行輸入する業者が複数存在しますが、いずれも個人輸入することは薬事法、麻薬及び向精神薬取締法違反であり、医師の処方が無ければ、危険な催眠鎮静剤、抗不安剤です。
ダイエット分野では食欲抑制剤として使用されますが、薬理学的特性は覚せい剤として取り締まられているアンフェタミン(amphetamine)と類似しており、依存性、肺高血圧症、薬物耐性の報告があります。
特に3ヵ月を超える長期投与や妊婦が服用することは危険です。
フェンテルミン(通称フェン:Phen)は商品名ファスチン(Fastin:Hj Harkins Co Inc)は交感神経刺激アミン(sympathomimetic amine)と同種で、中枢神経を刺激する食欲減退刺激剤(Anorexiants Stimulants)に分類される。覚せい剤のアンフエタミン(amphetamine)、昨年死者を出したフェンフルラミンの近縁種。米国では医薬品としていまだ発売されている(2003年現在)。
フェンフルラミンは、昨年夏(2002年)に中国より不法に輸入された御芝堂などのダイエット茶に含有されて、肝機能障害、甲状腺障害など300件弱の(うち死亡3例)薬害が発生したことで問題となった医薬成分です。
この事件の肝機能障害などの原因は分子構造を少し変えたN−ニトロソ−フェンフルラミンとみられていますが、いずれも日本には商品製造会社がありません。
過去に米国では、フェンフルラミンが単体として商品化(商品名:Pondimin:American Home Products Corp)されていました。
またダイエットサプリメントなどにも含有されて売られていましたが、1997年にフェンフルラミンが心臓弁膜症疾患の原因となることが米国医学誌の研究論文に発表されてから社会的な問題となり、FDAの指導により既に市場からは回収されています。
心臓弁膜症発病は同様な薬剤フェンテルミンとの合剤で発症率が高くなるともいわれていますが、この商品はデクスフェンフラルミン(商品名:Redux:Interneuron Pharmaceuticals 、Wyeth-Ayerst Laboratories、a subsidiary of American Home Products Corp)と呼ばれ、フェンフルラミン同様に回収済みです。
フェンフルラミンは、神経伝達物質のセロトニンやカテコールアミンを増量するともいわれ(逆の説もある)、医師がうつ病対策に使用する場合もありますが、脳に作用する食欲抑制剤としてダイエットに使用されていました。
すでにスポーツの世界ではドーピング禁止の対象薬品ともなっています。現在の日本では、このような脳に作用する肥満用薬剤は稀に病的な肥満に処方されますが、薬剤のマジンドール が唯一承認されています。
マジンドールは医師のなかでも、作用、副作用に様々な議論があり、用法が大変難しい薬品です。(長崎大学院薬学部)

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