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世界の健康ニュース解説

ジビエ料理のシーズン:E型肝炎に人畜共通感染症の疑い



    昨年より豚、鹿、いのしし等の生肉を感染源とするE型肝炎HEV( hepatitis E virus)が話題となっています。ジビエgibier料理は年々、関心が高くなっていますから、グルメにとって肝炎の知識は無駄ではないでしょう。現在までのところ肝炎は5種類に分類されています(注1)が、E型肝炎HEVは人畜共通感染症と疑われている唯一の型です。E型肝炎はいまだにウィルスタイプは未分類です。ピコルナウイルス科のA型肝炎と同様の一過性肝炎で、キャリア(保菌者)になることはありませんが、第三期の妊婦が感染すると重篤な劇症肝炎になり、20%を超える致死率になるという研究報告があります。
    2003年3月に鳥取県で発生した2名のE型肝炎患者は、いずれも同じ野生イノシシ(wild boar)の肝臓を生食後に発症し、1名(70才)は劇症肝炎で死亡、他の方も重症肝炎になりました。
    兵庫県ではシカ肉(venison 野生鹿と思われるが、詳細は不明。日本では野生のシカが、全国で年間約10万頭捕獲されて、食肉として流通しています。)を生で食べた4名の方が6-7週間後にE型肝炎を発症し、加西市立加西病院に入院したといわれています。この事例は日本の学者(注2)によって英誌THE LANCETに掲載されましたので、厚生労働省は8月1日に、野生動物の摂食に対する危険を通達しました。

    また、北海道のスーパーで市販されていた豚レバーの一部からE型肝炎ウイルスが検出され、人への感染の可能性が示唆されています。この日本人ら(注3)の研究報告は英誌Journal of General Virologyに掲載されたため、厚生労働省は食肉として流通する豚に関しても、生肉を摂食すればE型肝炎感染の危険がありうることを通告しています。
    自治医大の岡本宏明教授らが行った全国調査(約2500頭分から採取された血清を分析)によれば、出荷時期に達したブタの90%にE型肝炎の感染歴があるということです。教授らによれば、免疫物質(抗体)の検出率は成長するにつれて増加し、また出荷時には大半が消えてしまうことから、宿主の役割を果たしている可能性が高いといいます。研究によれば養豚業者などの豚への接触では感染の確率は大変低いようです。


    対策
    E型肝炎ウィルスは、摂氏63度で30分間か、同等以上の熱処理によって防ぐことができます。A型肝炎ウイルス及びE型肝炎ウイルスの感染経路は、ウイルスに汚染された食物、水の摂取による経口感染が多いため、E型肝炎流行地域(ミャンマー、 インド、 パキスタン、 ボルネオ、 ネパール、 中国、ロシア、 コスタリカ、 メキシコ、 アルジェリア、 コートジボワール、 ソマリア、 およびスーダン)では飲料水、生野菜、果実、魚介類の摂取に格別の注意をする必要があります。
    E型肝炎ウィルスは秋に集中して発生することが知られていますが、印度、ミャンマー、中国などでは、雨季の家屋浸水、河川氾濫によって数万人が感染した事例があります。道路冠水なども含めて、水が氾濫した後はE型肝炎感染の危険があります。
    また、豚、猪、鹿以外にも、鶏など鳥類に宿主の疑いがあるという研究があります。
    野生動物はE型肝炎以外の人畜共通感染症の病原性微生物、寄生虫類等を保有している可能性も高いため、生食は避けるべきです。

    注1)肝炎の種類

    A型肝炎 hepatitis A virus (HAV)  ピコルナウイルス科
    発展途上国に多く見られます。古くから黄疸、塹壕病などと呼ばれ、以前はほとんどの人に感染暦があるといわれました。感染後は免疫ができるため2度と感染しないようです。経口感染ですから、食品の生食に注意すれば防ぐことが出来ます。

    B型肝炎 hepatitis B virus (HBV)  ヘパドナウイルス科
    B型肝炎は血液・体液を介して感染する血清肝炎の代表的な型。HIVエイズと共に輸血による大量患者の発生で知られ、1990年ごろまでは、輸血をした大部分の人がB型肝炎に感染しました。C型と並び、生涯にわたり慢性肝炎となり、肝硬変、肝癌になる恐ろしい肝炎です。

    C型肝炎 hepatitis C virus (HCV)  フラビウイルス科
    C型、D型肝炎は最近まで非A非B型と呼ばれていた血清肝炎です。C型肝炎の分類は比較的新しく1974年にニューヨーク血液センターが報告したのが最初といわれます。

    D型肝炎 hepatitis D virus (HDV)  サテライトウイルス科
    D型肝炎はデルタ肝炎ウイルスといわれた血清肝炎で、B型の感染状態にある宿主にのみ感染します。B型に較べ、劇症肝炎の発生率が高いことが知られています。

    E型肝炎 hepatitis E virus (HEV)
    臨床的にE型肝炎は経口感染するA型肝炎に酷似しています。潜伏期間は15−60日位。黄疸を伴って発症しますが、無黄疸、無症状(不顕性感染)の場合もあるようです。E型肝炎は1989年に遺伝子が初めてクローン化され、HEV遺伝子検出が可能になりました。典型的な症状は腹痛、食欲不振、濃色尿、発熱、肝腫大、黄疸、不快感、吐き気および嘔吐などである。ウイルスはゲノム塩基配列の類似性から暫定的に4型(IからIVまでのタイプ)に分けられています。日本にはIIIおよびIV型ウイルスが従来から土着しており、約5%のヒトが抗体を持っているとの報告があります。


    注2)東芝病院 三代俊治
    A team of researchers led by Shunji Mishiro, director of the research department of Toshiba Hospital in Tokyo

    注3)Yasuyuki Yazaki1, Hitoshi Mizuo2, Masaharu Takahashi3, Tsutomu Nishizawa3, Nobuhiko Sasaki4, Yuhko Gotanda5 and Hiroaki Okamoto3

    • Center for Gastroenterology, Kobayashi Hospital, Hokkaido 090-8567, Japan
    • Department of Internal Medicine, Kin-ikyo Chuo Hospital, Hokkaido 007-0870, Japan
    • Immunology Division and Division of Molecular Virology, Jichi Medical School, Tochigi-Ken 329-0498, Japan
    • Department of Pediatrics, Jichi Medical School, Tochigi-Ken 329-0498, Japan
    • Japanese Red Cross Saitama Blood Center, Saitama-Ken 360-0806, Japan



    American Society for General Microbiology